「そうだ!今から工藤君に電話してみるのはどうだ?僕も彼の推理聞きたいし」
「ああ、で、でも事件の概要は夕方メールで伝えたし」
「でもさ、警察が窃盗事件にしようとしてることは伝えてないだろ?」
「うん、そうだけど…」
”世良さん”は蘭ちゃんから工藤君へ電話を掛けさせたいらしい。
この状況から”高校生探偵・工藤新一”が推理をするというのだろうか。
「それに蘭の生声で話さなきゃダメじゃない、ついでに蘭から新一君にコクり返すんだからー」
「えー!そ、園子ってば…」
「僕ちょっとトイレー!!」
「ほら、早く掛けて掛けて」
「う、うん…」
扉の向こうでは蘭ちゃんが電話することを決めたようだったが、ありすは沖矢の言葉が気になっていた。
「彼に電話するなら一言添えてくれませんか?君はまるで忍び、霧隠才三だ。と」
霧隠才三、何を意味しているのだろう…
ありすが思考を巡らせようとした直後、後方でバタンと扉が閉まる音がする。
コナン君が宣言通りトイレに駆け込んだようで、ありすが廊下の奥、音のしたほうへと視線を向けると――
先程まで部屋の中にいたはずの沖矢さんがすっと現れ、死角へと消えていった。
「あ、新一?蘭だけど…うん、あのね…」
部屋の中では、蘭ちゃんが電話している声が響いている。順を追って事件の概要を一通り説明し終えた頃だろうか、”霧隠才三”について困惑気味に伝えた数秒後。
「――俺の推理通りなら、ぴったりはまるはずだから!」
突然聞こえた聞き覚えのない声、咄嗟にありすが振り返ると。
スマホを片手にトイレから駆け出したコナン君の声は、いつもと違って大人びていた。
「…ちょっと新一、どういうこと?新一?新一!…うそ、電話切れてる」
「えー、まだ蘭がコクり返してないのにー」
コナン君が出てきた直後、蘭ちゃんの電話は突然切られた様子。
「で、なんて言ってたんだ、工藤君は」
「事件の真相がわかったから、今すぐ現場に向かってくれって。新一の推理通りなら、ぴったりはまるはず、って言ってたけど…」
『俺の推理通りなら、ぴったりはまるはずだから!』
トイレから出てきたコナン君と、知らない青年の声…あれは、何?
ありすが考え込んでいると、部屋の中から沖矢さんの声がした。
「とにかく、現場に行って彼の推理の成否が確かめられるのなら、行かない手はない。
…そうでしょう?高校生探偵の工藤新一君――
彼が、そう言ってるのですから」
******
現場へ行くと言って帰っていった彼女達をやり過ごしてから、再びスマホを手に取る。
検索結果の一番上に出ていた動画をタップしたありすは、驚きに言葉を失う。
『俺の推理通りなら、ぴったりはまるはずだから!』
取材に答える工藤新一。
その声は、先程聞いた謎の声と同じだった。
in sheep's clothing
俺の推理通りなら