萌ゆる緑に身を焦がす
体が熱い。咳をする度に全身に響く振動。それすらも今の身体には負担になる。
導師イオンとして作られたこの身体は余りにも虚弱で、自らに課せられた役割を果たすには余りにも頼りない。
それでも僕は導師イオンだった。
そうあれと作られ、そうあれと選ばれ、そうあれと教育された。
それこそが僕の存在意義であり、それだけが僕の存在意義だった。
げほ、と咳が出る。意識が朦朧とする。
こんなことでは導師イオンとしての役目を果たせない。
やるべきことは山ほどある。導師としての仕事も。平和の象徴としての仕事も。改革派の筆頭としての仕事も。
やらねばならぬ。やれねば、僕は導師イオンではない。
僕以外の六体のレプリカイオンはもういない。
どうなったのか具体的には聞いていないが、きっと廃棄されたのだろう。
ならその命を継ぐためにも、僕は導師イオンでなければならないのに。
それでも導師イオンとしてあろうとすればするほど、碌に食事もとれない身体はやせ細るばかりでうまく動いてくれない。
イオンであろうとするほどイオンから遠ざかっていく。
どうすればいい。
どうしたらいい。
熱に浮かされながら考える。
かすむ視界はもうほとんど見えてすらいない。
その中に、小さな光が見えた。
もしかしたらただの幻覚だったのかもしれない。希望の形をした、終わりの訪れだったのかもしれない。
けれど震える指先を必死に伸ばし、捕まえたそれをぎゅっと胸元で抱きしめる。すう、と身体の中に入っていくそれに、直感的に安堵する。
ああ、これでもう大丈夫だ。
これで僕は、ちゃんと導師イオンになれる。
ほう、と息を吐く。熱で潤んだ視界。溢れた涙が目じりから零れた。
もしこれで僕はここで終わったとしても、この導師イオンの身体は生き続けるだろう。
そして僕よりもずっと、導師イオンとして在ってくれるはずだ。
何故かそう確信していた。あの光こそが、僕の望みを叶えてくれると。
──きっとこれが、僕の生まれた意味だった。
ゆっくりと目を閉じる。
ふつりと意識が落ちて。
そっと息が止まった。
大丈夫、すぐに息は吹き返す。
そしてその時こそ、この身体は導師イオンと成るだろう。