<注意>

※名前変換なし
※主人公は男女を特に設定していません(読み手側の捉え方に任せます)
※主人公の年齢は14~16くらいを想定
※時系列的には「ARBで知り合い、交流してから暫く経った」という設定
※各ディビメインシナリオ1章のネタバレ&イベント「RIO`sキッチン」のストーリ―に少し触れています
※所々捏造あり



「いいな。僕の作戦通り、合図したら言ったとおりにしろよ」
「うん、わかった…」

自分達の視線の先には1匹の白い猫。

「3,2,1…行くぞ!」
「っ!」

三郎さんの合図とともに、地面を蹴った。


*****


「シロちゃん、良かった…!」

女性は安堵した表情を浮かべ、自身の腕を見つめる。
その腕には先ほどの猫が抱えられていた。


「これ、今回の依頼料です…本当になんと言ったらいいか」
「いえいえ、猫に怪我とかなくてよかったです」

三郎さんは女性が差し出した茶色の封筒を受け取ると、持っていたボディバッグに入れた。

「また何か困ったことがありましたら、萬屋ヤマダにご連絡ください」
「はい、本当にありがとうございました!」

肘で軽く小突かれ「行くぞ」と言う三郎さんに頷く。
今から向かうのは「萬屋ヤマダ」だ。


*****


何故、自分が三郎さんと猫を捕まえていたのか。

今日は、師匠の知り合いが経営しているクラブハウスへ荷物を届けるためにイケブクロに来ていた。
無事に荷物も届け終わり、戻るまでしばらく時間があったたため興味がてらその辺を散策していると、一郎さんと三郎さんに出会った。
二人は萬屋のお仕事中で依頼主の元か逃げてしまった白い猫を探していた。
お仕事の邪魔をしては悪いので、軽く話してその場を立ち去ろうとおもっていた矢先、一郎さんが「そうだ」と呟いた。

「お前、猫探しの依頼手伝ってくれないか?三郎と一緒に」

その言葉に自分も三郎さんも口をぽかんと開けた。
話を聞くと、一郎さんはこれから他の依頼をこなすために別の場所に行かなければいけないらしい。
そして、どうやら今回捕まえないといけない猫はかなりすばしっこいらしく、三郎さん一人だけでは大変だろうという事だった。
三郎さんは不服な表情を浮かべていたけれど、

「お前ひとりじゃ無理っていってるわけじゃねぇ。けど、依頼主さんはかなり心配してたから早く見つけてやりてぇんだ」

そう言う一郎さんの言葉に三郎さんはしぶしぶ頷いた。
一郎さんは「頼んだぞ、二人とも」と自分達の肩を叩くと、依頼場所へ向かっていった。

「…納得いってないけど、一兄の言った事だからな。手伝ってもらうぞ」

こうして、猫探しの手伝いが始まったのだった。
結果的には、猫は無事捕まえ、飼い主の元に連れていくことができたのだった。


*****


イケブクロに来たのはお昼ごろだったが、依頼の手伝いを終えて一郎さんの事務所に戻る頃には夕方になっていた。
…師匠、怒っていないだろうか。

「一兄、戻りました」
「…お邪魔します」
「おぉ!戻ったか」

事務所に入ると、机でパソコンを触っている一郎さんがいた。
どうやら、別の依頼も終わっているようだった。

「ちゃんと猫を捕まえて、依頼者の所に届けてきました」
「そうか、無事に依頼こなせたみたいで良かったぜ」

一郎さんは三郎さんの頭を撫でた。
三郎さんは「…あ、ありがとうございます」と小さく呟いた。

「突然で悪かったな…でも、お前のおかげで助かったぜ」

そう言って、もう一方の手で三郎さん同様に頭を撫でられた。

「いえ、自分は特に何も…」
「そんな謙遜すんなって。手伝ってくれてありがとうな…」

普段頭を撫でられたりしたことがないせいか、どう反応したらよいか分からず俯いた。
チラっと左隣を見ると、三郎さんがこちらを少し睨んだような目で見ていた。
その表情は「一兄からの感謝に何も返さないのか」と言っているようだった。

「…はい。無事に猫を見つけられてよかったです」

一郎さんを見て笑みを浮かべる。
それを見た一郎さんは嬉しそうに笑っていた。

「ん…?三郎、落ち葉ついてるぞ」
「えっ」
「ほら」

そう言いながら、一郎さんは三郎さんのパーカーに引っかかっていた落ち葉を見せる。

「あっ、一兄すみません。気が付かなくて」
「いいって。二人とも服もちょっと汚れてるし、あの猫捕まえるために色んなとこ行ったんだろ」

一郎さんの言う通り、猫を捕まえるために自分達はいろんな場所へ向かった。
路地裏、公園に住宅街。少し遠いけど土手にまで行った。
時には木に登ったり、草むらに入ったりもした。
猫を捕まえる事に夢中で気にしていなかったけど、落ち葉が付いていたり服が汚れていたりは当たり前の事なのかもしれない。

