「でも何で動物?こんな形を作るくらいなら文字ぐらい血で書けただろうに…」
不思議そうな表情の山村警部に、ありすが補足する。
「彼女は保育士ですからね。保育士なら日常的に影絵を見せる機会があるでしょうし、たとえ犯人に見つかっても、一見うさぎには見えないですからね。左右の手が離れてたのは運ばれてる最中にズレたって所でしょうか…あ、これ以上の言い訳は無駄ですよ?被害者の背中にあんな傷を負わせたんなら大量の返り血を浴びてるはず。一応、着替えて水で洗い流したんでしょうが、その程度じゃ到底ルミノール反応は消せませんからね」
「じゃあ、最初から3人を署に連れてって調べればよかったのに…」
「それだと時間かかって、子供達を捜すのが遅れますから」
ありすは落胆した様子の山村警部を一蹴する。
彼女たちの無事さえ確認できれば、謎解きなんて警察が勝手にやってくれればいいことだ。
「おじさんだよね?死体を埋めてる所をボクの友達に見られて追い回してたののって…」
「私、じゃない…」
コナンが真っ直ぐな瞳で見つめると、宇佐木は目を泳がせながら不毛な言い訳を口走る。
この期に及んでまだそんなこと——とありすが言いかけたとき。
悪いのは私じゃない、彼女だ…と宇佐木が漏らした。
「いたずら半分で私をあんな所に閉じ込めた彼女の方が悪いんだ!愛していたのに、結婚の約束もしてたのに、なのにあんな事をするなんて…」
宇佐木は目に涙を浮かべて、俯いている。
「えーっと、閉じ込めたっていうのは・・・?」
山村警部が話を促すが、それは宇佐木の纏う空気とは異なるどこか間の抜けたもので。ありすはセンスないなぁと思ってしまう。
これはわざとか天然か…
「私は閉所恐怖症なんです…3年前、事故で丸1日エレベータに閉じ込められた事があってね、それ以来閉ざされた暗い場所にいるとパニクってしまって…なのに彼女はそんな私を閉じ込めようとしたんですよ!窓すら開かない真っ暗な山小屋にね!!」
信じていた者に裏切られたやるせなさだろうか、宇佐木の悲痛な叫び声が響き渡る。
「じゃあこの山に行こうと誘ったのは被害者だと?」
「ええ、私はパニックになり、何とか脱出しようと暗闇で振り回した山小屋の斧が偶然、彼女の背中に…そうさ、彼女があんなイタズラさえしなければ、子ども達も閉じ込めなかったのに…」
「と、閉じ込めたってその山小屋に!?」
コナンとありす、そして博士が一斉に詰め寄ると。
「ああ…もう手遅れだろうけど…」
宇佐木の視線のはるか先には揺れる白い煙、もしかして——
ありすは全身から血の気が引くのを感じていた。
「山村警部!捜索隊から燃えている山小屋を発見したと連絡が!」
「そ、それで消火は!?」
「それが、発見した時点で手がつけられないぐらい燃え盛っていたようで…」
彼女たちの身が危ない
気がつけばありすは煙のほうへ走り出していた。
不実の対価
それが詭弁だとわかっていても