「しかしのぉ…」
先程まで山村警部といた阿笠博士だったが、今は携帯片手に誰かと話している。
内容から察するに電話の相手は森の中に駆けて行ったコナン君のようで、時折眉を上下させてながら、まぁ…そうじゃが…などと歯切れの悪い返答を繰り返している。
「…あぁ、気をつけるんじゃぞ」
その様子を何の気なしに眺めているうちに話は終わったようで、博士は携帯電話を仕舞うと子ども達に向き直った。
「それじゃあ、わしらは念のため病院に行くとするかのぉ」
「えー、哀ちゃんは?」
「哀君なら大丈夫じゃ、ほれ、このままじゃと夜中になってしまう」
流石は保護者といったところだろうか。ほんの少し納得いかないような表情を見せたものの、子ども達は大人しく博士の後に続いて歩き出した。それにあわせて、ありすも子ども達についていく。
「ねぇ歩美ちゃん、そのミステリートレインは3人で行くの?」
「ううん、コナン君と哀ちゃんも一緒だよ」
写真の女性、そして”彼女”も参加する… ありすの鼓動が跳ねる。
「そっか、皆同じクラスだったね。ってことは、入学した時からの仲良し5人組、かな」
「そうなんです。あー、でも、コナン君は入学式の少しあとに転校してきましたね」
「灰原もそのあとに引っ越してきたんだよなー」
ありすの質問に順に回答する、光彦君と元太君。
”彼”も”彼女”も転校生――
そうやって”他愛のない話”をしているうちに、ありす達はビートルの前に辿り着いた。
慣れた手つきで乗り込む子ども達を傍から見守っていると、ふと眉毛をハの字にした博士の視線に気づく。
「今日は巻き込んですまんかったのぉ」
「いえ、みんなが無事で何よりです」
ありすが笑顔で答えると、博士はゆっくり頷き、運転席へと乗り込んだ。
「じゃあ、気をつけてね」
「ありすお姉さん、またねー!」
遠ざかる車が見えなくなるまで手を振ると、ありすはもと来た道を戻りはじめた。
辿りついたのはキャンプサイトの一角、緑とオレンジのテント。
昼間子ども達が建てたそれは人影がなく、ありすが物陰に隠れて様子を伺っていると。
現れたのは、江戸川コナンと、写真に映っていた女性。
そして、ふたりはそのままテントへと入っていった。
工藤新一に成りすまし、彼の失踪時期にあわせて突然転校してきた聡い少年。
コードネームを持つ大人びた少女と、その少女にそっくりな女性。
脳裏によぎったのは、とても稚拙で、とても信じ難い仮説だったけれど——
灯りが消えたテントから出てきたのは、江戸川コナンと灰原哀だった。
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