熱い夜



イグニスはホテルのエレベーターにいた。

きっかけはグラディオ。
最近仕事詰めで疲れていたイグニスに気を使って、グラディオは性の処理を勧めたのだ。

最初は何を言っているんだと呆れたが「仕事でこん詰めてる時はそーゆー事をした方がストレス発散になるぜ。お前も男なんだからよ。」
確かに、何だか近頃人間としての本質というか、欲が欠けていた気がする。
機械のように毎日仕事に打ち込み、心身共に疲労がたまっていた為か、自分を大切にしていなかった気はする。
性に対する執着は少ない方だが、俺もやはり男だ。グラディオの言うそーゆー事をしたくならない訳でもない。
少しは人間らしい事もすべきか…まあ、かと言って娼婦を呼ぶ事になるとは。
グラディオのツテで内密に進めてくれる、との事ではあるが。
しかもご丁寧にイグニスの想い人の特徴に似た女性を連れてきてくれるという。
どうせなら本人を抱きたいが、想いはまだ伝えられていないので仕方ない。

「まあ、割り切って楽しめよ。軍師様。」
そう言ってグラディオから事前にホテルの鍵を渡された。

チンとエレベーターが目的の階に着いたことを知らせる。
鍵に記された号室の部屋に行き扉を開けると既に人の気配がした。
甘い香水の香り、女性の方が先に部屋へ着いていたようだ。

部屋へ進むと、ベッドに腰掛けた女性が振り返った。

「あ」


「…」

イグニスは目を見開いて立ち止まった。

女性はマズイ、と言うような顔をして視線をそらした。そのままベッド脇の荷物を取りイグニスの横を逃げるように通ろうとしたがそうはさせなかった。

ガシッと腕を掴まれる。

「…痛い、離して」

「…モーグリ、ここで何をしている」

いつも声色の変わらないイグニスが、少し怒っているように感じた。

「イグニスには…関係ないでしょ、私たちただの職場の同僚じゃない。そういう自分こそ人のこと言えるの?」

そう、目の前の女性。
モーグリと呼ばれた女はイグニスの同僚、王都に使える警備隊の一員であり

「関係なくはない。」

イグニスの想い人。

そのまま腕を引き寄せた。
モーグリはバランスを崩しイグニスの胸に倒れこむ。
モーグリはとっさの事に赤面しながらその腕から逃れようとするが、イグニスはそのままベッドへモーグリを座らせた。
イグニスは膝立ちでベッドサイドからモーグリの目を見据える。

鋭い視線に心が痛かった。

モーグリは観念したのか大人しくなったが、首を横に向けイグニスを直視できなかった。


しばしの沈黙。


その間イグニスはモーグリを見据えたまま。
モーグリはいつまで見ているんだと顔を正面にむけた。

そこには相変わらずの難しい顔をしたイグニス。

先に耐えきれず口を開いたのはモーグリだった。

「…幻滅した?職場じゃ私、いい子だもんね…。」
その声は少しだけ震えていた。

胸元の開いたディープグリーンのタイトなドレス、黒のヒール、控えめながらも確かに香る香水、いつもはまとめている髪をサイドに流し、唇には薄ピンクのルージュ…。

男を誘う娼婦そのものだった。

いつもは地味で大人しく、真面目に仕事をこなすモーグリとは正反対である。

イグニスは少し溜めてから言った。
「…俺にモーグリを叱る資格もなければ、こういう事に対して偏見があるわけでもない。…だが、惚れている女性が他の男に抱かれていたとなれば話は別だ。」

「…は?」
何を、何を言っているんだと、モーグリは意味がわからなかった。
きっとそうやって持ち上げといて抱きたいだけなんだ、だってイグニスだってそういう事をする為に此処に来ている訳だし。

「…イグニスも男ね、そう言えば今私を抱けると思ったの?」
モーグリは苦笑しながら言った。
言った後、ギリギリまでイグニスに顔を近づける。

触れるか触れないかの距離で見つめた。

このまま…そう、このまま押し倒して無茶苦茶に抱いてくれればいいと思った。



モーグリもイグニスが好きなのだ。



こんな事がバレて、嘘で好きと言われ、今まで通りに過ごせるはずがない。


イグニスは少し困った顔をして続けた。

「浮いた話のない俺じゃそう思われても仕方ないかもな…。だが嘘ではない、モーグリを…いつも目で追っていた。一生懸命で皆がやりたがらない仕事も請け負ってくれたり、気配りもでき、夜遅くまで書類の整理をしてくれていつも助かっていた。」