「相当大変だったんだな…」
「いえ、そんな事なかったですから!」
「それほど頑張ったんだって褒めてるんだよ」

再び、自分達は頭を撫でられる。
一郎さんの撫で方、力強いけど優しいから不思議と心地いいな…

「…よし、丁度風呂も掃除してたし。お前ら風呂入ってこい」
「「…へ?」」

突然投げられた言葉に自分も三郎さんもぽかんと口をあけた。

「い、一兄?突然何を?」
「相当走り回って疲れてるだろうし、服が汚れたまんまも嫌だろ?」
「たしかに走り回りましたけど、全然大丈夫ですよ一郎さん」
「いや、それはダメだろ。お前に関しては俺が無理に頼んじまったし。汚れたままヨコハマまで帰らせるわけにはいかねぇよ」
「(一郎さんがそこまで気にすることないのに…)あ、でも自分師匠に何も言ってなくて…」
「大丈夫だ、満天星さんにはもう連絡してあるし、ちゃんと許可もとってるぜっ」

一郎さんは良い笑顔を浮かべてグッと親指を立てた。
助かったけど、一郎さんの仕事早すぎではないだろうか。

「は、はい…」
「とりあえず、服洗うからお前ら一緒に入ってこい」
「「…?」」

自分と三郎さんはお互いに顔を見合わせる。

「「…一緒に?」」
「おう」
「「えぇぇぇぇ!?」」

多分、ここ数週間で一番声を出した瞬間だと思った。

「ま、待ってください一兄!こいつとですか!?」
「おう、別々に入るの手間だろ?」
「え、あ、はい?え?え?」
「っほら、こいつ驚きのあまり固まってますよ!」
「おぉっ、ほんとだ。おーい?大丈夫かー?」
「はっ!すみません。ちょっとびっくりして…」
「わるいわるい。でも、お前ら今日一緒に依頼こなして帰ってきただろ?一緒に仕事した奴と風呂入って交流深めるのもなかなか良いもんだぜ?」
「はぁ…」
「という訳だ。服は籠に入れたら洗濯しておくから、入ってこい」

有無を言わさない一郎さんの態度に、自分と三郎さんは言い返せなかった。


*****


そんなこんなで、自分は今山田家の脱衣所に来ている。
三郎さんは「必要なものを取ってくるから」と言って何処かに行ってしまった。
頭の中では未だに「何故こんなことになってしまったのだろう」という事をひたすらに考えている。
一郎さんの言いたいこともなんとなくは分かるが、それにしては思いきりすぎだろうと。

「(いや、この際それはもういいんだ)」

自分はそれ以外の理由で困っていることがあったからだ。

「…着替え持ってきた。あとタオルも」

脱衣所の扉が開いて、両手に着替えとタオル持った三郎さんが入ってきた。

「サイズ的に僕のも着れなさそうだから、昔着てた奴持ってきた」
「あ、うん…ありがとう」
「…言っとくけど、お前と風呂入るのは「一兄の手を煩わせないため」なんだからなっ。仕方なくだぞ!」
「う、うん…」
「…なんで端にいるの?」

そう言いながら三郎さんに指をさされる。
その言葉通り、自分は脱衣所の端にいた。

「いや、なんというか、色々考え事してて…」
「ふぅん…」
「…」
「…」
「…ねぇ、そのままでいられても困るんだけど」
「ご、ごめん」
「…」
「…実はさ、」
「ん?」
「人とお風呂入ったことがないって言ったらどうする?」
「…は?」

三郎さんは目を丸くした。

「お前、人と風呂入ったことないのか?」
「うん。ずっと一人で入ってたし、温泉?とか行ったことなかったから…」

師匠に拾われる前の記憶は大分曖昧だが、物心ついた時から一人で風呂に入っていた。
だから、「人と風呂に入る」事や「医者の診療以外で身体を見られる」という事に慣れていなかった。

「なんだそれ…」
「ごめん。ちゃんと一郎さんにそれを伝えればよかった」
「…はぁ。ちょっと待ってて」

三郎さんは洗面台の下の棚を開けて何かを探し始めた。

「…あった。はい」

そう言って何かを投げられる。
慌てて両手でキャッチして見ると、それは透明な小袋に入った薄黄色の丸いタブレットだった。

「これは?」
「入浴剤。風呂の水にとかして使うやつ…ってそれは分かるか」
「う、うん」
「頭と体洗って、それ溶かして風呂入ったら呼んで」
「え?」
「身体見られるの慣れてないんだろ?それなら気にならないだろ」
「…」
「それもダメなのか?」
「…ううん、それなら大丈夫」
「わかった。風呂入ったら呼べよ」

そう言うと、三郎さんは脱衣所から出ていった。
どうやら、服を脱ぐ所まで配慮してくれるようだっ。

「(…ありがとう。三郎さん)」

自分は服を脱いで籠に入れると、風呂場へと足を踏み入れた。


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