05

「ガイ様華麗にさんじょなぼごふっ!!」

「おー、綺麗に決まったなー」

「すみません…つい反射で…」

空から降ってきた謎の男、退場。

そもそも何故こうなったかというと、アルテミシア達がタルタロスに辿りついた時、ルークは既にマルクト兵に囲まれて地面へと降り立とうとしているところだった。
詳しく話を聞くと、カーティス大佐は六神将のラルゴとの戦闘でティアを人質に取られて封印術を喰らい、一度捕らえられたものの骸狩りという作戦を使用し脱出。現在は同じく六神将のアッシュと戦闘中らしい。

なのでマルクト兵たちとルークは話し合った。
この隙に逃げ出そう、と一致団結した。

こうして逃げ出したルーク達、途中六神将のアリエッタと出会ったものの、ライガクィーンの件があったのと今回の襲撃にルークは関係無しということで出口まで送り届けてくれたのだという。
なんとも律儀である。

そして艦から出てきたところのルークと合流したアルテミシアは、素顔丸出しのシンクとイオンを見比べたアリエッタと一悶着。
そんな中飛び降りてきた男をアルテミシアは反射的に回し蹴りを食らわせてしまったのだ。
で、冒頭に戻る。

「あれ、誰だってんでしょうか?」

「うちの使用人だと思うんだけど…まぁティア達と同じ人種だから無視して良いぞ」

「心労の元ということですか?」

「そうそう」

痙攣したまま地面に転がっている使用人。
結局無視しようという結論になり、全員で一番近くにあるというセントビナーに向かうことになった。
ぐずついてイオンにくっついたまま離れないアリエッタも一緒に。

マルクト兵に護衛されるルークに最初こそシンク達は近づけなかったが、アルテミシア経由でルークの耳に入り野営の際に話し合いの時間をとることになった。
最初はマルクト兵も渋ったものの、アルテミシアが同席し妙な真似をしたら雷を落とすということで話がついたのである。

パチパチと火が爆ぜる音がする。
片目に包帯を巻いたシンクと、火の光を眼鏡に反射させるディスト、そしてイオン…ではなくアルテミシアにくっついて離れないアリエッタと、何故か同席させられているイオンが集まった。

「……ところでアリエッタは何でアルテミシアにくっついてるんだ?」

「シンクも、ディストもっ、このイオン様も信用できないもんっ!総長も、アリエッタにイオン様が生きてるって嘘ついたっ!」

「で、何でアルテミシアなんだ?」

「アルテミシアからママの臭いがするから、それに、アルテミシアはママを助けてくれた。シンク達なんかよりずっと信用できるもんっ」

「あ、そう…まぁ良いけど、鼻水はかんどけ。女の子だろうが」

そう言ってルークはアリエッタにティッシュを渡す。
アリエッタもそれはそれこれはこれなのか、それともルークと敵対する理由が無いからか素直に受け取った。
ちーんと鼻をかむアリエッタはともかくとして、ルークはマルクト兵を聞こえない位置に追いやり、凶悪な笑みを浮かべて全員を睥睨する。

「さぁて、話とやらを聞こうじゃねぇか」

焚き火だけが光源だというのに、ディストとシンク、そしてイオンの顔がサァッと青ざめるのが解った。

これは話し合いじゃない。
ルークに情報をもぎ取られるだけだ。

ルークの凶悪な笑みと威圧感に押されて瞬時にそれを理解したものの、逃げようとすれば恐らく妙な行動と判断されアルテミシアから雷が落とされるのは想像にたやすい。
その張本人であるアルテミシアは意味が解らず首を傾げているのが、シンクやディストからすれば今はちょっとだけ憎かった。

結局、シンクとディストは悟った。ヴァンの計画は失敗すると。

シンクとディストが質問する前に、ルークは実に楽しそうに語ってくれたのだ。

キムラスカはヴァンを信用などしていなかった。そもそも最初からおかしかったのだ。
何故キムラスカが内密に探していた公爵子息を、ヴァンが見つけるのか。
本当にただ見つけただけだとしても、ルークが誘拐されたことは秘匿とされていた筈なのに何故それを知っているのか。

例え神託の盾騎士団の情報網でその情報を掴んでいたとしても、だ。
堂々とルークを連れてくるなど、馬鹿の極みである。疑ってくれと言っている様なものである。

しかもヴァンは、ルークが赤ん坊のようになったことをマルクトの実験のせいだと言い切った。
キムラスカとしては、何故ダアトの人間がそんなことが解る?というのが本音である。
むしろお前がやってマルクトに罪を擦り付けてるんじゃないか?という邪推をしてしまうのが人間というものである。