モーグリは困惑して顔を離す。

「あまり笑わないが、たまに笑うと笑顔の似合う可愛らしい女性だと思った。」

困った顔から優しい笑みに変わるイグニス。


聞いた瞬間、すーっと、モーグリの瞳から涙がこぼれた。
しゃくり上げて泣き出すわけでもない、なにか救われた様な気持ちになって、ただ無意識に涙が溢れた。

そのまま手で顔を隠し、モーグリはベッドに背中から倒れた。

少し黙った後
「…私、私ね。いつもこんな事してるわけじゃないんだよ…それだけは信じてほしい…」

ぽつりぽつりとモーグリは語り始めた。

イグニスは立ち上がり、ベッドに腰掛ける。

ギッという体重のかかる音がした。

「い、イグニスが好きなのっ…好きで好きで仕方なかった…。でも大した接点もないし…私なんか地味な同僚だし…」

一生伝える事のないと思っていた気持ち。

「イグニスに愛されたかった…その…抱かれたかった…。何度もそういう事を考えて、身体が熱くなって…抑えきれなくなった…。だから…抑えきれなくなった時、知り合いに頼んでたまにこの仕事をして…発散するようになった…」

イグニスはモーグリの手を顔から退けると、覆い被さるように顔を合わせた。

泣いてぐちゃぐちゃな顔を見て、イグニスは腹の底から湧き上がる男としての欲を抑えきれなくなった。

この泣き顔さえも愛おしい。

何度も触れたいと願ったモーグリの頬、唇、身体…。

それを確かめるように指でなぞると、ピクリと震えるモーグリの身体。

「いやらしい女なのっ…真面目で地味なんて嘘…{emj_ip_0792}欲のために好きでもない人に抱かれる女なっ…ッ{emj_ip_0792}」

言い終わる前にイグニスは口付けた。
激しく舌を絡ませ、音を立てながらモーグリの舌を味わう。片腕でモーグリの腕を頭の上で拘束し、既にはだけかけていたドレスの肩紐をずらし、胸を露出させる。
白く透き通る肌を撫でれば、イグニスの手に吸い付くモーグリの身体。
熱い息と唾液に塗れた顔を離すと、モーグリの瞳には目に毒なほど色気に溢れたイグニスの顔。少しズレた眼鏡とどちらのものとも解らぬ唾液に濡れた唇。
吐き出される熱い吐息。
モーグリの雌が疼くのを感じた。

「すまないモーグリ…今日は優しくできそうもない…」


そう、想いは伝わった。

こうなればもう気持ちの通じ合った男と女。

何も遠慮は要らない。


「いいの…たくさん激しくしてッ…」

自らイグニスの唇に口付け、舌を絡める。

これ以上にない幸福感と興奮の同時進行に頭がおかしくなりそうだった。

イグニスはサイドテールに眼鏡を置くと、余裕な顔で不敵に笑う。

「そのつもりだが、覚悟してくれ。」

首筋に口付け、そのまま舌を胸へと這わす。
既に空気に晒され固くなった先端にねっとりと舌を絡ませ唾液を塗りたくると、ビリビリとした快感が脳を刺激する。
優しく方胸を揉みしだきながら、片方は舌での愛撫を続ける。下から上へ強めに揉みながら口に含んだ先端を甘噛みした。
モーグリはイグニスの頭を撫でながら身体を震わせ快感に酔いしれる。
ふと、顔を上げたかと思えばまた口付け、イグニスの長いまつげが妖艶さを際立てる。

モーグリはイグニスのシャツのボタンを外した。
鍛え上げれた腹筋と、首から鎖骨にかけて指を這わすと、目線を合わせたままその手を掴み、人差し指を口に含む。ピチャっと水音を立てていやらしく舐められる。

「…ん…いやらしい顔…」
そう言われたイグニスはフッと微笑する。

そのまま指を下へと這わせ、秘部へ触れると、一層モーグリの熱は上がっていった。

子宮が疼くのがわかる、むず痒いような感覚が身体を支配する。下着をずらし、繊細なその指でぷっくりとした割れ目を撫でられる。
既に濡れすぎなその部分を楽しむように何度も上下に撫でられ、ぬるぬるした愛液を肉芽へ塗りつける。

