蠍の傀儡整備の為今回の任務はデイダラと私二人で当たっていた。といっても、任務内容は蠍と私よりも断然デイダラ向きで、正直に言えばデイダラ一人で事が済むためリーダーに命じられたのは任務達成ではなく、デイダラのお目付け役だ。木陰の座りやすい岩に腰掛け、彼の芸術とやらがアート(爆破)するのを頬杖をつきながら眺めた。

「どうですかー?デイダラさーん、仕事済みましたかね」
「あぁ!バッチりだぜ。爆破も申し分ねェ出来だ、うん」
「そう。私の仕事はある?」

「デミニーは生き残りを殺っといてくれ」

仕事が増えた分給料も増してくれるという話だし、今回組むことになったデイダラは最近暁に入ったばかりで若く活気に溢れている。仕事へのモチベーション…というか芸術へのモチベーションが高くて助かった。ほぼ私の仕事は無かったも同然だ。一度肩をボキボキと鳴らした後、まだ息のある劫火に焼かれた輩の喉元にクナイを投げていく。動けない人間を殺すなど蟻を踏み潰すのとなんら変わりは無かった。同じ行動を数度繰り返せば死体の海に呼吸をするのは私とデイダラのみになる。

「うん!!うんうんうん!!いいぞ!」
「……デイダラって元気だよね、今年何歳?」

「ハ?16だ」

突然の質問に頭にハテナを浮かべているデイダラだったが、まだ背丈が私と大して変わらない事に16といった言葉を聞くや否や「なるほど」と言葉を返してこの会話は終わらせる。

蠍がデイダラはもしかしたら女に興味がないのかもしれないと、相談を一度私に持ち掛けてきたことがある。いや、相談というより面白半分か、興味本位の類だろう。元々傀儡の事ばかりで体をも人形にしてしまい性欲そのものを捨てた男にそんなことを危惧される謂れは無いとは思うが…同じ組織に所属している最年少の末っ子が女に興味がないと聞かされれば、私も些か気になった。


――どうやらデイダラは不能だから女に興味がないという訳ではないらしい。というのも今日任務を共にして知った。よくスポーツをしている時の男は感情が高ぶって勃起してしまうという話を耳にするが、デイダラのスポーツは芸術に値するらしい。少しばかり盛り上がるズボンの中心を一瞥すればすぐに目線を外す。

「デイダラも男の子だったんだね」
「アァ?なんだよデミニー。あ…いや、コレは生理現象だから気にすんな、つか変な所みてんじゃねーよ!」

任務を無事に達成し、デイダラの作り出す鳥型の芸術で、アジトまで宙を飛び帰っている最中だった。16といえば盛んな時期だ、なにも恥ずかしがることはない。尚更女に興味がないとなれば私にナイーブな感情を抱く必要もないだろう。鳥から落ちないようにとデイダラの腰に回した腕に、勃起しているからと言って良からぬ心配をする必要もないのだ。…案外恋愛対象に見られないというのは気が楽かもしれない。

「……言っとくが、テメェの胸が背中に当たってるせいとかじゃねーからな、そんなんで勃つ程ウブじゃねェ。うん」
「知ってるよ、蠍から聞いた。女に興味がないんでしょ?さっきの任務内容で昂ったから勃起したの実は見てたし」

「は?」
「え?」
「は?」
「え?」

その後このやり取りを数回繰り返す。そして蠍から聞いた話をそのままデイダラに聞かせてやれば苦虫を噛んだ様な顔をしつつ、私に睨みを効かせてきた。…コレはマズイ事をしたやもしれない。デイダラはもしかしなくとも、女相手に思春期をする恋愛対象が女な普通の男の子かもしれない。言葉に詰まった私はしばらくの間空気を切る風のせいで、デイダラの声が聞こえないフリをしてやり過ごした。が、それは数分も保たず、蠍へのしつこい問い詰めと身に覚えのない汚名返上を巡って真剣な面持ちで対話するハメになった。









後の事は蠍とデイダラの二人の会話との事だ。無論私は知る由もない。

「だ、ん、なァ!!!!!!!!!ふざけんじゃねェコラァ!!!」
「なんの話だ、いきなり。殺すぞ」
「デミニーに…変な事吹き込みやがって…クソ…人を不能扱いしやがって」
「ふっ、テメーがデミニーの事好きだつーから話すきっかけを作ってやったんだろ。感謝しろ」
「誰がするか!!寧ろ変な目で、一歩間違えれば男として見られねェところだ!!許せねぇ…って…

ハァ?なんでオイラがデミニーを好きって…は?」
「見てれば分かる。中々楽しませてもらったぜ。その焦りよう。後でデミニーの方からも色々聞いてみるか。テメーの反応をな」
「死ね」
「なんにせよ誤解が解けたならよかったじゃねェか、クク」