大切に飲んでいたミルクティーもやがて飲み干して、空になったカップの側には、l'oiseau bleuのチケット3枚と安室さんのメモ。

意を決してメモに手を伸ばしたとき、どこからかバイブ音が鳴りはじめた。ありすが音を探ると、隣の椅子には着信を告げる持ち主不在のスマートフォン、画面に示された着信元は『自宅』。
ありすはすぐさまマスターを捜したが、奥で料理でもしているのだろうか、どこにも見当たらない...そうこうしているうちに着信は鳴り止んだ。と思ったら再び『自宅』の表示と振動するスマートフォン。

もしかすると、この持ち主は携帯電話が見つからず、自宅の電話から掛けてみているのかもしれない。そんなことを考えて、小包を置く沖矢さんの姿がよぎった。
別の人かもしれない、だとすれば知らない人間が出てしまっても良いものか...ありすは一瞬迷ったものの、いずれにせよ持ち主は困ってるに違いないと思い直して、電話に出てみることにした。


「...もしもし?」
「あぁ、よかった」
ありすの緊張気味な声と対照的に、電話口の男性の声は軽やかで。
「私、その携帯電話の持ち主なのですが、どこかに落としたようで」
受話器の向こうの相手が持ち主と判明したことで、ありすは少し安堵した。
「あ、えっと、東都大前の喫茶店です。カウンターのところに」
「なるほど、あのときですか...もしかして貴女は如月さんですか?私、沖矢です」
声を聴いてもしかしてとは思っていたが、電話の相手が予想通りの人物だったことにありすは胸を撫で下ろす。
「はい、如月です。沖矢さんの忘れ物だったんですね」
「ええ。見つかったのはよかったですが...困りましたね...」


ありすは、先程の沖矢との会話を思い出す。彼は急な来客があるとのことだったから、恐らくすぐにここへ戻るのは難しいだろう。

「あの、私届けましょうか?」

視界の端には引換チケット、もしかしたらこのお礼ができるかもしれない。そんな気持ちで問いかけると、受話器の向こうからほっとした声で、お願いできますか?と返ってきた。






青い鳥
スイートポテトと忘れもの


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