赤井らしき人物と交差点ですれ違ったあと。
ありすは部屋に帰ったものの落ち着かず、気分を変える為に屋上へと来ていた。

夕焼けに赤く染まった米花町を見下ろしながら、ありすは今日の出来事を思い返す。
ほんの一瞬。わずかな時間だったけれども。
視界の隅で捉えたあの姿は、赤井さんにとてもよく似ていた。

それと同時に拭えない違和感。
赤井さんだけど、赤井さんじゃないような、うまく言えないあの感覚。

そう、まるでクローンのような――


そこまで考えて、ありすは何を期待しているんだろう。と嘲笑をうかべる。
赤井さんがもし生きていたら必ず私に知らせに来てくれる。その程度には赤井さんに信頼されてる、そう心のどこかで思ってしまっている自分がいて。
もし生きていたら、組織に見つからないように、人目を忍んででも、私を頼って…

「人目を忍んででも…?」

そう呟いた、ありすの顏が険しくなる。
赤井さんはどうして人混みの中にあえて現れたりしたんだろう。組織に見つかったら水無怜奈の命は無いというのに。

そうせざるを得ない何かが起こっている?
だとしたら一体何が?

もう少しでその何かに辿りつけそうで、ありすがふっと意識を逸らしたとき。
強い風に煽られて、肩にかけたストールが空を舞う。
「あっ…」

ひらひらと舞うそれはありすから遠ざかり、フェンスの外側でパサリと落ちた。


届きそうで、届かない距離。
ありすはフェンス越しに手を伸ばすが、僅かに、遠い。
「あと、ちょっとなのに…」
暫く格闘するものの、どうやらこの柵を乗り越えないことには取れないらしいと諦めると、ありすはヒールの高く不安定なパンプスを脱ぎ柵へと手を掛ける。


あと、すこし。
ありすが柵から身を乗り出したとき。



「…如月さん!!」

背後から声がして、ありすは振り向く間もなく後ろへと強く引き寄せられていた。

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