お互いにな


ぱきり。
空気が凍るその冷気は、吸えば肺胞が凍り、壊死する。

白い蓮葉が氷結の衣をまとい、黄金を宿した扇は華やかに開かれ、
影に潜んだ悪意がケラケラと含み笑いをもたらした、ある月明かりの夜。

童磨は結晶ノ御子を弄びながら名前にくだくだと喋りかけた。

「可哀想、可哀想なんだ。お伽噺に縋って縋って、最後に笑顔で有難うって
俺に向かって感謝するんだ、人間達は。」

なんて可哀想、そう口にした言葉とは裏腹に、童磨は酷く楽悦とした笑顔を
浮かべ、名前の着物の帯をほとりと解いた。

「俺はとっても優しいんだ。だから最後までお前が感謝してるのは、お前の
子供を喰った鬼だよって、お前の目指してるのは只の幻想だよって、ただの
一つの真実も教えてやらないで逝かせてあげたのさ。」

「あら、そいつは素敵ね。」

黄金に対になるような、月夜を思い浮かばせる銀の扇を持った名前は、
露出した素肌の肩に触れようとした童磨の手を叩き落とした。

べちん、と高い音がして、はたかれた童磨は「痛いなぁ、もう」とおどけて笑った。

「いいじゃないか、俺と君の仲だし。」

わざとらしく叩かれた側の手を痛そうにさすり、ちらりとあざとくこちらに
目を向ける童磨に、名前はクスリと笑うと、その手をわざと強く握り、
べろりと舌を這わせた。

「久々に会ったからってその態度?嫌ね。」

にこりと笑い、ドロドロとした感情を滲ませて艶やかに笑う名前に、
童磨はそのまま噛り付いた。

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