大和さんから見た静くん
大和さんから見た静くん
俺が家庭教師をした時の静くんはもっと本能的に聡かった。とにかく勘がいい男の子だった。勘がいいというのは一種の特殊能力のように思うかもしれないが実際はたくさんの経験に裏打ちされた察し方の洗練だ。きっと静くんは目の前に出されるたくさんの情報について取捨選択を含めて本能的に意識してきたのだと思う。
最初に静くんの実力を試すためのテストをした。静くんは公式などは覚えていないところが多かったが引っかけ問題や選択肢のある問題に対する点数は高かった。本人曰く、わかってしまうらしい。理解しているわけではないけど正答がわかってしまった問題について自己申告してきた。律儀だなと思った。
「理解しないと意味ない……と思って……」
と学ぶことに意欲を示してくれるのが嬉しかった。その方が家庭教師としてもやりがいがある。
静くんという人格が俺にはとにかく好ましかった。彼は見ていて気分のいい子だった。
懐かれるのが嬉しくて甘やかした自覚はある。
「点数上がってるな。ちゃんと理解できてる証拠だ、よくできました」
俺がそう言って静くんを撫でると静くんはにこーと笑って嬉しそうにした。思わず撫でてしまったが、静くん自体は体格が大きくてそんな風に子ども扱いされるのは不本意なのではと思っていたので意外な反応だった。撫でられると静くんはとても喜んだ。
「撫でられるの好きか?」
そんな風に聞いたら笑って頷く。気のいい大きな犬みたいだと思った。人懐こくてスキンシップが大好きなタイプだ。あんなに無口なのにな。
褒める時には撫でるのが習慣になった。静くんは嬉しそうににこにこして俺に撫で回されていた。
静くんの成績はこの間も急成長を続けて志望校を3ランクほど上げて第一志望の大学に合格した。
静くんが進学で上京することになり賃貸借について聞かれて住んでいる所の不動産屋さんを紹介したら同じ建物の別の部屋が空くためそこに住むことを決めたという。
側にいられるうちはなんでもしてやりたかった。彼の望むことはなんでも。それがどういう方向に進むかわかっていた。どんな方向であれ、静くんが側にいるだけで俺は嬉しかったのだ。
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