左馬刻さんと結婚してから一年。
あの日、溺れそうになるほど注がれた子種を、私の胎内が拒むはずがなかった。あっけなく彼に堕とされた私の体は、十月十日を経て、長男をこの世に産み落とした。
「よく頑張ったな」
そう言って私の頭を撫でてくれた彼の顔は穏やかで、今でも鮮明に思い出せる。私はきっと、あの時の左馬刻さんの顔を一生忘れない。
一週間後、息子を腕に抱いて退院した私は、碧棺グループの更なる跡継ぎを産んだ身として、今まで以上に至れり尽くせりの待遇を受けた。それでも、子どもだけはどうしても自分の手で育てたかった。
そして左馬刻さんも、驚くくらい子どものお世話に積極的だった。山ほどある仕事の合間をぬって、よく様子を見に来てくれたし、その時におむつを替えることも、泣き止まない我が子をあやすことも、何もかも厭わずやってくれた。
彼は眼光鋭く好戦的に見えるのに、私と子どもに対しては過保護な位甘かった。思い返せば妊娠が分かった時からずっと左馬刻さんは私のことを気遣ってくれていた。
その行動の裏には、私への憐れみも多少は含まれていたのかもしれない。私は、私を「売った」両親の元へ帰ることを頑なに拒絶していた。子どもを売っておいて孫の顔は見たいなんて都合の良いことは許せなかったし、金輪際関わりたくなかった。結果として、碧棺グループに一人身を置くことを選んだのだ。
でも彼の行動に憐れみが含まれていたとしても、私はそれで良かった。可愛い息子が居て、息子を愛してくれる夫が居て、それだけで幸せだったのだ。
*
深夜の授乳を終えて息子をベビーベッドの上に寝かせた私は、ベッドに入った。隣には、左馬刻さんが静かに寝息を立てて眠っている。
暗い部屋の中でも、彼の顔立ちははっきりと確認できた。目を閉じているけれど、彼の整った顔立ちは私の胸をいつだってときめかせる。なのに、「あの時」以来、私はほとんど彼に抱かれていない。理由は、身重の私に万が一のことがあったら困る、ということだった。その代わりに彼の性欲が溜まったときは、手と口を使って、彼の精を受け止めた。
でも、あんなに私を激しく抱いた左馬刻さんがフェラチオだけで満足するはずがない。妊娠している間、他の女の人とそういうことをしているのだろう、と内心では思っていた。それを聞くのは野暮だから聞かなかったけれど……子どもが生まれてからも、セックスがなかったのは正直寂しかった。
「左馬刻さん」
彼を起こさないように、小さく呟いて横たわる。出産して消耗した体力は少しずつ回復しつつあって、自分の体を慰める位は出来るようになっていた。彼に背を向けて体を丸めるような体勢になると、自分のネグリジェの下に伸ばして、下着に触れた。それから下着越しにそっと秘部をなぞる。
声を我慢しながら指で上下させ、下着の中へ手を入れようとすると、不意に彼の腕が私の体を包み込んだ。
「……何してんだ」
ハッとして手の動きを止めると、無理矢理肩を掴まれて彼の方へ体の向きを変えさせられた。言葉を紡ごうとした瞬間に、もう唇は重なっていた。
「んんっ……っ」
無理矢理歯の隙間をこじ開けられ、舌を絡め取られる。少しでも引っ込めようとするものなら、繋ぎ止めるように舌先を強く吸い上げられた。それなのに、私が従順になると舌をごく優しく噛んで、甘やかす。ぴちゃぴちゃと音を立てながら唾液を交換しあう激しいキスに、たちまち体の奥が熱くなる。
唇がそっと離れたかと思うと、彼は私の耳たぶを甘噛みした。
「俺様が隣に居るのに、何一人で楽しもうとしてんだよ」
低い囁き声に、私の吐息は震えた。声だけで濡れてしまう、それくらい艶のある声だった。そのまま覆い被さってきて、荒々しくネグリジェのボタンを外されると、露わになった私の胸に彼は触れて、乳輪をきゅうと押した。息子にあげている母乳が、軽く吹き出して胸の周りを汚す。
