ありすは、先日改めて調べた有希子さんのプロフィールを思い出す。
工藤有希子、旧姓名は藤峰有希子。結婚前は世界的に有名な伝説の美人女優として活躍しており、天才マジシャンの黒羽盗一に弟子入りしたこともある。
そして、同じく黒羽盗一を師と仰いだのが―― ベルモットこと、シャロン・ヴィンヤード。
ふたりはとても仲が良かったことは、周知の事実らしい。
もし、私がベルモットの前に立ち塞がったとしたら、なんて考えるまでもなく容易に想像がつく。説得する前に銃の撃ち合いになって終わり。
考えれば考えるほど、有希子さんが適任であることは誰の目からも明白だった。
コナンは暫く黙り込んだ後、わーったよ。と溜息をつく。
「だけど、無茶だけはすんなよ?」
その目はどこか心配そうだった。
捜索役、護衛役、説得役。
不測の事態に備える為にはもうひとりぐらい、自由に動ける人間が欲しいところだ。
”彼女”も、有希子さんも、自分を守る術を持ち合わせていない。
「赤井さん、私も…」
思わず赤井さんと呼んだのは、捜査官としての覚悟と使命がそうさせたのかもしれない、だけど。
「ありすの気持ちはありがたいが、FBIとしては一般人を彼らと対峙させる訳にはいかない」
一般人―― ふたりの前でそう言われるとありすは口を紡ぐしかなくなる。
有希子さんがいる時点でそれは破綻している、なんて反論した程度では覆らないだろう。
だって、きっと本当は、私を安室さんと接触させることを嫌っている。
鋼檻の小鳥
逃げ場のない空間