これをきっかけに、キムラスカはヴァンを中心にダアトを徹底的に洗った。
表向きは預言狂いのふりをして、しかし密偵を差し向けて確実に情報を集めていった。
ルークもレプリカの身でありながらファブレ邸で受け入れられ、教育を施され、この7年間キムラスカのために尽力してきた。
ヴァンを慕っているふりをするのも、あの髭が何かコソコソやっているのを突き止めるためにすぎない。

ベルケントからの情報で、ヴァンがフォミクリー技術を利用して何かしようとしているのは解っている。
しかし肝心なところが未だに掴めないのだと…。

「勿論、オレがこんなに暴露したんだ。ディストとシンクも、これに相応しい情報を話してくれるんだよな?」

青ざめるディスト、頭を抱えるシンク。
どう想像しても、計画が成功するビジョンが見えない。
このレプリカルークの演技にころっと騙されるヴァンが、キムラスカという大国相手に勝てるわけが無い。

「情報次第によってはオレだって色々得点つけるぜ?だって二人は"上の命令に従ってただけ"だもんな?
しかも二人の優秀さはオレも聞いてるからな、"情報提供してくれるならファブレが支援しても構わない"んだけどなー」

それはつまり、情報提供をしてくれたならファブレで匿う。
それに問題ごとになったとしても、上に従っていただけだと庇ってやる。
ということである。

「……あの髭…いえ、ヴァンはそれはもう阿呆な計画を立てていましてね」

結果、ルークから持ちかけられた司法取引に、ディストはあっさりとヴァンを売った。
シンクも隣で必要事項だと思う部分の情報を付け加える。

キムラスカ、預言離れしてるんでしょ?
だったらそれを加速させた方が、よっぽど理想に近づけると思ったんだ。
決してルークが怖かったわけではない。断じて。

シンクは心の中で言い訳しつつ、細かい説明はディストに任せた。
フォミクリー関連は聞いてて気持ちの良い話では無いし、そこまで詳しいわけではない。
なので傍観を貫いていたイオンやアリエッタ、そしてアルテミシアの方を見る。

イオンは口は開かずとも話しは聞いているようで、今にも倒れそうなほど顔を青くさせている。
アリエッタは泣き疲れたのかアルテミシアにしがみ付いてお休みモードだ。
そしてそんなアルテミシアの背中には、ピンクのひよこがへばりついている。

「……ねぇ、そのピンクのひよこ何?」

「ん?この子はシエロって言うんです。私のサポートパートナーなんですよ」

サポートパートナーの説明を受けたシンクは、聞いているうちに自分の眉間に皺が寄っていくのが解った。
彼等は、アークスのために生産される人工生命体。
つまり自分と同じではないか、と。

「はっ。つまり人間のエゴで作られた存在って訳?」

「そうですね。だからシエロ達には感謝しています」

寝息を立てるアリエッタを起こさないよう気をつけながら、アルテミシアはシエロの頭を撫でた。
シエロは気持ち良さそうに目を細め、喜びを表すかのように腰を左右に振っている。
が、いかんせん腰に装備されている双爪も一緒に揺れるので非常に見ていて怖い。

「…うまい具合に飼ってるじゃないか。ひよこ姿なのも家畜の表れってこと」

「いえ、それは私の趣味です」

皮肉を込めたというのに、きっぱりと言い切られてシンクはずっこけそうになった。
アルテミシアが青白い板を呼び出し、指を滑らせる。
ピンクのひよこを青白い光が包んだかと思うと、そこから表れたのは黒い短髪の白すぎる肌をした男が一人。
ただし、身長はひよこの時よりも一回り小さい。

「これがシエロの素顔です。デューマンという種族をかたどっているため、肌が白く角があります」

「角…?」

「はい。デューマンの特徴の一つですね。オッドアイで、角があり、肌が白く、身体に紋様がある。そして攻撃性が高い。
アークスは私のようなヒューマンや、シエロのようなデューマン、他にもニューマンやキャストといった多種族によって成り立っているんですよ」

アルテミシアの説明を受け、改めてまじまじとシエロを見るシンク。
暗くて解りづらかったものの瞳は黒と紫のオッドアイだったし、恐る恐る触ってみれば頭には確かに角があった。
ただ服を着込んでいるため、身体の紋様だけは確認できなかったが。
大人しくシンクに触られていたシエロだったが、シンクの手が離れた途端またアルテミシアにしがみ付く。

