輸送作戦は、組織の水無怜奈奪還により幕引きとなった。
FBIも多くが一旦帰宅を命じられ解散。ありすは残処理の為に病院にしばらく残っていた。
30分の休憩時間、ありすはなんとなく屋上から町を眺める。
「あー、なんかさっきまでの騒ぎが嘘みたい…」
今朝3つも同時に事故が起こったとは思えない程、杯戸町は平和な空気を取り戻していた。
「それはいいことだ」
「…赤井さん?」
振り向くと近づいてくる声の主、赤井さんから何かを放り投げられた。
「おっと…」
ありすが慌ててキャッチすると、それは温かい缶のミルクティー。
「ありすはコーヒーよりこっちだろ」
「…ありがとうございます」
大学生の頃、ありすにミルクティーブームが数年に渡って到来し、あの頃はどんな店でもミルクティーを注文していた。それは赤井やジョディと行ったランチやカフェでも例に漏れずだったが、それを覚えていてくれたのだろう。もう何年も前の事だけど。
赤井はありすの隣に並び、ブラックコーヒーを片手に町を見下ろす。
「ありす、さっきはああ言ったが、運転は最初からキャメルにやらせる気だったよ。あそこでこちらの重要な”ワイルドカード”を見せる必要はないしな」
ワイルドカード、いずれの代わりにもなるカード…器用だと褒められているのだろうか。
「90点ですけどね。事実キャメルの方が運転技術は上に見えましたし」
「でもお前ならキャメルと同じようにやり遂げたはずだ」
そう言ってコーヒー片手に町を眺める赤井の横顔を、ありすは見つめる。
「…なんか今日の赤井さん変ですね。こんなに褒めるなんて」
不審そうなありすを見て、思ったことを述べているまでだ。と赤井さんは笑った。
そよ風が包む心地よい時間。そんな静寂を破るかのように、赤井が口を開く。
「ありす、これから何かあっても、お前のやるべきことをやるんだ」
「…赤井さん?」
おかしい、やはり何かが明らかにおかしい。ありすの違和感が色濃くなっていく。
「ありすは俺の懐刀だ、それを忘れるな」
悪夢へのカウントダウン