「つまり、その二つの事件の共通点は、書体が酷似している死の血文字と、一見殺人には見えないふたつの遺体のみというわけですね。それと…

あぁ、すみません、出しゃばってしまって」


女子高生3人とコナン君によって事件の状況が整理されていく。それらがひと通り片付いた頃、話し合いは一人の男性の声によって中断されることになった。

どうやら、沖矢さんは事件の推理に加わることを選択したらしい。
すかさずコナン君が、昴さんはホームズファンで推理するのがとっても好きなんだよ。と補足している。


ホームズファンで推理好きの大学院生…
ふーん、この設定のおかげで事件に多少首を突っ込んでも違和感が低減されるというカラクリね、なんてありすは扉の向こうでひとり納得する。



その後もコナン君の発案のもと、電話で高木刑事に事件の情報を聞き出すものの、この事件は殺人ではなく窃盗で処理されるということだった。

「まさか、犯人がわかってるのに警察ぐるみで隠ぺいしてるんじゃないのか?」
「世良ちゃん、それってもしかして…映画やドラマでよくある、犯人が警察の上層部や政財界の御曹司だから憎たらしいけど手が出せないってやつね!」

”隠蔽”というワードに、園子と呼ばれた女の子が大袈裟に反応する。
いかにも女子高生みたいな会話だなぁなんて考えながら、窃盗事件の話だとしたらもう彼らに任せていいかなぁとも思いはじめていた。沖矢さんもいることだし、何かあったら対応してくれるでしょ、とも。

――その話を聞くまでは。


「だったら、相談してみてはいかがですか?推理好きの君のクラスメイト、金一君に」
「そ、そうですね…」
沖矢さんの提案に、何故か蘭ちゃんが歯切れの悪い返答をすると、

「何言ってんだよ、相談するなら工藤新一君だろ?高校生探偵で君の彼氏なんだから。今は何かの事件を追ってて、この家を空けてるみたいだけどな」

反論したこの声は、あの髪ゴムを見つけた…世良と名乗る子のようだった。



高校生探偵、工藤新一。ありすは脳内で反芻する。
有希子さんの息子さんだろうか。

「ほぉー、この家の主は、あの高校生探偵でしたか」
「え、まさかあんたそんなことも知らずにここに住んでたのか?」
「ええ、ここに住んでいた新一君は、何のとりえもないただの高校生だと蘭さんから聞かされていましたし。それに風の噂で、高校生探偵の工藤新一は事件の捜査中に命を落として、謎解きの舞台から消えたと聞いていましたから…」

平然を装うもののわずかに嬉しそうな沖矢さんの声。
その反応が意外だったようで、世良と名乗る子の驚いた声が響いた。



工藤新一…

スマホを取り出し検索すると、サジェストには「高校生探偵」からはじまり、「平成のシャーロック・ホームズ」「日本の警察の救世主」…ありすは並外れたの肩書きの数々に目を丸くする。

ヒット件数はざっと350万件。事件の記事だけでなくファンの書き込みもあるようで、日本では ”とても有名な” 高校生探偵ということらしい。



推理小説作家の工藤優作、高校生探偵の工藤新一、そして、
水無怜奈の事件から来葉峠ののち沖矢昴登場までを描いた江戸川コナン…

彼の手腕は“そういう家系”で片づけられるものなのだろうか。


 
 →next Paradox / TOP  
ALICE+