「千尋は俺が化け物になっても…愛してくれるかのう…?」
「いやぁぁあああ!雅治っ!!」
幸村により四肢を拘束具で固定された仁王の首筋に注射器の針が刺さる、謎の液体が流し込まれ仁王は暴れるのを辞め大人しくなる。
「こっちの残りは俺に、と」
幸村は自分にも似たような注射を打つと、みるみるうちに吸血鬼が暴走化したような姿になっている。
すると仁王は幸村が固定したであろう拘束具をいとも簡単に壊し、下を向き呼吸を整えている。
髪を掻き上げた仁王のその目は血の色のように赤く染まり、それは今まで見たどの仁王よりも仁王ではないように見えた。
二人はすぐに組み合いになり、幸村は吸血鬼の能力を使えるようになったようで仁王は暴走させられているのか幸村の攻撃を避けるので精一杯のように見える。
「どうなってるんや…」
遅れてやって来た白石が戦う光景を見て絶句する。瀬谷は建物の真ん中で地面に座り、まるで魂が抜けてしまったようにその光景を見ていた。
「吸血鬼の本気見せてみなよ…!」
幸村が壁に触れると壁は形を変え鋭く尖り、仁王へと向かって行く。仁王は避ける事が出来ず両腕に突き刺さり壁に押しつけられる。
仁王は化け物のような叫びを上げ苦しみ、その声に瀬谷は我に帰り仁王を見る。
「この薬は世界各国にばら撒かれるんだよ!たくさん化け物が増える世の中になるんだ…!!ははっ!君のおかげだよ仁王…。感謝してる、だから今楽にしてあげるよ!」
幸村は腰から銃を取り出すと、スライドを引き仁王に向けて構える。
「まさはるーっ!」
瀬谷が叫ぶと同時に幸村は引き金を引き、動かなくなった仁王は地面へと落とされた。
近づこうとするが、白石に腕を捕まれ止められる。
砂煙が晴れた仁王の目の前で弾は止まっていた。仁王は自分の腕から流れた血の液体を瞬時に盾のように変え攻撃を防いだのだった。それを知った幸村は舌打ちをする。
「雅治!」
「ああ、大丈夫じゃ…。千尋の声で目が醒めたぜよ」
先程まで防戦一方の戦いが嘘のように、仁王の攻撃の方が遥かに幸村を圧倒していた。元は人間と云えど吸血鬼の力を最大限に引き出された仁王には適うはずがない。
仁王が幸村の背後に周り、防御も出来ないままの彼を蹴り飛ばすと壁を壊し崩れ落ちていった。
「千尋、大丈夫……っぐ!」
瀬谷に近づこうとした瞬間、仁王は血を吐き出し、頭を押さえもがき苦しみ始めた。
「薬の副作用や…あかんで仁王自身ボロ雑巾みたいになってるんやん、血なんかこれ以上出したら…」
「雅治、血が欲しい?」
「いら、ん…!!大丈夫じゃから、うあっ!!…放っておいてくれ…!」
頭を押さえフラつく仁王の後ろの砂煙の中に光る何かが瀬谷には見えた。
銃口が雅治に向けられてる、そう思った時には身体が手が仁王を突き飛ばしていた、と同時に胸に激しい痛みが襲った。
「あ…まさは…」
「っ…千尋!!」
仁王はそのまま支える形になり、白石はすぐさま幸村の方へと駆けて行った。
「まさは、る…大丈夫だ…よ。わたし…は……死な、な…」
そう残し瀬谷は静かに息を引き取る。
「っ…俺は、ずっと言えんかったけど…千尋の事好いとうよ。分かった……俺はお前と一緒に…生きる道を選ぶぜ、よ」
激痛を我慢しながら仁王は瀬谷の頭を撫でて頬にキスを落とし、静かに首筋に牙を突き立てる。
喉に通る甘く美味な血、顔色が良くなる仁王に対し徐々に瞳の光を失い顔が青ざめていく。
