ガタッと思ったよりも大きな音を立ててしまって内心焦った。
「ユンギヒョン、っ」
「あ、ばか、おまえここ…んん、っ…!」
「ん、ふ、は、っ」
撮影の長い順番待ちの中、ユンギヒョンをトイレに連れ込んだ。理由は単純明快。どうしてもこの感情を我慢できなかったのだ。
無理やりその舌を絡めとりながらヒョンのベルトのバックルを外し、スラックスのボタンも外せばストンと落ちたそれは両足首で止まった。
「ちょ、なにして…っ!」
「ヒョン、っは、ごめん、少しだけ…」
「少しって、なんだよ、…っおいテヒョンてめーふざけんな!」
「ごめん、ユンギヒョン、ごめん」
「んんっ!?」
パンツのゴムに指を引っかけた途端ユンギヒョンが本気で抵抗し始めたから、その口に手をあてて無理やり塞ぐ。それでもヒョンは抵抗を試みようとするけれど、それを阻止するためこちらに背中を向けるように身体を回転させて個室の壁へと押し付けた。俺に体重をかけられて鼻だけでふーっふーっと息をするヒョンには本当に申し訳ないけれど、ほんとごめんって思うけれど、この感情の行き場がなくて俺も苦しいんだ。
ユンギヒョンと俺が付き合ってそれなりに月日は経っていた。
ユンギヒョンという人はツンデレで男前という最強なキャラクターであるから、付き合ってからも今まで通りヒョンとしての一面を見せてくれつつ恋人としていてくれて、本当に俺は日々幸せを噛みしめながら過ごしている。そう、つまりは順調にお付き合いしているということだ。
だけどそんな日々の中で俺が勝手に気になっている存在がいる。
それは、ユンギヒョンが前に付き合っていた人。
前にヒョンから聞いた話だけど、ヒョンとその人は数年間お付き合いをしていたらしい。いつから、というのは教えてくれなかったけど、それでもそんなに長い間一緒にいたということは簡単に気持ちを割り切れないものなのではないだろうか、と、ひとりの人と一年以上付き合ったことがない俺からするとその事実は不安要因でしかなかった。
……俺はいつからこんなに女々しくなったんだろう。
ユンギヒョンのこととなると何かと勘繰ったり考えすぎたりと思考回路が大渋滞を起こすのが嫌だった。こうやってモヤモヤしてしまうのだって常で、あんまり考えたくないのに考えてしまう。
ああもう、俺だってどっしりと構えてヒョンのことを大切にしたいのに。……したいのに、なかなか上手くいかない。
さっき、俺がたまたま廊下に出ると、ユンギヒョンとその人が一緒にいた。
俺とヒョンが付き合ってからその人のことを見るのは初めてだったけど、なにやら楽しそうに話しているのが気に食わなくて。
ーーユンギヒョン、スタッフが探してるよ。
気づいたら口から出まかせがスルっと出てきていたことに自分で驚いたけど、俺に声を掛けられたユンギヒョンの顔が一瞬こわばったのを見逃さなかった。……なにその顔?元恋人と話していたのを今の恋人に見られて焦った?こんなとこで話してごめんって思った?それとも、俺に見つからなければもう少し一緒にいたかったとか、思った…?
そうやって考え出したら、考えすぎだとはわかっていても今までの感情も全部乗っかってきて、バーンって破裂した。
俺はこちらへと歩いてきたユンギヒョンの腕を引っ張ってそのままトイレへと連れ込んでしまったのだった。
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