酒と肉がよく似合う、野生的な男だと思った。
レスタルムの騒がしさや裏路地の小汚さもいい意味で彼に馴染んでいた。
だから彼がインソムニアの良家の出身で尚且つ王都の警備隊だと知った時は、人は見かけによらないんだなあ、と驚いた。
「なーにジロジロ見てんだよ。」
レスタルムのBARで2人は呑んでいた。
グラディオはビールジョッキ片手にモーグリの額を小突く。突かれた衝撃で一瞬ウッと声を漏らして額を抑える。
「いや、いつ見ても良家のご子息様には見えなくて。」
「あ?お前だってそんなやわな身体で、ハンターに見えねぇけどな。」
うるさい、とばかりに睨みつけ、酒とつまみを頬張る。うむ、やっぱりこのBARの生ハムは美味い。
モーグリとグラディオは付かず離れずの何とも言えない関係だった。男女の仲というわけではないのだが、ハンターをしているモーグリと数年前に此処、レスタルムのBARで出会い、声を掛けられたのがキッカケだった。ナンパというより、何か話し相手が欲しいという様な感じで、一夜限りの、なんてそんな事にはならず普通に話し、意気投合し、こうやってたまに会っては世間話をする様な関係になった。いい飲み仲間って所だろうか。
「美味いか?」
生ハム、俺にもよこせと言って口を開ける。
特に何も考えずにモーグリはグラディオの口に運んでやった。ハタから見れば恋人の様に見えるのだろうか、ふと思ったら考えてた事をグラディオが口にした。
「こうやってると恋人同士に見えるな。」
「なっ」
その笑った顔が妙に色っぽくてドキッとしてしまう。
「…そうやっていつも女の人誘ってるんだ。だから特定の女性が出来ないんだよ。」
誤魔化しながら言う。
顔が赤くなったのは酒のせいではない。
最近、グラディオから男を感じて困る時がある。鍛え上げられた太い腕や、その色黒の肌に似合うタトゥー、少し伸ばした髪と、がっしりした胸板。抱きしめられたらどんな感じだろうかと、酒が進めば進むほどよからぬ事を考えてしまう自分がいた。
今日はちょっと飲みすぎたかもしれない。
「あー、なんて言うか、身体の相性を確認し合わないとダメなんだよな。」
ま、未だにピッタシの女はいねぇな、なんて言いながらジョッキを空にする。
「…まあ、大事よね。」
思わぬ返しに苦笑する。
「試してみたくなったか?」
ニヤニヤと意地悪く笑うグラディオの口に食べかけてたチーズを押し込む。
「…ちょっと試してみたくなったかも。」
グッとグラスの中の酒を全部流し込んで、モーグリは決意した目でグラディオを見つめ返した。
一瞬目を丸くしてチーズを口から落としそうになったが、ニヤっと笑って咀嚼する。
「一ついい事を教えといてやろう。」
向かい合っていたテーブルを乗り出して、グラディオはモーグリに軽く口付けた。
そのまま耳元で低く、甘い声で囁かれる。
「身体の相性ってのもあるが、やっぱりお互いの気持ちが込もってねぇと気持ちよくならないんだぜ。」
「…私はその点は問題ないと思うけど、グラディオは…?」
その言葉を聞いて少し笑うと、グラディオは言った。
「俺も問題ねぇな。」
見つめ合った後、2人はBARを後にして夜のレスタルムへと消えて行った。
END
2017.03.03
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