「マスター。もうスーツは着ないの?」

「シエロはまた着たいですか?」

「敵が面白い顔をするから、着たい」

「楽しいですか?」

「うん!」

シエロの言葉にくすくすと笑ったアルテミシアが再度指を動かせば、シエロの身体が光に包まれピンクのひよこに戻る。
ピンクのひよこ姿に満足したらしいシエロは、今度は何故かシンクの膝の上に座った。
シンクは戸惑った後、何とかしろとアルテミシアを睨むがアルテミシアはやはり笑うだけだ。

「……確かにサポートパートナーは作られた存在です。ですが私は彼等の補助に感謝していますよ。共に戦う存在でもある彼等を、蔑ろになんてしません。
でも…確かに、サポートパートナーを奴隷のように扱うアークスが存在するのも、また事実です。
結局は…向き合う人間の心次第なんだと、私は思っています」

「……人形に感謝するなんて、あんたも大概変わってるね」

「人形じゃありませんよ。パートナーです。彼等を人形だと思うってことは、シンクの心が彼等をそう扱っているってことですよ。
それとも、人工生命体に対して何か嫌な思い出でも?」

レプリカのことを知らないアルテミシアの言葉に、シンクは顔をそらすことで答えを避けた。
彼等と自分は同じだと思った、そんな彼等を人形と思うということは、自分のことも人形だと思っているということか。
人形も何も、自分は人形にすらなれなかった廃棄された失敗作だろうにと自嘲が浮かぶシンク。

「おいシンク」

「……何さ」

「お前もウチ来いよ」

「はァ?」

突如ルークに声をかけられ、シンクは呆れたような声を上げてしまう。
何故そうなったか解らずにディストを見れば、ディストは何故か彼方を見つめたまま動かない。
何があった死神。

「ディストはベルケントで働くことが決まったんだけどさ」

「決まったんだ…」

「シンクはまだ産まれて2年だろ?けどそれだけの手腕が発揮できてるってすげぇからさ、ウチで働いて欲しいんだ。
勿論給与面は優遇するし、希望があるなら一般人として暮らしてくれても良いぜ。
その場合は成人するまでウチで面倒みっから」

「シンクって産まれて2年なんですか?」

「おう。ちなみにオレ7年な」

「凄いですね!普通の人よりずっと凄いじゃないですか。超人か何かですか?」

「だろ?レプリカ舐めんなって感じだよなー」

笑うルーク。驚くアルテミシア。

普通の人よりずっと凄い。
レプリカ舐めんな。
その言葉がシンクにずん、と来る。
隣を見ればイオンも目を見開いていて…。

「…しょうがないね。アンタに話しちゃった以上ヴァンのところには戻れないし、ファブレで匿ってくれるって言うならそっちに行くさ。その代わり、ちゃんと預言撤廃してよね」

「わぁってるって。既にキムラスカじゃ預言離れ始まってからな、後は一般市民にそれを浸透させていくだけだ。まぁこれが一番面倒なんだけど」

「失敗したらただじゃ済まさないから」

「へいへい」

こうしてシンクとディストの寝返りが決まった。

翌日、シンクとディスト、そしてアリエッタを加えた一行はセントビナーに到着。
即座にグランコクマとエンゲーブに鳩を飛ばしてもらい、ルークはグランコクマより派遣された護衛、アスラン・フリングス将軍と合流する。

更にキムラスカより迎えとしてやってきたセシル少将を加え、ルークはようやくバチカルへの帰途へと着くことができたのだった。
勿論、アルテミシアも一緒に。








奇異なる訪問者







キリが良いのでココで終了。

フリリク第二弾。
JUNKにあるTOA×PSO2で数話。
名無し様、時間があるときで良いので〜とのことでしたが、折角なので10000のフリリクに振り分けさせていただきました。リクエストありがとうございました。

多分この後正体のばれたイオンはバチカルに辿りつくまでルークに政治について叩き込まれます。
そして己の未熟さにショボン。
バチカルでは連絡貰ってお迎えにきたトリトハイムに叱られて更にショボン。

本当はタイトルは「奇異なる訪問者によって崩されたシナリオ」になる予定でしたが、長いのでぶった切りました。
あと口は悪いけどちゃんと政治家なルークも書いてて楽しかったです。
ルークは意地悪なので、不敬だって解ってても教えてあげません。
後で罰を受けて思い知れば良いとか思ってる性悪ルークです。

でも基本は良い子なので、この後戦争にならないよう奔走するのでしょう。



清花

ALICE+