02


時は遡り数週間前になる。

警報が先程からずっとけたたましく鳴り響いている、追手が来るのも時間の問題だろう。此処からさっさと立ち去らないと奴らに再び捕まってしまう。が身体はもう限界を越えているのは自分が一番分かっている。


「はあ…上手い事逃げてくれたかのう…」


男は建物の壁に上半身を預け息を整えながら何か別の事を考えていた、男の服はボロボロで至る所に傷が出来ている。傷は自己再生でもしようとしているのか、傷口が自ら塞がろうと皮膚がほんの僅かに動いている。


「やっと、見つけた」

「……っ、もう追ってきたんか…」


白い軍服を身に纏う男は、弱った男を見つけると持ってきた黒いケースから謎の液体が入った注射器を取り出した。押し子を少し押すと針先から謎の液体が床に滴り落ちる。

弱った男はそれを見るなり血相を変え、立ち上がり軍服の男と距離を取る。が弱った男が距離をとった先は行き止まりの壁だった。


「俺達を何だと思ってるんじゃ……そんなんで縛りつけて…!」

「もう逃げ場は無いんだし動くと別の所刺しちゃうから……下手に動かない方が身のためだよ」


軍服の男は急に不敵に笑うと、瞬時に弱った男との距離を詰め首筋に注射器の針を宛てがう。


「っ…!」


注射器の針が首筋に刺さり軍服の男が押し子を押したか押さないかの瞬間、弱った男は自分の真後ろの壁を殴り今度は軍服の男が壁の破片を避けるために弱った男から距離をとった。

砂煙が納まるとそこには弱った男の姿は無く、壁に穴が空き穴は外に通じていた。軍服の男がそこから外に出るとその下はとても深い谷底になっており、弱った男は此処から落ちたと思われる。


「此処からじゃあ、流石にアイツも助からないだろう…残念、貴重だったのになあ」


軍服の男が指を鳴らすと今まで鳴り響いていた警報が鳴り止む。するとその指を鳴らしたと同時に真っ白な病院服を身に纏った赤髪の青年が現れ、先程壊された壁の前に静かに歩み寄った。

赤髪の青年は壁の前に手を伸ばすと眩い光を放ち瞬時に壁は元に戻り、その光景を確認した軍服の男は口元に笑みを浮かべる。


「ごくろうさま、部屋に戻って良いよ」


赤髪の青年は軍服の言葉に頷くと軍服の脇を通り長い廊下を歩き始める。そんな赤髪の青年は目に生気は宿っておらず、魂の抜けた人形のように肌も青白く身体も痩せ細っていた。

赤髪の青年が角を曲がり消えると同時に通路にまた別の男がやってきた、男は軍服とは別に研究服を身に纏って糸目の青年である。糸目の青年は手元に数前の資料の紙の束が見られる。


「捕獲成功とは…現状を見るなり言えないか…」

「谷底に落ちたけど、どうだろう…アイツらは早々死なないからなあ」


軍服の男は不敵な笑みを浮かべると、踵を返し長い廊下を歩き始める。糸目の男は後から着いてくる。

糸目の男は歩きながら手元の資料から一枚手に取り確認すると、軍服の男に渡す。


「さて…早急に捜索をお願いするよ。死んでたら死体の回収は頼むよ」

「ああ、分かった」

「それと、柳…これ少し入ったかも」


軍服の男は懐から注射器を取り出し、柳に渡す。柳は注射器を見るなりため息をつく。


「吸血鬼化を無理矢理暴走させて叩き潰す算段だったのだろうがどちらにせよ、幸村…あまり無理するなよ」