「組織の仕業か…」
ジェイムズの言葉にジョディの顔が強張る。
「でも、異臭騒ぎと火事は時間を合わせて起こせますが、食中毒は潜伏期間に個人差があって…」
「いや、恐らく、それに似た症状の出る毒薬を使ったんだろう。死者が出ない程度に設定し、より多くの患者がここに駆けこむようにな。しかも3件とも、火傷を負った人を除けば、病状は吐き気などの体調不良もしくは喉や目の痛みという、見た目には判断しづらいものばかり…」
「つまり、事故の被害者を装った組織の仲間を病院内に大勢紛れ込ませる事が、容易に出来るわけですね!!」
「狙いはやはり水無怜奈の病室の捜索…」
「えぇ、人海戦術でしらみ潰しに調べ回れば恐らく短時間で…」
ジョディとジェイムズの顏に焦りの色が濃くなった時――
いや、それは無い。と赤井が静かに断言した。
「それだけ大量に仲間を送り込み、そんな不審な行動をさせれば、我々FBIに捕まる恐れのある仲間の人数も跳ね上がる。そんなリスクを負うような奴らじゃないさ。狙いは恐らく、別のなにか…」
一瞬現れた間。その間でありすは異質な音に気付いて眉をしかめる。
それはどうやら彼女だけではなかったようで…
「ねぇ、さっきから音してない?その植木鉢――しかも、その音だんだん大きくなってるよ…」
コナン君の声に、一斉に植木鉢へと視線が注がれる。
「い、言われてみれば確かに…」
鉢植えを見つめるジェイムズに向かって、ありすが声をかける。
「ゆっくりと地面に置いて、離れてください」
「あ、あぁ…」
ありすが地面にしゃがみ込み、ジェイムズの手から離れた鉢から花を引き抜くと、そこには時計盤を備えた何かが隠されていた。
「ば、爆弾!?」
ジョディが驚き、鉢の中身は調べなかったのかね?とジェイムズに咎められる。
「す、すみません…花の方ばかりに気を取られていて…それに…」
「この鉢に爆弾なんか仕掛けても捜査官を数人殺すだけ。爆発の騒ぎで日本警察が来れば、水無怜奈の捜索どころじゃなくなり――奴らにとってメリットはゼロ。そう踏んでたんだろ?」
ありすの後方から爆弾を覗き込むようにしていた赤井が、ジョディをフォローする。
ツンデレだよね、赤井さんって。なんて考えながら、ありすは爆弾の機構を覗き込む。
うーん。配線もわざとぐちゃぐちゃにしてあるし、ざっくり確認するだけでもトラップは5箇所――
解体できないこともないけど、それより…
「とにかくその爆弾を何とかせねば…」
上から聞こえるジェイムズの声に、ありすは爆弾から目を離さずに反応する。
「そうですね、この時計が正確なら、残りは31分14秒――コレけっこう面倒な構造みたいなので、人気のない場所に運んで爆発させるのが最善です」
「じゃあ、すまんがありす頼めるか?」
ありすは、ジェイムズの方に向き直り、わかりました。と告げた。
「ありす、ここから7キロ先にごみ処分場があるわ!!」
車でそこに!とジョディが提案すると。
「はたして時間内にたどり着けますかねぇ?」
背後から、体格がよく目つきが悪い——作戦会議で目立っていた男がやってきた。
「3つの事故のせいで主要道路は大渋滞、30分じゃかなりキツイ…まあ、この近辺の道に詳しい私のようなナビがいれば話は別ですけどね」
「ちょっとあなた!持ち場を離れて何やってるの?」
気が立ったジョディが、声の主へと詰めよる。
「この病院に押し寄せたケガ人達から大渋滞の事を聞いたんで、報告に来たんですよ!私の持ち場はこの傍で、直接伝えたほうが早いと思いましてね…」
「話をしている時間はない!私のベンツで早く爆弾を!」
ジョディと男の諍いにジェイムズが終止符を打ったところで。
「…行きましょ」
ありすは男に告げると、爆弾とジェイムズから受け取った鍵を手にして車へと向かった。
忍び寄る影
その足音はだんだんと大きく