明け方。部屋の扉が開き、待機中のありすのもとに、一時帰宅していたジョディが戻ってきた。

「おはよージョディ、そろそろ交代?」
「えぇ、ありす、夜まで残って貰って悪かったわね」
ありすは、ジョディが差し出したコーヒーをありがと。と受けとる。
「まだまだ余裕。それより、ジョディは寝れた?」
「えぇ、少し寝てきたわ」
「それならよかった」


水無怜奈は組織に奪還され護衛の必要は無くなったが、病院では新たな警護体制が組まれ、今朝から機能することになっていた。
彼らなら関わった全てを灰にしかねない。水無怜奈がうまくやる手筈になっているそうだが、油断はできないというのがFBIの判断だ。

そしてありすは「一般人」の為、シフト稼働後は病院に関わらないことになっていた。


ジョディも病院に戻ったことだし、そろそろ帰ろうかとありすが伸びをしたとき。
「...はぁ!? キャメルが殺人事件の容疑者の1人になってる!?」
通話中のジョディの叫び声が響き、赤井とジェイムズの視線が集まる。
「それ本当なのコナン君!?…ホテルの階段でトレーニング?…そう…ええ、わかったわ」

溜め息をついたジョディに、ありすは監視モニターから目を離さず声をかける。
「ってことは、私は延長ね。いってらっしゃーい」
私は途中参加で途中離脱だし、よゆーよゆー。とありすは背中越しにひらひら手を振る。
「くれぐれもFBIが日本で極秘に捜査している事は気づかれないようにな…」
「はい!もちろん!」
ジェイムズの指示に返事をし、ジョディがドアノブに手をかけたとき。

「あ、ジョディ…」
赤井がジョディを呼びとめる。

「気をつけろ…今日は何か嫌な感じがする…」
「ああ、13日の金曜日だからでしょ?私、そういうの気にしないから」

そう言うと、ジョディは「ありす、お願いね」と言い残して部屋から出て行った。



*****



「赤井さん見つかりました?」
開いた扉をちらりと確認し、ジェイムズに声をかける。
ジョディが出掛けて程なく赤井さんが部屋を離れ、暫くするとジェイムズが赤井さんを探しに行ったことから、ありすはひとり監視モニターの前で待機を続けていた。

「あぁ、それが…水無怜奈に呼び出されて、準備の為に出ていったよ...」
「呼び出された…!?」
思わずありすが振り向くと、そこには浮かない顔のジェイムズ。
「あぁ、さっき彼女から赤井君に電話があったんだ、来葉峠で2人きりで会おうと…」
「それって、罠じゃ…」
ありすが思わずつぶやくと、ジェイムズは、あぁ、と言って顔を歪めた。
「私もそう思って止めたんだが、行かなければ彼女の身が危ないと言って強引に…」

強引に——その言葉にありすから思わず溜息が漏れる。

「…赤井さんは何と言ってました?」
「信じてくれ、と…」


「…そうですか。わかりました」

信じてくれ、ですか…
ありすは小さく反芻するとジェイムズに背を向け、再びモニターへと視線を戻した。



******



「ありす、あと1時間後には人員が増える。そこで家に戻ってもらって構わない」
「はい、わかりました」
「それと…」

不意に静寂が訪れる。
ありすが不思議に思ったとき、ジェイムズが再び口を開く。

「いや、今回は急遽呼び出してすまなかった。ありすは、ありすの仕事を引き続き遂行してくれ」
「はい。また何かあったら呼んでください」

「ああ、頼りにしてるよ…」
そう答えたジェイムズの声は、どこかくぐもって聞こえた。

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