気がついた時には後ろから抱き寄せられていて。
背中から伝わるぬくもりと、廻された力強い腕にありすは動揺する。
「赤井なんかのために死ぬな…!!」
混乱したなかで届く、切迫したよく知る声にありすは思わず息を呑む。
状況が掴めず、振り払う事もできず——
「…安室、さん?」
ただ固まったままのありすの頭上に、安室の声が降る。
「…赤井は、如月さんの何なのですか?」
静けさの中、悲鳴にも似たその声が響いて、抱き寄せる力がいっそう強くなる。
いつもだったら、はぐらかしていた。本当は答えるべきじゃないのかもしれない。
だけど張り裂けそうなその声に呼応して零れたのは、素直な気持ち。
「赤井さんは、兄のような…とても大切な、存在でした。」
口を衝いて出た言葉は、過去のものとなっていて。
赤井さんのいない世界を受け入れていることに否が応にも気づかされる。
足元にきれいに並べられたパンプス。安室さんの言葉。
包まれる安室さんの香りに、温もりに、動揺はおさまることがないけれど。
徐々に冷静さを取り戻してきていたありすは、安室の誤解に気づく。
「あ、えーっと。安室さん、心配して頂くのは嬉しいんですが…私、飛び降りたりしませんよ?」
ほら、あれを取りたくて。と告げて、ありすはストールを指差す。
暫くの沈黙のあと、
「…なんだ、よかった」
ほっとした声が漏れて、強く抱き留めていた腕がゆっくりと解かれる。
振り向いたそこには、優しい安室さんの顔があった。
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