「あっ、左馬刻さんっ」
「お前が自分でやろうとしてるってことは、俺ももう我慢しなくて良いってことだよなァ?」
私を見下ろす彼の瞳は、暗闇の中でもぎらついているように見えた。
「おい、どうなんだ」
いきなりの展開に、私の頭の中は混乱する。でも、本能は期待していた。散々我慢して蓄積していた疼きを、解放したい。胎内を、再び彼で溺れるほど満たして欲しい。
「……抱いて、欲しいです」
そう呟いて左馬刻さんに手を伸ばすと、彼は私の手首を強く掴んで指先を口に含んだ。
「っ、あ……♡」
時間をかけて舐められた十本の指は、彼の唾液でベタベタになった。それは不快どころか、気持ち良かった。もっとなめて欲しい、とすら思った。
手首を掴まれたまま、左馬刻さんの唇が胸の突起に下りてくる。普段子どもに吸い付かれているそこを、彼は吸い上げた。授乳している時は何とも思わないのに、左馬刻さんに吸い上げられると堪らなかった。
「っあ、だめ、っ♡」
「子どもに吸い付かせてるくせに、俺が吸い付くのは駄目なんて許せねえな」
吸われると、たちまち母乳が溢れてくるのを感じた。ぴゅうと甘い液体が吹き出して、彼の口内は私の母乳でたちまち一杯になる。
「……へえ。母乳ってこんな味なのか」
突起に吸い付いたまま、彼は上目遣いで私を見上げた。
「っひ、う……♡」
「胸をちょっと吸っただけ感じやがって。やっぱテメェは淫乱だな」
首を振ったけれど、心の中では否定しなかった。彼は私の両手を解放すると、性急に私の下着をずらし秘部に直に触れた。ごつごつとした指の根元から指先が、私の割れ目を焦らすようにゆっくりとなぞる。
「ひあっ♡そこ、はっ、もう……っ♡」
左馬刻さんは溢れてくる蜜を指で絡め取り、私の陰核へとぐりぐり押しつけてくる。それだけであそこがひくつくのを感じた。ああ、欲しい。早くアレが欲しい。自然と腰が浮いて、自分から擦りつけに行ってしまう。
「はやく、ほしい♡欲しいっ、中にっ♡♡」
「ハッ、もうおねだりしてんのか、……可愛い奴」
でも左馬刻さんは挿れてくれなかった。代わりに舌を出して、私の胸……母乳を生産するために豊満になった胸の谷間をつつくと、乳輪までつーっと這わせてきた。
「そんな簡単に挿れてやる訳ねえだろ、俺にも楽しませろ」
そう言うと、彼は乳輪全体を口に含んで、さっきよりも長くしつこく胸を攻めてきた。突起の先端を舌でちろちろと弄ったかと思えば、時折強く吸い上げてくる。不規則な舌の動きで翻弄してくるのに、指は肝心なところに触れてくれない。陰核にそっと指先が添えられたままで、イかせてくれない。その間にも、息子のためにとってある母乳は、どんどん彼に奪われていく。
「ひああっ♡おっぱい、はっ♡ずる、あっ♡あ…っあぁん♡♡おねがい、いかっせて、あっ♡やら、あぁ♡」
「そんなにうるさく喘いでると、起きちまうぞ」
そう言う割に動きを止める気配はない。じゅる、とわざと音を立てて彼は母乳を飲んだ。子どもが吸うのと大人が吸うのでは、圧倒的に奪われる量が違う。あと数時間も経たないうちに次の授乳が待っているのに、彼は容赦なかった。
口許を両手で押さえても、どうしても唇から声が漏れてしまう。まだ何も挿れられてないのに、ひだが震え、勝手に秘部の奥から蜜が溢れてくる。
「はっ♡はあー……っ♡」
「旦那に乳吸われただけで、まんこぐしょぐしょにしやがって」
僅かに離れた唇の隙間から、あけすけな言葉が紡がれて、私の羞恥心を煽った。でも本当のことだから何も言い返せない。
「こんな濡らしてんなら、お望み通り挿れてやるよ。……指だけどな」
そう言って彼は滴る蜜を何度か絡めるように指同士を擦り合わせると、根元まで一気に入れてきた。
「っ〜〜〜♡♡あぁあっ♡♡ゆび、あっ♡はいって…きて、ひううっ♡」
