ありすが港の入口へと車を待機させていると、遠くからいくつもの武器を背負った赤井が現れ、何事もなかったかのように助手席へと乗り込んだ。

「赤井さん、やっぱり気付いていたんですね…」



ありすは今朝、忘れ物を探す振りをしてダッシュボード奥の予備の拳銃を拝借し、赤井さんの携帯電話に盗聴器とGPSを貼りつけていた。その情報をもとに埠頭の死角でハンドルを強く握りしめ、赤井からの音に耳を澄ませる。

文面から察するに昨晩のメールの送り主はジョディだった。いっそのこと帰国するのもいいかもしれないとまで思っていたのに、「決着をつける」その言葉を見るとありすは居ても立っても居られなくなっていて。

緊迫する現場の音に、神経を尖らせていたその時。

「あ、アクセル音…!?」

ありすは、ベルモットの逃走を察知して、アクセルを強く踏む。が、待機位置とは逆方向へと逃走した車にをこの入り組んだ港で追うのは難しく…

「いない…」
港の出口につく頃には、完全に見失ってしまっていた。


苛立つ気持ちを抑えて周囲を探索していると、
「ありす。追跡できたか?」
盗聴先から突如呼びかけられ、ありすは思わずえぇっ、と漏らす。

赤井がこんな小細工に気付かない訳などない筈で、処分されていない現状では参加を許されているのだと理解していた。していたけれど…

「で、電話…!!」

流石に盗聴器越しに直接話しかけられることは想定していなかった。



******



車内に街頭の明かりが差し込み、赤井を乗せた車はサイレンの音から徐々に遠ざかる。

「気づいていたも何も…わかりやすく貼っておいたのは、そういうことだろう」
赤井はそう言うと何事もなかったように、携帯の裏に貼られたシールを剥がし、
「ほぉー、こんなものまで用意していたとは…」
剥がしたそれを、まじまじと観察していた。



「悪かったな、ありす。情報渡さずに働かせて」


先日の答えを急かすつもりはないが、お前がいると色々と助かる—―
静寂に包まれる車内。赤井はそう告げると、静かに目を閉じた。






the Rotten Apple
参加させなかったのは赤井さんの配慮
なのに、どうして私は待っていられなかったんだろう
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