深夜の警察庁、閑散としたフロアにはキーボードの音だけが響く。
「安室さん、頼まれていた件です」
安室がデスクで数多の報告書に目を通していると、声と共に大判の茶封筒が差し出された。
「そこに置いておいてくれ…今日はもうあがって構わない」
「はい、お先に失礼します」
近くの気配が消え、扉の閉まる音が響く。
安室は目の前の仕事を手早く片づけると、封筒を手に取った。
安室は前回の報告を踏まえて、逢坂珠理の血縁関係を洗い出すよう指示を出していた。
逢坂珠理のところに親類である如月ありすが一時的にでも預けられていたのだとしたら、全ての辻褄があう。そうだとしたら、彼女の情報に辿りつくのはそう難しくないだろう。
しかし、報告書を読み進める安室の顔が曇る。
そこには如月という苗字はおろか、アメリカ国籍を取得した者もアメリカに住居を移したものもいなかった。
「逢坂一家は親族と没交渉で、有力な情報は得られず…」
安室は最後の一文を読み終えると、険しい顔で天を仰いだ。
如月ありすと逢坂珠理、他人の空似にしてはあまりよく似過ぎていて。逢坂珠理の写真を改めて入手したとき、安室はどこか確信に近いものを感じていた。
けれどあれは、ただの偶然だったのだろうか…
安室が溜息をついて資料の束を机に放り投げると、バラバラになった資料にまだ目を通していないものがあることに気づく。
如月ありす
おかゆの話を懐かしそうにしていた彼女に、
幼少期の出入国記録がなかった。
Who are you?
わからない、彼女は何者?