美少女とデート
と、いうわけで約束通りにその女の子と城下町で遊ぶ事にした。
遊ばないと借金背負うことになり兼ねないし、それこそコキリの翡翠を奪われてしまい兼ねない。絶対に避けなければいけないのである。
そんなフラグはとことんへし折ろう。
けれど二人を追うのにこんなに疲れるとは……私はうらしま太郎か?いつの間にか歳を取ってしまったのだろうか?
まだ中学二年生だ、体育会系にも吹奏楽部にも負ける体力だがまだぴちぴちなはずなのにあの二人について行けてないよ?
この世界の人間体力ありまくりじゃん……死ぬわ。
遊ぼうと言ってから一時間ほどどヘトヘトになってしまった私に気遣って女の子がベンチに座らせてくれた。
女神かな……後光が差して見える。
辺りをきょろきょろしたあと嬉しそうな顔をした女の子に待ってて!と言われ、
なにか屋台で買ってるなぁと思いながら彼女の様子をぼーっと見てた。
しばらく待っていると女の子がやけにデカイ紙袋を持って帰ってきた。
紙袋の中に大量のゴロン族の顔の焼き印が押された饅頭らしきものが底が潰れるくらいにたくさん入っていた。
待って待って、一人が食べれる量じゃない。
「こ、これは……」
『凄い量だね……何故こんなに』
「うふふっあのね!」
聞けば頼んだらおじさんが大量にオマケしてくれたとか。
お客が子どもで可愛いこの女の子ならおじさんの気持ちも分かるがここまでやると逆に経営が悪くなるんじゃ……あのおじさん大丈夫か。
いや、それ以前に女の子の頼んだ数が半端ないのかもしれない。
騒ぎの時に子どもには大金過ぎた200ルピーをぽんと渡したと聞いたし。
パン一つで2か3ルピーの世界だぞ、ケタ数がおかしい。
多分金の価値観が自分達と違うのだろう。その線の方が高いかもしれない。
パン一つでも悩んだのに……金持ちの感覚が分からない。
しかし無限の胃を持つリンクが大半以上を食べてくれたおかげですぐにゴロンまんじゅうは底をついた。
さすがは食べ盛りの男の子、腹は膨れてはいるがあの体積分はどうやって入ってるんだ……。
その後の女の子の動きと来たらスゴいスゴい。リンクも慌てて着いていったけど大変そうだった。
自分は聞くまでもなくへとへとだ。
テレビゲームで遊んでるのと辺りを走り回ってる子どもとでは体力の差があり過ぎるのだ。
『最近の子どもって皆ああいうのかな……』
《嫌よ、みんなあんなせっかちなの》
ナビィがため息を吐きながら自分の呟きに答えた。
どうやらナビィは少しあの女の子が苦手らしい。
リンクにとってははじめての外の同年代の子だけれどナビィはリンクほどの緩急つけたはしゃぎっぷりと大人しさがちょうどいいようだ。
ほどほどに空気は読んでくれる子どもだからね、たまに大ごとやらかすけれど。
その後、遠目でリンク達を見てると急にあの女の子が噴水の影に隠れた。
何事かと思えば兵士を引き連れた体格の良い女性が身なりの良いという子を探していた。
それを聞いた途端、曖昧さが確信に変わった。
原作で見る姿とは全く違うから空似程度だと思っていたけれど……。
あれ、あの白髪に褐色肌の凛々しい姿って確かゼルダ姫の乳母であるインパだったような……と思ってたらリンクが違う方向を指差し、その方向へとインパ達は去っていった。
どうやら女の子がそう指示したらしい。
小声でナビィに話し掛けた。
『ねぇ……あれって』
〈何だがあの子怪しいのよねぇ……〉
二人でこそこそ話す目線の先はもちろん彼女のことだ。
リンクに楽しそうに喋っている女の子。
おおかた、方法は知らないが城から抜け出してきたんだろう。
ナビィは、女の子がまるで初めてみたいに町をきょろきょろと目まぐるしく視線をあちらこちらへと見ながら回っているのが不思議に思ったらしい。
たしかにこの町に住んでいるなら店の場所を覚えているはずの行動だ。
私は貴族の娘かなと予想していたが。
でも遊んでくれれば今回の目的であるゼルダ姫に会わせてくれるなどと言っていたそうで、このまま放っておけば今の一番の目的が叶いそうなのでナビィはこれ以上何も言わなかった。
そんな私たち二人の話題に上がっている女の子はあの店に目をつけた。
「ボムチュウボウリング……?ボウリングってなに?」
「オレも知らない」
世間に疎い子供二人は分からないらしく、必然的にこちらへと視線が……。
なぜ私に向く。ちょっとまってどう説明すればいいの。
ナビィ、も知らないよな。うあー、説明しにくいなぁ。
『ボムチュウボウリングっていうのは……
えーとボール、……このボムチュウっていう走る爆弾を上手く障害物を避けさせて、穴に入れるゲームかな。大体そんな感じ』
険しい顔で、必死に記憶をほじくり返しながら適当に説明した。
原作の中のミニゲームなんで本来のボウリングは障害物なんて無いし況してや危険過ぎる爆弾なんて扱わない。
要はボールを使って的に当てるゲーム。
……合ってるよね!?
