視力



「前から思ってたんだけどさ、目悪いのか?」
「……ん。ああ、睨んでたか? よく目つき悪いって言われるから気をつけてるんだが」
「俺が思うに、気をつけるあまり余計に目つき悪くなってるね」
「そうか。じゃあ気をつけないように気をつけてみる」
「なんだそりゃ」
「悪気はないんだ。怒ってるわけじゃないから」
「ああ、分かってるって。しかしエルフってのは視力がいいもんだと思ってたけどなぁ、なんとなく」
「デイルズエルフはそうかもしれないな。でもシティエルフはあまり関係ないだろう」
「ほとんど人間みたいなもんだからか? ちなみに俺は結構いい方だが」
「アリスターは野性児っぽいからな」
「それ誉めてないよな」
「魔道士は基本的に視力が弱くなりやすいみたいだ」
「流すなよ、おい」
「元々そこまで目がよかったわけじゃないけど、サークルに入って一気に悪化したように思う」
「まあ、暗いとこに閉じ込められて本ばっか眺めてりゃそうなるか」
「いや、それよりも他の感覚が鋭くなるからじゃないか。魔道士は物を見るとき視覚だけに頼らないからな」
「じゃあ何に頼るんだ。匂いとか?」
「説明しがたいんだが、雰囲気のようなものだ。普通なら長く付き合って、よく話して、少しずつ理解を深めていくものが最初からなんとなく見えるんだ」
「あー、そいつは……俺にとってはラッキーだな」
「なぜ?」
「見た目で惹きつけるようなタイプじゃないんでね。お前が面食いじゃなくてよかったよ」
「そんなことはない。アリスターは一目見て格好いいぞ」
「分かった。お前がすごく目が悪いってことが」
「あんたが照れてるのが分かるくらいには見えてるつもりだ」
「くそ……、で、でもなんだ、その……多少は自惚れるにしても、お前だって俺に一目惚れってわけじゃないだろ? 自慢じゃないが女に持て囃された経験はないぞ」
「どうだろう。外見か中身かなんて意識したことはないな。あんたは最初からずっと好ましかった」
「そ、そうですか」
「そうですね」
「からかってるだろ」
「他人よりもあんたのことがよく見えたなら私は目が悪くてラッキーだな」
「……お前は最近よく口が回るようになったよなぁ?」
「アリスターに似てきたと言われることが増えたのは確かだ」
「どういう意味だそりゃ!」



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