いつもと変わらない、工藤邸2階で過ごす平日昼下がり。
赤井さんは用事があるらしく、どこかに出かけている。
よって『お隣のお留守番』とやらは、今日はありすの仕事になっていた。
…特に頼まれたわけではないが。

窓から外の様子をちらちらと伺いながら、PCに向かう。
と同時に、監視カメラを付ければいいのにな。なんて考えを巡らせる。
個人まで識別せずとも、「人っぽい何か」を認識さえできれば確認回数は格段に減るはずで。
特徴点をいくつか抽出さえできれば、そんなに難しくはないけれど…と考えたところで気づく。


「隣家を監視してる証拠が残るのは、流石にまずいか…」

保護が目的とはいえ、隣人に常に監視される生活なんてなかなかハードだ。
記録に残らないようにするのが、彼女へのせめてもの優しさなのかもしれない。

…なんか他人事には思えないかも、とありすは嘲笑を浮かべる。
そういえば、私も監視される側だった。


ベルツリー急行以降、姿を消したと思われたバーボンは、僅か1週間で毛利探偵事務所へと戻ってきた。
それはきっと彼にはまだ、やり残したことがあるということ。
それは隣に住む彼女か、赤井か、はたまた、それ以外か…

そのせいで、結果的に、この場所に軟禁されているんだけど。


そんなことを考えていると、エンジン音と共に一台のトラックが阿笠家の前に止まった。
降りてきたのは、宅配業者の制服を着た男が2人。

荷物を抱えたほうの男がウロウロとあたりを歩き回ったと思ったら、工藤邸の前で立ち止まり、

――ピーンポーン

来客を示す音が、家中に鳴り響いた。



「あのー、チーター宅配便ですけど、そちらに阿笠博様はいらっしゃいますか?」

受話器の先から聞こえるのは、やや弱腰の男性の声。
おそらく、小包を抱えた先程の男だろう。
ありすは、阿笠さんの家はお隣ですよ。と反射的に答えるが、予想外の答えが返ってくる。

「いや、工藤様方、阿笠博様宛の荷物をお届けしたんですけど」



工藤様方、阿笠博様 ―― そんな荷物を送る人間がいるのだろうか。
ありすは眉間に皺を寄せる。

ここに人が住んでいることを知っている人間は少ない。
そのなかで、こんな不可解なことを思いつく人間は、限られている。


「あぁ、クール便の荷物ですね!今行きまーす」

いかにも、今思い出したといった声色で返事をする。
受話器を置いたありすは、これから起きる出来事に警戒しながら、笑顔で扉を開けた。


 
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