うん合ってるヨきっと!と一人で自問自答をする。人間、間違いは誰でもある。間違えてたら素直に間違えたと言えばバレやしないだろう。
まあ、百聞は一見に如かず。
それに面白そうだと女の子が興味を持ったので実際やってみることにした。
爆弾がどんなのか見てみたいらしい。
耳栓が欲しいな、絶対うるさそうだ。
* * *
――ドカアアアン!!!!
『ひえぇ……っ。耳栓なかったら鼓膜破れてたかも……』
ねじ巻き式で向けた方向へとくねくねしながら走る移動型爆弾、ボムチュウがコッコなどの障害物を避け、見事的に当たった。
自分はお姉さんから耳栓を借りた。どう見てもワイン瓶のコルクを小さくしたものだが防音性は確かだ。
……爆発音がかなり耳に響くし、驚くので心臓の悪い方はご遠慮下さいとかいう貼り紙を貼ったりして警告した方がいいと思うのは自分だけかな。
そしてこんなに爆発させてこの家は壊れないのか、おそらく遊戯用で火薬の量はそこらで売っているものより少なめだろうけれど。
耐震、なんてしてないただの煉瓦家だよね。
積み木崩しの如く崩れるはずだけれど何度も爆発しようが揺れることもなく、なかなか崩れる気配がないのでそれはそれで少し不安だ。
氷河は軋む音が消えた時が一番危険なのだ。
そしてよくコッコはあんなに爆発に巻き込まれても傷一つ付かないな……あれ、よく見たらハリボテ?
いやでも本物……よく分からなくなってきた。眼鏡の度が合ってないのかな。
よく近所迷惑だとか苦情が入らないなぁ。こんな爆音と震動の中、夢の世界へと旅立っているなかなか起きない短髪のお姉さんを見ていた。
お姉さんもコッコもこの家もなかなかタフすぎる。
ちなみにお姉さんは耳栓を一つもしてない。
「きゃあ!面白ーい!!」
わずかに聞こえた声の方向へ視線をやると女の子は今までには無いスリルのある遊びに興奮していた。
事実初めてのリンクよりも楽しんでるみたいだ。
ボムチュウボウリングをいたく気に入ったらしい。
後ろにある蓄音機を見た。……この世界に唯一ある機械だよね多分。
そして爆発音で蓄音機の音は聞こえない。
自分も導火線に火を付けて爆発しないうちに的に目掛けてボムチュウを発進させた。
あ、外した……凄い間近でボムチュウが爆発して眼鏡が吹っ飛びそうだったし音で心臓が喉から出そうだった。
「ねぇ、ゼルダ姫ってどんなひとかな」
ふとリンクがくいくいと袖を引っ張るので耳栓を外したらゼルダ姫について聞いてきた。目の前で爆発が起きてたので少し、いやかなり聞きづらい。
しかも本人は近くにいるのだ、慎重に言わねばならない。
『そうだなぁ……お姫様だし、
可愛くて可憐な(笑顔の素敵な)子だと思うよ?』
お転婆だけれど。
いろいろと言いたいところをはしょってそう言った。
ちらっと横目で見れば、
実際そこにいるお姫様は頬を真っ赤にして照れてたとか。
「美人かぁ……。
それともスッゴいブスだったり……」
『………』
さすがに女の子に対してそれはないよ……リンク。
リンクが言いかけた言葉(=女子にとって禁句)は女の子が向けたボムチュウの爆発によって無かった事に。
頭が大変なことになってるが見た目ほど怪我を負っているわけじゃないのでそのままにした。
リンク、若干ぬるま湯なところで育ったから女の子に疎いからなぁ。
いや疎くてもそんなこと言っちゃ駄目だよ……。
リンクと女の子が的を当てまくってくれたので、ルピーやら景品をたんまり貰って外に出て違う店へ回ることにした。
よしよし、これで今日のご飯代は稼げたぞ。
好意で景品くれた女の子にも大感謝である。
他にも色んなお店を回って遊んだ。
大体は女の子が払ってくれてたんだけど、やっぱり女の子にお金を使わせるのは気使っちゃってなぁ。
さすが今までそういった俗世に関わらなかったというか、お金に関わらなかったというか。
使い方が豪遊です。
セレブだ。駄菓子を箱買いするくらいのレベルのセレブだ。デカイ、しかも大して勘定もせずに金のルピーをぽんと出すものだから。
初めて見た……200ルピー。
『えっとそんなにお金……』
「こく……お父様がお小遣いにって貰ったんです。だから自由に使って大丈夫です!」
……凄いとしか言いようがない。
えーと弓に使う矢は消耗品だし大量に造ることが出来て値段が60ルピーくらいだから……。
それに魔物を倒したりたまに草むらで取れるから
200ルピーってだいたいどのくらいの価値があるんだろうか。たしか、緑が1で青が5、赤が20ルピーで価値的に日本円の10分の1くらいだっけ?でもそれなら200ルピーなんてみんなが驚くほどの価値があるわけだから……しばらくそれをぐるぐると考えながら店を回った。