私には関係ありませんね。



鬱陶しい。ああ、鬱陶しいです。
ここ最近ティアとナタリアに促され、何故かガイと二人で行動させられます。
いえ、何故かなどとは愚問ですね。あのナタリアの何か含んだ笑顔とティアの微笑ましいといわんばかりの顔、そしてガイの伸びた鼻の下を見れば彼らが何を考えているかなど解ります。
お忘れのようですが私は日本で生きた時間を含めれば(自主規制)歳です。隠してるつもりでもバレバレなんですよおばかさん。
というかティアは私のこと子ども扱いしてますが、私貴方より年上ですよ!

今日も今日とてシンクと引き剥がされ、野営中にも関わらずガイに誘われて火の側から離れます。
あまり離れると魔物に襲われるから嫌なんですけど、明日も急ぐんですから早く休みたいんですけど、と何とか戻る言い訳を重ねるものの、大切な話があるという彼は引きそうにありません。
というかそもそも誘われた時だって私散々渋ったのに、何故彼は私が嫌がってることに気付かないんでしょう?
ティアとナタリアも後押ししてましたが、お願いですから私が嫌がってるの気付いてください。

ジェイドは無視するしアニスは関わりたくないと言わんばかりの態度だし、もうこんなPT嫌です。
イオン?ルーク?ああ、この二人は多分三馬鹿の思惑に気付いてません。この天然コンビが。このPTの中では癒しなのでそのままでいてくださいお願いします。
シンクにいたってはぷーくすくすーといわんばかりに笑ってたので後で腹パン食らわせたいと思います。

「それで、話って何ですか?」

野営地からある程度離れた所、会話をしても休んでいるメンバー達では聞き取れない程度の距離を取った場所でガイに声をかけました。
ガイはあーとかうーとか唸り声を上げたあと、今日は星が綺麗だな!と上ずった声でわざとらしく言います。緊張しているようですね。
あの調子では密かに後をつけてきているナタリアとティアの気配にも気付いていないのでしょう。

「話が無いなら帰りますよ。ここいらの魔物は弱いですが、避けるに越したことはありませんから」

「ま、待ってくれ!話はあるんだ、あるんだけど、その……すまない、俺が臆病だから」

「意味が解りません」

「その、大事な話なのは確かなんだ。ユキエ、落ち着いて聞いてほしい」

「落ち着いてないのは貴方です」

「そ、そうだな、すまん」

照れ臭そうに頬をかく姿は一般的には好青年なのでしょう。
確かに見た目だけは良い彼ですが、私は彼の中身が嫌いです。こればかりはいかんともしがたい。
ガイは2、3度深呼吸をしたかと思うと、私の手をとってぎゅっと握ってきました。
私の腕にぶわっと鳥肌が立ったのですが、多分ガイは気付いていません。どこかうっとりとした目で私を見下ろしています。
そして熱に浮かされたような声で、囁くように言いました。

「君が好きだ」

「……はい?」

私が一緒に居るのを嫌がっているのも、手を握られて鳥肌を立てていることにも気付かないくせに、何を言っているのだこの男は??

「普段は表情を動かさない君の、たまに見せる微笑む姿が好きだ。
舞い上がる紙片の中、その小さな身体で軽やかに戦う姿が好きだ。
どうか俺と、結婚を前提に付き合ってほしい」

「え、嫌です。お断りします」

「あはは、照れてるのか?そんな素直じゃないところも可愛いと思うよ」

「人の言葉は言葉とおりに受け取ってもらえませんか?
嫌です、貴方とお付き合いなんてしたくありません。結婚を前提だなんてそれこそお断りです。
というか触らないで下さいなれなれしい。貴方とそこまで親しくなった覚えはありません」

ガイの手を無理矢理振り解き、鳥肌をたてている腕を摩ればガイは何故か戸惑っていました。
断られるなどと思ってもみなかったというところでしょうか?
というか、もしかして今まで私が拒否していたのは全て照れ隠しだとかツンデレだとかそんな風に思われてたのか。何その都合のいい脳内変換、こわい。

「そこまで頑なにならなくても良いだろう?時には素直になったほうがいい」

「意味が解りません。私は素直に自分の気持ちを言っていますが?
私はあなたのことが好きではありません。ですからその申し出はお断りする、といっているわけですが何故言葉が理解できないんですか?