「んあぁっ」
強く潰されたかと思えば、皮をめくり上げクリクリと優しく撫でる。そのまま顔が下へ降りたかと思ったら足を開かれ割れ目に舌をねじ込んだ。

「ぁあっ!いぐ…にっ…それだめぇっ…{emj_ip_0792}」

肉芽を弄りながら愛液を味わい、ピチャピチャと音を立てながらモーグリの恥ずかしい部分を舐め尽くす。
シーツを握りしめ、快感に顔を歪める。
時折イグニスは目線をモーグリへ向け、感じる顔を確認しては執拗にそこを攻め立てた。
くぷんと柔らかい肉に指をねじ込み、中をグチュグチュにかき乱す。舌は肉芽を転がしながら、確実に絶頂へとモーグリを導いた。

ガクガクと震えだす下半身、足の指をピンと伸ばし、達する寸前のモーグリ。

「ゃあんっ…ぁあ{emj_ip_0792}っあぁああっいくいくいくっ…{emj_ip_0792}」

びくん!と一層強く腰が跳ねたかと思えば、はぁはぁと肩で息をして虚ろな瞳でイグニスを見た。

イグニスは顔を上げ、唇に付いたモーグリの愛液をペロリと舐める。
その姿に見惚れていると、カチャカチャと金属の音がした。スラックスを脱ぐイグニス。
正直限界だろうが、こんな時でも仕草の一つ一つがスマートでイグニスらしいと思った。

パサっと床に衣服を落とし、軽く口付けをしながらイグニスの固くなった肉棒がモーグリの割れ目を押し広げた。
先端にモーグリの液を擦り付け、上下になぞる。十分に解したそこはなんの抵抗もなくイグニスを飲み込んだ。ぐちゅっと音を立て、自身を進める。

「ぁあっ」
満たされる質量感と快感に顔を歪めながら、圧迫されて行く下腹部に子宮がもっと!と声を上げる。
イグニスは短く唸り、ゆるゆると腰を進めていった。
汗の滲む額に、見たこともないイグニスの快感に満たされた顔。それだけで脳内がおかしくなりそうになる。
気づけば根元までイグニスの雄を咥えていた。
「…辛くないか?」

ずっと欲しかったモノだ。辛いわけがない。イグニスらしい気遣いだが、そんな事はいいから早く突いて欲しかった。

それを察したのか、イグニスはモーグリの頭を抱き、耳元で「こんなにいやらしい女だったとはな。」と囁くと、深く突き上げた。

「ひっ!」

突然の刺激に目を見開く。
ぐちゅぐちゅと卑劣な音を立て、結合部から滴る愛液がシーツを濡らした。
頭を抱きかかえられている為、お互いの息遣いが耳元で響き合う。
目を閉じて、お互いを感じた。

ふと横を見るとそこには間接照明に照らされた部屋の壁に、男女がいやらしく交わる影が映し出されていた。

「よそ見はよくないぞモーグリ。」

身体を引き寄せられイグニスの上に座らされる。不敵に微笑みながら下から突き上げ、違う場所を攻められた。

「あっ、あっ、あっ…!」

突かれる度に漏れる声。
ぷるぷると小刻みに揺れる乳房に手を伸ばし、強めに揉みしだく。

限界が近いイグニスは眉間のシワを一層深くして息を吐いた。

「そんなにいやらしい顔をするな…もう…余裕がなくなる…」
そう言いモーグリをまた押し倒す。

イグニスは何度目かの絶頂を我慢し、ラストスパートをかけるように激しく突いた。

激しく肌のぶつかる音が響いた。
髪は乱れ、お互いの汗と香水の混じった匂いが鼻をつく。モーグリは背中に爪を立てながらイグニスの広い背中を抱きしめた。


「くっ…{emj_ip_0792}出る……ぁ…っ」

寸前に引き抜き、モーグリのへその辺りに精を吐き出した。
ピュッピュッと肉棒が脈を打ちながら、最後の一滴までを吐き出す。

生暖かい感覚が腹に広がる。

見を細めながらそれを見、イグニスはモーグリの横に倒れこんだ。
肩で息をしながら余韻に浸るモーグリの額に張り付いた髪をかきあげる。

「愛している…モーグリ。」

愛おしげに撫でられ、イグニスは愛を口にした。
こんなセリフをさらりと言えるなんて、流石イグニス…と思ったら少し笑ってしまった。

「イグニス、順番がめちゃくちゃだよ。」


「…善処しよう。」


2人は微笑み合うと、優しく口付けを交わした。




思いは、伝えなければわからない。

勝手に思い込んで、悩むなんて勿体無い。

全ては言葉にしてから始まるのだから。



END


2017.02.20

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