安室がグラスを拭きあげる作業に戻って暫くすると、再びカラカラと鳴る鈴の音に視線が奪われる。
どうやらミルク皿回収の為に、梓さんが再び外へと出ていったようだった。
満足そうに毛づくろいをしている大尉に店内から目を向けると、ふと思い出す疑問。
安室は、最後のグラスを片付けると、梓さんの背中を追いかけた。
「梓さん、さっき言いかけてたのって何だったんですか?」
「それが…あのタクシーのレシート、大尉の首輪に挟まってたんですけど、文字が消えてたんですよね」
「レシートの文字が消えてた?僕に見せようとしたのはそれだったんですか?」
「ええ、確か『Cor』と『P』と『se』って文字の間が消えてて、印刷ミスかなとも思いましたけど」
cor p se … corpse、死体?
その不穏な言葉に、思わず眉間に力が入る。
「梓さん、その猫が毎日ここに餌をねだりに来るのを知っているのは?」
「割と最近来るようになったから、知ってるのは、私とマスターと安室さんと…あとはコナン君ぐらいですけど」
「…へぇー、江戸川コナン君ですか」
その名前を聞いて、安室は思わずニヤリと微笑む。
――差出人は、恐らく彼。そして、ポアロに届いたのであれば宛先は僕に違いない。
だが、死体、とは一体何のつもりだろうか。
安室がその意味について考えようとした瞬間。
「それと、そのレシートを取るときに大尉の首輪に触ったんですけど、かなり冷たかったような」
冷たい…!?
途端に安室の脳裏に良くない事態が想起される。
死体、冷たい首輪、大尉が運んでくるレシート…
「そのレシートですけど、確かあっちのほうに飛ばされましたよね」
安室はそう言いながら着ていたエプロンを梓さんに手渡す。
「ええ、ま、まさか探すんですか?」
「マスターには急に体調を崩して早引きしたと言っておいてください。今日のバイト代はいらないからと」
風力、風向き、この周辺の建造物の立地条件を考慮に入れてシミュレーションすれば、
風の流れが読めて、飛ばされた先が絞り込めるはず――
安室はスマホの地図を片手に、想定されるほうへと駆け出した。
小さな配達員
Het melkmeisje