もっと言うならばそういうところのある貴方が嫌いです。
自分の仕事もせず、さも解っているというようなことを言って相手のことを解ってるようなふりをしながら現実から目を背ける姿は醜悪の一言です。嫌悪感しかありませんよ。
という訳でこれからは誘わないで下さいね。誘うならでそこに潜んでいるお二人を誘えば宜しいかと。似たもの同士でとてもお似合いですから」

きっぱりと嫌いと言いきった後、くるりと背を向けてさっさと野営地へと戻ります。
途中潜んでいたらしいティアやナタリアと目が合いましたが無視です無視。まったく余計なことしかしない奴等ですね、置いていってやろうか。
野営地に戻ればシンクがルークと話していたのでそちらへと歩み寄ります。
背後から追いかけてきた三馬鹿が何か言ってる気がしますが知りません聞こえません。

「おかえり」

「只今戻りました。シンク、護衛はかわりますから不寝番が回ってくるまで眠った方が良いですよ」

「ホント?助かるよ、ここ連日だったからちょっと身体辛くてさ」

「成長期ですからね、仕方ありません。それに睡眠はきちんととらないと背が伸びなくなります」

「この仕事でちゃんと睡眠とれとか無茶言うよね」

ため息をついたシンクはルークに許可を取り、木の幹を背もたれにしてそのまま仮眠をとろうとしました。
ルークはルークで最近強行軍だもんな、ゆっくり休んでくれととても良い子です。
だというのに一体何を勘違いしたのか、憤ったガイが休む体制に入ったシンクに向かって思い切り怒鳴りつけました。

「君がユキエに何か吹き込んだのか!?」

「……はァ?」

短い間ですが全員無言になり、パチパチと焚き火が爆ぜる音と風の音だけが空間を満たします。
イオンとアニスなどはガイの突然の怒鳴り声にびっくりしてますよ。
あ、アニスがイオンの耳を塞ぎました。それは正しい判断だと思います。

「いきなりなんなのさ。僕休みたいんだけど」

「とぼけないでくれ。さっき意を決してユキエに告白したら間髪いれず断られた。おかしいと思ったんだ」

「は?それってじごうじと、」

「そうですわ。年の頃も近いですし、何よりユキエは幼い頃より両親を知らないと聞きました。甘えることも苦手でしょう。
こう言ってはなんですが、ガイはルークをたくさん甘やかしてきましたから甘やかすのは上手ですし、とてもお似合いではありませんか。それを引き裂こうなどと、一体何を考えていますの?」

「いやだから、」

「そうよ。もしかして嫉妬してるの?貴方いつもユキエと一緒にいるし、お姉ちゃんをとられるような気分なんでしょうけど……だからって二人が幸せになるのを邪魔しちゃ駄目でしょう?
ユキエになんて言ったか知らないけれど、ちゃんと祝福してあげた方が良いわ」

「聞けよ人の話っ!!」

ガイのあとを追ってきたらしいナタリアとティアの独断と偏見による援護射撃?も加わり、シンクの言葉はことごとく遮られていました。
いつの間にかシンクが私とガイの間を邪魔したことになってます。
さっきガイに呼び出された私をぷーくすくすーと見送った罰が下ったんでしょう。ざまぁです。

シンクは深々とため息をついた後、ユキエが誰と付き合おうが幸せになろうが知ったこっちゃないね、と吐き捨てるように言いました。
あ、地味に傷つきますね。

「大体君がキエに嫌われてるのは自業自得だろ。護衛の仕事をしてない自称護衛剣士さん?
自分の仕事も全うしない君が、仕事に関しては人一倍煩いキエが好く筈が無いじゃないか」

「そ、それは……君たちがいるから」

「僕達が居ようがアンタが護衛であることには変わりないだろ。人を言い訳に使わないでくれる?
それといい加減現実みなよ。さっきの言い様からして告白して断られたんだろ?つまりアンタはふられたの!
キエはアンタなんかと付き合いたくないって言ったなら素直にそれを認めたら?
ああ、アレは照れ隠しとかそんな事する玉じゃないから、いい加減自分の都合の良いように解釈するのやめなよ。
ほんとアンタの悪い癖だよね。自分の良いように解釈して都合の悪いところから目逸らして、それでいて謙遜したり自分は解ってるぞといわんばかりに言い放って現実を捻じ曲げる。
見ていて吐き気がするくらい性悪だよ。ドンだけ根性が捻じ曲がればそんな性格になるんだか。

それと、あんたたちもだ」

ガイにふんだんに悪意を練りこみ言い切ったシンクは、苛立った口調を隠しもせずにティアやナタリアの方を見ました。二人はびくりと肩を跳ねさせます。
アニスに耳をふさがれていたイオンがいつの間にかルークの耳をふさいでいました。それも正しい判断だと思います。

「あんた達がコレの恋を応援しようが何をしようが僕には関係ない。だからあんた達が何をしようがほうっておいたし口出しもしなかった。
けど巻き込まれた以上言いたいことは言わせて貰う。

どこをどう見たらキエがコレを好いているように見えるのさ。むしろ嫌ってるんだよ。
よくもまぁ嫌がる相手に自分達の思い込みだけでそこまでできるよね?
相手の意見を無視して自分達の思い通りに動かそうとするなんて、さいってーだよ、ほんと。
相手の感情を読み取るとかできないわけ?そうじゃなくとも普通確認を取るとかするよね?

