制服を着た小太りの男は、サインをここにと言いながらペンと荷物を差し出す。
受け取った伝票をさっと確認するとすぐに、“工藤様方” の文字だけ筆跡が異なることに気づく。
そしてそれは、赤井さんの筆跡ではない。
阿笠博士ではなくここに住む、”赤井さん”に受け取って欲しいのだとすると、
こんなことをするのは…彼?
「ご苦労様です、最近はやっぱり荷物多いですか?」
配達員の気を紛らわせるために声をかけてみると、配達員は驚くほど饒舌に喋る。
「えぇ!そうなんですよ、この時期はどうしても食べ物が増えるので、クール便なんてすごく大変で――」
ありすはちょっと不自然なその様子に疑問を抱きつつ、さりげなく荷物へと視線を移すことにした。
ひんやり冷たいケーキの箱に封を開けられた痕跡は見当たらない。
細工されているのは伝票だけ、だとすると。
ありすがさりげなく伝票をめくると、転写された2枚目に現れたのは 『死体と 車の中』
彼が死体と車の中に閉じ込められているということなのだろうか。
…もしかして、彼女も?
赤井さんの護衛対象である”彼女”は、まだ学校から阿笠邸に戻ってきていない。
ありすは伝票を綺麗に戻すと、何事もなかったかのようにサインをしながら、
「そうそう!今日配達に来てもらうついでに集荷をお願いしようと思ってたんです。ちょっと持ってきますね」
そう言って、サイン済みの伝票を返すことなく2階へと戻った。
彼が死体と車の中に閉じ込められているとして、
それを伝票で伝えてきたということは、おそらく他に伝達手段が無いということ…
だとすると、状況がよくわからない以上、彼らが直接警察に説明するほうが良いに違いない。
選択肢を求めて、机の上を見回す。
今あるスマホは2台。入国時に契約したFBIとの連絡用1台と、追加で契約した1台。
あいにく予備のSimカードはない。
ありすは少し考えると、新しいスマホの背面にGPS発信機を貼り、箱に封をして足早に階段を下った。
冷たい手紙