傷口を舐め、唇に軽いキスをして瞼を綴じさせ瀬谷を横抱きにし立ち上がる。幸村の息の根を止めた白石には少量の返り血が服に付着しており、仁王と瀬谷を見るなり白石は全てを察したのか何も言ってはこなかった。
建物は幸村を倒した事により崩壊を始めているのか、急いで建物を後にする。
建物の外に出ると地下施設が崩れたと思われる反動で多少の地盤の揺れが起きた。
「千尋、全部終わったぜよ」
「ん…」
「千尋?!俺の事分かるか?」
「雅治に、蔵くんだよね……雅治っ!」
吸血鬼としてだが瀬谷は意識を取り戻した。白石は信じられないような表情をしていたが仁王とじゃれ合っているのを見るなり微笑み瀬谷の頭を軽く小突いた。
「いた、蔵くん痛いよ…!」
「心配したんやで、ほんま」
「ごめんなさい…」
「まあまあ細かいことはええんよ、俺達の愛の前では奇跡なんて容易いもんって事ぜよ」
やかましいわ!と白石にツッコまれ三人は顔を見合わせて笑っていた。
―――
――
―
テレビでは大々的に地下施設の事について放送されていた。私達の街では地下施設で苦しめられていた吸血鬼が人に紛れ皆大人しく生活している。
ただ幸村が死の間際に世界各国にばら撒いた薬のせいで、吸血鬼とは呼べない失敗作が量産された事を仁王はとても悩んでいた。
仕事場には新しいお客さんが最近出入りしている、吸血鬼のお客さんも多く地下施設に居た人達ばかりで、今日は仁王の顔見知りの人達が親しげに会話をしている。
丸井さんと桑原さんもお店に来て、今日はとても賑やかである。
「アンタら、うちの店であんまり騒いでると潰すよ!」
「おやおや、それは怖いですね」
「赤也に潰せるのかよい」
「切原には無理だろ」
「無理じゃな」
「おっまっえっらー!!!」
「もー。みんなお店の中で暴れないで」
切原君も常連のお客さんが増えて、今日も楽しく仕事している。蔵くんも私が未だに心配だから、と関西に帰らず店員を続けてくれている。
蔵くんから聞いた話だが地下施設には幸村と真田の遺体は無かったらしく、何者かに持ち出されたかそして何のために遺体を持ち出したのかそれが謎である。
「あ、ほら切原くんもう…上がりだよ」
「騒ぐなよお前ら!…じゃあ先上がる」
切原は仕事着のまま荷物だけ持ち、急いでいたのか走って行ってしまった。切原が居なくなった事を確認すると吸血鬼である柳生が口を開く。
「そういえば、最近吸血鬼ハンター協会が出来たそうですね」
「何だそれ」
「ええ、調べてみたら吸血鬼を狩る集団のようです」
「見つかったら殺されるな、確実に」
柳生が持ってきた新聞には失敗作を狩るための集団と記されているが、どうやら中身は吸血鬼であれば迷わず殺している迷惑な連中らしい。
「やーぎゅ、厄介な案件持ち込まんでくんしゃい…俺は千尋と幸せに暮らしたいだけなんじゃ」
「これは、失礼しました」
柳生さんには吸血鬼になったおかげで仲間として迎え入れてもらい、暴行を働いた事を詫びてくれた。
すると仁王が立ち上がったかと思うと、軽く瀬谷頬にキスを落とした。それを見た柳生が頬を赤らめて仁王の事を怒り、丸井と桑原はそんな光景を見て笑っていた。
この先何十年 何百年 何千年と、雅治と暮らしていける事を知ると頬がどうしても緩んで微笑んでしまう。
雅治と目が合うと微笑み返してくれる、私はあの夢から…あの日の夜雅治と出会ってから全てが始まったが吸血鬼になった今としても全く後悔はしていない。
好きな人の傍で
歩んでいけるのだから。
Fin〜?