どうせあんた達のことだ、キエがどう思ってるかなんて確認したこと一回も無いだろ?
あぁ、見れば解るとか言わないでよね。事実わかってなかったんだからさぁ。
今もだってそうだよ。僕は何の関係も無いのにしたり顔で年上ぶって説教垂れて、お陰で苛々して仕方ないんだけど?

コレに懲りたら思い込みだけで動かずにまずはキチンと確認するって癖をつけてくれる?
解ったらもう僕に話しかけないで。僕不寝番するために今から仮眠取るから。それじゃあ、おやすみ」

すばらしいマシンガントークの後、シンクは疲れたといわんばかりに深々とため息をついてから、そのまま木に凭れて無言になりました。仮眠に入ったのでしょう。
反論の隙すら与えらなかった三人、ティアは金魚のように口をぱくぱくさせ、ガイはあっけに取られ、ナタリアは目を白黒させています。
信じられないといった風の三人に私はため息をついた後、再度シンクに文句を言い出す前に一歩前に出ます。
シンクは仮眠のあとに不寝番が待っています。これ以上睡眠時間を削らせるわけにはいきません。

「それで、まだ寝言を言いますか?」

「ね、ねごと?」

「寝言でしょう。私は嫌いだと言っているのにも関わらず、シンクに言いがかりをつけて貴重な睡眠時間を削ったんですよ?
ああ、それとも代わりにあなた方が不寝番をしてくださるので?それでしたら止めませんよ。まぁ次もシンクが口だけで済ませてくれるとは限りませんが、それでも宜しければどうぞシンクを起こしてお好きなだけぴーちくぱーちく喚いてください。
ただし、私やルーク様たちを巻き込まないでくださいね」

「わ、私達はあなたが素直になれればと思って協力してたのよ!?」

「そうですわ!いつも気を張っている貴方がガイに甘えられるようになればと!」

ティアとナタリアの言葉に深々とため息をついてしまいます。
どうやら私の嫌いという言葉は彼等の耳には届いてないようです。もしくは耳を通り抜けてるのか。そんなちくわ耳いらない。
いい加減この頭の痛くなるような会話も嫌になってきましたし、これ以上続けたら私のHPも削られそうなので、最後にもう一度だけ言って終わりにしましょう。

「そうですか。じゃあ素直に言いますからあなた達も曲解せずに素直に受け取ってくださいね」

今にも詰め寄ってきそうな三人にそう言えば、三人はようやく話が通じたといわんばかりに胸をなでおろしました。

「私は貴方達三人が 嫌 い です。解りますか?き ら い なんです。ガイと結婚するくらいならブウサギと結婚したほうがマシです。
理由は先程申し上げたとおりです。文句があるなら私が先程言った内容を脳味噌に刻み込んでから反論してください。でないと無視しますから」

ガイだけでなくティアやナタリアも含め嫌いという言葉を精一杯強調して言い切った後、予想している言葉が返ってこなかったことにぽかんと口を空けている彼等に背を向けて私は見張りのためにさっさとその場を後にしました。
シンクが目覚めるまで私が見張り番です。

まぁその後また三馬鹿がごちゃごちゃ言ってきましたが……ええ、無視しましたよ。
だって私ちゃんと文句があるなら〜と条件つけましたから。それがクリアできていないなら宣言どおり無視させていただきますよ。
だから煩くしすぎて仮眠中のシンクがぶち切れても、私に食って掛かってちゃんと睡眠をとらずに翌朝寝不足になっても、自分で何とかしてくださいね。
ほら、後ろからシンクの気配がしますけど……まぁ、私には関係ありませんね。


終わり。







天音さまリクエスト
リセマラのIFで夢主に恋したガイが告白しようとして、それを知ったPTの女性陣が彼の恋を応援。
良い雰囲気にさせようと行動しガイもそれに答えて夢主に告白するも、彼女に拒否されて断られ、その理由をキッパリと言われ、夢主かシンクが更に女性陣にも厳しく言う。

天音さま、大変お待たせいたしました。
大体のリクエストには応えられたと思うのですが、女性陣からアニスが逃げだしたうえ最後は結局シンクによる物理になりました。
ただリセマラのアニスは姉の怖さを知っているのでここは大目に見てもらえると助かります。

では、リクエストありがとうございました!

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