わたがし
『見に行きませんか 花火』
夏休みが終わる1週間前 来年には卒業して離れ離れになってしまう1つ上のあんずさんとの関係性を進展させたくて誘った夏祭り 最後には花火も上がるらしい
こっちは死ぬ程緊張しながら誘ったのに、返ってきた返事は行きたい!なんて言葉と能天気そうなうさぎのスタンプ
なんだかこっちばっかり意識しているのが癪で、その後の返事が素っ気なくなってしまった気がするがあんずさんのことだからきっと何も気にしてないのだろうな
「あ、日吉くん!お待たせ」
『いえ 俺もさっき着いたところなんで』
待ち合わせ場所に指定したのは夏祭りの会場から少し離れた神社
水色に花びらの浴衣を着た彼女は綺麗に髪を纏め、小走りで俺の元へ走ってくる
「そこまでパパに送ってきてもらったんだけどお祭りのせいか道が少し混んでたみたい ごめんね?」
『べ、別に……』
「じゃあ行こうか!パパに誰と行くんだ、って聞かれたから日吉くんだよ、って言っておいたんだけど、日吉くんなら安心だ、って言ってたよ」
『なんですかそれ』
「ふふ あ、そうだ見て見て せっかくだからと思って浴衣着てきたんだけどどうかな?」
氷帝カラーにしてみたんだ、なんて笑いながらあんずさんはくるりと回ってみせる あんずさんのことだからきっとどんな色の浴衣だって似合うだろうが、この世で1番この浴衣が似合うのは間違いなく彼女だろうな
『悪くないんじゃないですか』
「日吉くんは素直じゃないなぁ」
『いや…その、似合って、ます』
「ありがとう 花火まで少し時間あるし屋台でも見ない?」
私わたがし食べたいなぁ
そう言って一歩先を歩くあんずさんに遅れを取らないように歩き始める きっと跡部さんや忍足さんならこんな時彼女の手を自然に取ることができるんだろうな
「日吉くーん!こっち!わたがしあったよ!」
『あんまりはしゃぐと転びますよ』
「大丈夫だよ〜日吉くんも食べる?わたがし」
『俺は大丈夫です すいません、1つお願いします』
「あっ私が出すよ」
『今日は俺が誘ったんだ カッコつけさせて下さい』
「なんかごめんね ありがとう」
浴衣とお揃いの巾着から財布を出そうとするあんずさんを遮ってわたがしを買い、あんずさんに手渡す あんずさんの顔より大きなわたがしを両手で受け取ると嬉しそうに写真を撮ってからカプリとわたがしに齧りついた
「美味しい」
『それは良かった』
「日吉くんも食べる?」
『……遠慮しておきます』
「そう?美味しいのに〜」
コロコロと表情を変えながらわたがしを頬張るあんずさん
笑ったり拗ねたり、忙しい人だな、なんて思う反面可愛い、と思ってしまう俺は重症なんだろうな
「ね、日吉くん」
『なんです』
「楽しいね!」
誘ってくれてありがとう
ふんわりと微笑むあんずさんに思わず身体が熱くなる 貴女って人は本当に人の気持ちなんて知りもしないくせに
『別に……ほら、もうすぐ花火始まりますよ』
「ほんと?今年花火見るの初めてだなぁ 日吉くんと来れてよかった!」
あぁもう これだから貴女には適わない
なんで書いたんだろう………分からない……Next