赤井が死んだ――
そう聞かされた時には、驚きと怒りを隠せなかった。


「…それは、確かな情報ですか?」
「ええ、水無怜奈につけたカメラでジンとウォッカが確認したわ。肺と頭を撃ち抜かれて、THE END」
車内で変装を解きながら、ベルモットが答える。

「あの赤井がそんなに簡単に殺されるとは思えませんが」
「あら、貴方も疑り深いわね。それって…赤井秀一だからかしら?」
面白そうだと言わんばかりに挑発するベルモットを、安室は完全に無視する。

反応がないと察したベルモットは溜息を零し、からかい甲斐がないわねと助手席のシートに凭れた。
「まあ、私もその場にいた訳じゃないけど、一応死体も警察が回収しているし、その時の動画も残ってるわ」


あの赤井が、やすやすと殺されに来るとは到底思えない。どうしても。
安室は眉間に皺を寄せて、ハンドルを強く握りしめた。



******



安室は自室のテーブルに散乱した資料に目をやる。

調査対象者は、如月ありす。
公園で赤井といた女性は確かに彼女で。彼女の情報から赤井の居場所を突き止めようとしていた。

安室は手はじめにと住所から彼女の戸籍、出身、家族についてを調べた。
この情報が赤井に直結するとは考えにくく、あくまでも予備情報のつもりだったが…

彼女の国籍は、アメリカ合衆国——赤井秀一が属する国。

日本の警察において、日本に属していない人間の国外の情報はあまりに乏しく、それ以上の目新しい情報は得ることができなかったが。
それでもこれで、赤井を追い詰める糸口を掴めた気がしていた。


だからこそ、数時間前に聞かされたその言葉を、安室は信じることができなかった。
FBIでNOCでありながら、組織の序列を着々と登り詰めていった男。その仕事振りは、用意周到で傍から見て抜け目のないものだった。
目的の為なら何であろうと利用するあの男が、こんなに簡単に殺されるはずがない。絶対に。

…赤井を殺れるのは、俺だけだ。



ソファーに凭れ掛かり強く目を閉じるが、行き場のない苛立ちは鎮まる様子を見せず。
やるせない気持ちをアルコールで流し込もうと冷蔵庫に手を伸ばすが、中身は500mlのミネラルウォーターが1本。
「買いに行くか…」
冷蔵庫が音を立てて閉じる。安室は、静かに部屋を出た。

建物を出ると頬に当たる夜風。その生ぬるい心地にしかめ面をして顔を上げると、そこには、建物へと近づく——

如月ありすがいた。
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