「なるほどなるほど…
つまり2時間前に、立て札のそばで死体を埋めてた男に追われてると通報があり、駆けつけてみたらこの女性の死体を発見!そしてその通報してきた女の子というのがおそらく…
コナン君、君の友達だったりしちゃうわけだね?」
程なくして到着した山村警部は、現場をひと通り眺めながら話を整理する。
「うん!ずっと電話してるけど繋がらないんだ!」
「じゃから早くこの辺の捜索を!」
「えぇーと…一応、捜索隊が探してますけど、この辺りはかなり入り組んでますから、すぐに見つかるかどうか…」
「そ、そんな…」
博士に詰め寄られた山村警部の視線が逸れ、その様子に博士の顔が曇ると…
「でーも大丈夫!この冬名山は我が群馬県警の庭のようなもの!子ども達も殺人犯もすぐに見つけて御覧に入れてくれちゃいましょう!」
さっきとは真逆の態度でポンと胸を叩く山村警部の姿に、ありすは思わず苦笑した。
緊迫したこの状況、捜査するのはこの数分で既にあてにならなさそうな予感がするポジティブ警部。さらに見渡す周囲は鬱蒼とした森で、子ども達がどこへ逃げたのか予想がつかない。本当は目立つことは避けたかったけれど…
ありすは傍観者でいることを諦め、遺体のそばにそっと屈み込んだ。
「…この遺体、誰なんでしょうね?」
ありすの問いかけに皆の視線が集まる。
「死斑や死後硬直の具合からすると、殺されたのは約5、6時間前ってところでしょうか、背中から斧のようなものでザックリやられてますね…」
ありすはハンカチを取り出すと、遺体に直接触れないように気を付けながら横倒しにする。覗き込んだ背中の傷は右肩から左わき腹の方向へと深く刻まれていて。うーん痛そう…と思わず呟くと、近づいてきたコナン君も遺体を覗き込んで、あ、でもと口を開いた。
「即死じゃなくて、寝袋に入れられた後も少し息はあったみたいだよ?ほら、寝袋の中で血のついた手を動かしてた跡が残ってるから…」
「フムフム… ——って、誰なんだ君は!?」
山村警部が我に返ったようで、ありすを指差す。
「…如月ありす、しがない生物学者です」
「学者かなんだかしらないけど困るねぇ…勝手に遺体に触ってくれちゃって、もぉ!」
「すみません、職業病みたいなもんなので」
反省しているようなしていないようなありす達の姿に山村警部は口を尖らせたままだったが、仕事をすべく先着の警察官へ向き直る。
「…んで?遺体の身元は?」
「それが何も所持してなくて…」
ううーんと唸る山村警部のそばで、コナンは相変わらず遺体を覗き込む。
「名前とかはわからないけど…多分、この人保育士さんだと思うよ。ほら、ヒザ小僧にアザがついているでしょ?保育士さんって子どもと目線を合わせる為によく膝立ちしてるから」
「でも、それだけで保育士と決めつけるのはどうなんだい?ヒザをよくつくスポーツもあるだろ?」
「スポーツやってたらヒジとか手とかにも何か跡が残ってるはずだよ、よく正座する人なら、スネや足の甲にも跡がついてるだろうしね」
納得がいくようないかないような表情の山村警部に、ありすが追い打ちをかける。
「警部さん、この人の髪、耳のあたりで不自然に波打ってますよね。これってほら、ふたつ結びの跡なんですよ」
そう言ってありすは女性の髪を二つに分け、跡にあわせて耳元で束ねてみせる。
「耳の付け根の結び目あたりの皮膚は白いのに、後頭部の生え際がしっかり日焼けしてるということは、日常的にこの結び方をして外を出歩いているということ…30代前後の彼女がこんな子どもっぽい髪形をするのは、子ども達と外で遊んだり散歩や遠足に連れてってる保育士というのもあながち間違いじゃないですよね?」
ありすがにこりと微笑むと、山村警部は、確かに…と頷いた。
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