「刑事さんよぉ…そろそろ何があったか教えてくれねぇか?」
「事情を話して頂けないと、これ以上協力はできませんよ」
「じ、実はこの山の中で死体遺棄事件があって…」
そろそろ彼らの足止めも難しくなってきたみたい…
ありすが詰め寄られる山村警部に視線を向けたとき。
「ねぇ、3人共両手を見せてくれない?」
無邪気をまとった少年が、怪訝な表情を浮かべる男達に近づいた。
「何でだよ?」
「だってずっとボク見てたけど、米住さんと岩隈さんは左手、宇佐木さんは右手しか使ってないじゃない?もしかしたらもう片方の手に傷があって隠してるんじゃないかと思って!」
「左手を使ったのは左利きだからだよ!ホラ、右手は無傷だろ?」
「ぼ、僕も…」
「私は普通に右利きだから…もちろん左手には何も付いてないがね」
左利きが2人、右利きが1人。言い出したのが子どもであっても疑いが掛かるのは避けたいらしく、男たちがやや慌てたように両手を広げると、
「でもさ、宇佐木さん…犯人も右利きだったんだよ?」
彼はどうやら、ここで犯人を追い詰めることにしたらしい。
ちいさな探偵がほんの少し笑った気がした。
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「…何言ってるんだい?君は、犯人が埋めようとしてた女性の遺体とその穴しか見てないだろ?」
頭をぽりぽりと掻きながらコナンを窘めるような口調の山村警部に、証拠は残ってますよ?とありすが口を挟む。
「遺体の傷が右上から左下に向かって残っているということは、斧のようなもので右から振りかぶる右利きの人間の仕草。そして穴を堀ったときについたであろう犯人の足跡は、左足が前で右足が後ろ…これも右利きが穴を掘らないとそういう足跡はつきませんよね?」
山村警部は顎を撫でながら確かに…と零して眉をピクリと動かしたのち、え?じゃあ何?この人犯人?と誰にともなく問いかける。
周囲の視線を一挙に集めた宇佐木は、慌てて手を振って弁解をはじめた。
「ちょっと勘弁してくださいよ…右利きなんて大勢いるじゃないですか!この2人も本当は右利きなのに、それを隠すために無理に左手を使ってるかもしれないし、それにまだ犯人はこの山のどこかに隠れてる場合だって…」
「確かに日本人のほとんどが右利きだけど、この山の中を1人でうろいていた宇佐木っていう名前の右利きの男の人は、おじさんだけだと思うよ?」
「な!?」
絶句する宇佐木の隣で、やれやれといった顔の山村警部がしゃがみこむ。
「あのねぇコナン君、あの現場のどこにそんな名前が…」
「殺されてた女の人が教えてくれてたじゃない!入れられた寝袋の中でこんな形を作ってね…」
それのどこが…と怪訝そうな顔の山村警部の前に、コナンが作った影絵が浮かぶ。
そこに現れたのは2本の長い耳を持った、うさぎの姿だった。
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