膣壁を擦られ、器用に指を折り曲げて良いところを探ってくる。あるところで強烈な気持ちよさに体が襲うと、熱を帯びた彼の吐息が私の胸に触れた。
「ここだな」
そこを指先で上下になぞられただけで、私の体はびくびくと震えた。
「っあああ♡や……らぁ♡おねが、いっ♡♡っああ♡やめ、…ひ…ぁあっ♡」
「だからそんな声出すと起きちまうぞ。それとも、ガキにあんあん言ってるスケベな顔でも見せるか」
首を横に振った途端、爪先でくすぐられるように擦られ、それだけでくすぶらせていた私の熱が一気に弾けた。
「あ、っやら♡だめっ♡いやっ、あぁあっっ……――♡♡」
突き抜ける快感と共に、自分の意思とは関係なく何かが吹き出した。その感覚は、排尿したときの感覚とは違う。たぶん、私は指で弄られただけなのに、潮を吹いてしまったのだ。
「あーあ」
左馬刻さんは、指を抜いて、潮でびしょびしょになったであろう手を見せつけると、私の前で舐め上げた。
「テメェは旦那を差し置いて一人でイッちまった訳か」
「ひぐっ……ごめん、なさっ……」
「俺様は誘われるまで健気に待ってたのに」
くらくらする脳内で、ぼんやりと左馬刻さんの言葉がリピートする。
俺様は、誘われるまで……健気に……、待つ? 碧棺グループの御曹司が?そんな、
「そんな、うそ」
現実味のない言葉に、本心が口からこぼれ落ちる。その瞬間、左馬刻さんがまとう雰囲気が変わった。私の脚は強引に折り曲げられ、下着は破られそうな勢いで脱がされた。すぐに服が擦れる音がして、秘部に何かがあたったかと思うと、一気に奥まで入ってきた。
「〜〜〜〜……っ!」
あまりに急な挿入に、声を上げる余裕もなかった。でも、入ってきたそれは、私がずっと待ち焦がれていたものだった。それを象徴するかのように、もう私の胎内は彼を欲しがって締め付けている。
「お前は俺様が嘘吐くとでも思ってんのか」
左馬刻さんはいつの間にか私の耳許でそう呟いていた。今度はぞっとするほど好戦的な口調で、口答えしたら殺されてしまいそうな位に。
嘘じゃない、違う。左馬刻さんは本当に、我慢、してた……?
でもそれを深く考える余裕は与えられなかった。彼の大きくて太い怒張が、ぐちゅ、ぐちゅっと、中を穿つ。声を我慢しなきゃいけないのに、大きな声を出しそうになって、慌てて唇を手の甲で隠した。
「んんうーっ!!ふっ…あっ♡んぐ、う、ぅっ♡♡」
最奥まで激しく突き上げたかと思えば、ゆるゆると入り口まで戻ってくる。全然足りない、これじゃ、足りない。疼きなんてみたせない。すでに湿って蜜だらけの膣内は、我慢していた分を取り戻すかのように彼の怒張に形を変えて締め付けを激しくする。それなのに、左馬刻さんは一旦私の中からソレを抜いた。
「お前のだらしねえここに分からせてやんねえとな、俺がどんだけ我慢してたかってことをよ」
片方の手首を掴まれてシーツに押しつけられると、反対側の肩を背中側から押されて体ごとひっくり返される。うつ伏せになった私の体に、ぴたりと彼が体を寄せてきて、私の肩にかみついた。
「四つん這いになれ」
言われるがままお尻を持ち上げると、彼は体を起こし、臀部を左右に押し開いて、ぬるりと濡れた先端をあてがった。びくっと体が反応した瞬間、割れ目をぬって中へと入ってくる。
「ひあ?!う、後ろから♡さま、ときさんのが、っ来てる♡♡奥に当たってえっ、きもち…っ…いいのっ♡はあ♡♡」
「あ?左馬刻さんの何だよ。ちゃんと口から言え」
「……っうう、左馬刻さんの♡太くて、おおきな、おちんぽですッ♡♡」
「ちゃんと言えんじゃねえか、よしよしお利口さん」
彼は腰を掴んで、ぐりぐり、と子宮の入り口まで怒張を押し込んでくる。私は額をシーツに押しつけ、皺になるくらい両手で掴んで耐えた。
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