仮眠から目を覚ましたありすは、携帯電話で時間を確認しようと枕元に手を伸ばす。遮光カーテンで閉じられた部屋は相変わらずの暗闇で、画面の眩しさに思わず顰め面になった。煌々と光る画面が示すのは朝5時で、ありすはもうそんな時間…と、眉間に皺を寄せたまま体を起こした。

洗面所で顏を洗い、眼鏡で隈を隠すと、ふと気付く。あぁ、喉が渇いた…
ありすは隣の棟に自動販売機があったことを思い出して歩き出す。角を曲がった渡り廊下の先、自動販売機が並ぶ一角がやけに眩しくて目を細めたとき…そこに先客がいた。


「赤井さん、ブラックですか」
「あぁ、ありすか」

窓から外を眺めていた先客――赤井さんが振り向く。手にはいつものブラックコーヒーだ。

「ちゃんと食べてます?」
「…最低限は食べているつもりだ」
赤井さんの最低限は本当に最低限だからなぁ、とありすは苦笑いを浮かべる。せめてコーヒーで糖分ぐらい取ればいいのに。と呟くと、赤井さんは、善処するよ。とニヒルに笑った。


「それで、赤井さん、今回は私に何をさせるつもりですか?」
ありすは、自動販売機からスポーツドリンクを取り出しながら問いかける。
「特に何かを考えているわけではないが…いざというときに信頼できる人間を置いておきたいと思うのは当然だろう」
「あれ、めずらしく褒められてます?」
ありすが少しおどけると、赤井さんは、…そうだな、おとなしく受け取っておけ。と言って笑った。


じゃあ、と言って立ち去ろうとする赤井さんの背中にありすが問いかける。
本当は、コナン君のこととか、どうするつもりなのかとか、訊きたい事はいろいろあるが…
「赤井さん、私にインプットしておくべき情報は?」

足を止める事数秒、
「…キャメルという捜査官、運転には自信があるそうだ」
それだけ告げると、赤井さんは再び歩き出した。



******



病院の外来受付も始まり、ありすがジェイムズと共に駐車場で待機していると、
険しい顔をしたジョディと赤井さん、そしてコナン君が、ジェイムズに宛てられたという鉢植えを持ってやってきた。依頼主は、楠田陸道――つまり組織からということか。

「一応、病院に来た人の手荷物はすべてチェックしていたんですが、さすがに宅配の荷物の中身までは…」
そう告げてジョディーからジェイムズに渡されたのは、コロンバインの鉢植えだった。
「しかし、なぜ組織がこんな花を私に…」
「必ず手に入れる!!その花の合言葉だよ!」
鉢植えを前にして困惑するジェイムズに、コナンが告げる。
「あと、それの他に、断固として勝つって意味もあるけど…」
赤井さんの、宣戦布告ですかね?という言葉に、その場にいた人間が静かに息を呑んだとき。


『こちら正面玄関のマイヤー!』
静けさを断ち切るように、無線から声がした。

「ジェイムズだ。何かあったのかね?」
『そ、それが…病院の玄関口にケガ人や病人が殺到していて、とてもチェックしきれません!!』
「なに!?」
『ケガ人たちの話によるとこの近辺でほぼ同時刻に3つの事故が発生したらしくて…』
「3つの事故が同時にか!?」
『ええ…集団食中毒に異臭騒ぎに火事です!』

 
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