「ありすさん、仕事です」

窓の外が夕焼けに染まった頃。
自室からキッチンへと降りてきたありすに、カウンターに立つ沖矢さんが静かに告げた。

仕事… ありすは静かに反芻する。



「…ですが、その前に晩御飯にしましょう」
「えっ」

目を見開いて静止したありすの姿を気に留めることもなく、沖矢さんはお皿を取り出すべく棚に手を伸ばした。



ゆらりと揺れる湯気を辿ると、そこには ”赤井さん” には似つかわしくない…

「ホワイトシチュー、ですか」


その声に笑顔の沖矢さんが振り返る。

「はい。折角なので、昼間にロワゾブルーでバケットを買ってきました」

「ロワゾ、ブルー…」

このあたりでは誰もが知っている有名店、特にこの時期は限定スイートポテトが大人気。
ありすはつい先日の出来事を思い出して不機嫌になるが、本心に反して表情筋は1ミリも動かない。


心の底では”沖矢昴”に気を許していないということ、か…

行き場を失ったこの気持ちを抱えながら、ありすは貼りついた笑顔のまま、自分の不器用な器用さに思わず苦笑いを浮かべた。


 
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