「ねぇ、あとどれくらい我慢したらユンギヒョンのこと抱かせてくれるの?」


風呂上がり、脱衣所でパンツを履き、スウェットの上を着たあたりでノックもなしに入って来たテヒョンは開口一番にそう言った。
風呂場の湿気が脱衣所に広がる中、いきなりの訪問と問いかけに一瞬回答に詰まったが、テヒョンの表情が緊迫した状態だったためにこっちが冷静になってしまう。


「おまえ、我慢してんの?」
「なに言ってるのユンギヒョン。俺、付き合ってからこんなにセックスまでいけてないの、ヒョンが初めてだよ」


相変わらず答えになっていない答えに、こいつはあえて会話の先を見越して話しているんだろうって勝手な設定を付け加える。
いや、まぁ、そんなアホらしい設定は置いておき、テヒョンの過去の恋愛なんぞ知らないが、テヒョンと付き合ってから3ヶ月ほど経っていて、そう思えば俺も誰かと付き合ってから初めてのセックスまでこんなに時間を置いたことはないと思った。
とりあえず、スウェットの下も履く。


「ねぇヒョン、無視しないでよ」
「だから、してねぇよ」
「じゃあなに考えてるの?」
「なんか、悪かったな」
「悪かったって、」
「おまえといるのがしっくりきすぎて、そういう気分にならなかったんだよ。ごめんな」
「ねぇ、そんなの言われたら、普通に嬉しくて何も言い返せない」


これは本当だ。よく知った仲だというのもあるが、テヒョンといるのはとてもしっくりとくるのだ。だから、恋人というよりはなんだか今まで以上に弟みが増したというか、なんだろう、そんな感じ。
でもキスはする。それなりに、恋人っぽいキスだ。たまに、テヒョンはその時にスイッチが入りそうになるけれど、それをのらりくらりとかわして来た自覚はある。
しっくりくるというのは本当の話だが、それを壊してまで今さら体の関係になるのも怖いと思うのも、あったりする。だって、同じグループで活動するメンバーだ。何かあっては遅いのだ。
ちなみにテヒョンは俺の過去の恋愛を気にしてか、いままでセックスをしたいって言葉では言ってこなかった。俺はずるいから、それを盾にしていたけれど。
だから先ほどの悪かった、にはこの分も含まれている。
……とはいえ、可愛い恋人にいつになったら抱かせてくれるの?だなんて、そんなこと言われてまで無視できるほど、俺だって出来た人間じゃない。むしろそんなこと言われて内心舞い上がっているくらいである。



「テヒョン。俺とセックスしたい?」
「したいに決まってるじゃん、」
「わかった、じゃあしよう」
「え、いいの?」
「いいよ、おまえの部屋、今日ナムジュンいないよな?」


俺の問いかけに、頷いたテヒョンの喉仏が大きく上下するのを見て、俺もこれから起こる久しぶりの行為に少しだけ期待をしてしまった。





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