萌ゆる緑に身を焦がす
イオン
ごほ、と咳が出る。
シンクの救出に飛び出した夜、案の定僕は熱を出した。
それでも守護役の子達は僕にパートナーが出来たことを喜んでくれたし、いつからそんな関係だったのかと興味津々だった。
僕一人のことではないので、と言葉を濁しはしたが、夜の逢瀬について話して良いかシンクに一度確認を取った方が良いだろう。シンクから言わせればあれは逢瀬じゃないと言われるかもしれないけど。
だるい身体を起こし、ベッドから降りてよろよろと窓に向かう。
シンクが来たわけじゃない。けど窓を開ければ冷たい夜風が吹き込んで火照る頬を撫でてくれる。気持ちが良い。
空を見上げればぽっかりとルナが浮いている。前世風に言うならば月だ。
風になびく髪を抑えながら、ぼうとルナを眺める。
「……これで満足ですか、イオン」
もういない七番目のレプリカイオンに声をかける。服の胸元を握り締めても、答えが返ってくることはない。
当然だ。七番目のレプリカイオンはもういない。この身体は僕のものだ。
「貴方の願いが叶ったなら、あとは好きにさせてもらいますよ」
それでも声をかけてしまうのはただの感傷だろう。
目を閉じて数秒だけの黙とうをする。
「今は僕が、導師イオンだ」
げほ、と咳が出た。
瞼を開ければルナは静かに輝いている。視線を落とせばダアトの街並みがある。
前世と違い、宵闇の中に光る生活の灯りは殆どない。当然だろう。皆眠っているのだから。
窓を閉める。風が止まる。ベッドに戻る。
ゆっくりと目を閉じれば、発熱している身体はすぐに眠りに落ちていった。