腕力
「審問官、こんなところにいたのか? 一体なにを…」
「図書室の掃除をしようと思って。みんな自分が使うところしか片づけないからクモの巣だらけだ」
「それはあなたの仕事では…ああっ、危ない! 私が運ぶ、貸してくれ!」
「あ、ありがとう。そんなに危なっかしいかな?」
「危ない以前に見ていられない。頭の上まで本を積むな。重いだろうに」
「魔道士だからって非力だと決めつけるのは良くない。というか、メジャイは結構みんな力持ちだ」
「そういう問題ではなく…え、そうなのか?」
「毎日毎日、教材を山と抱えて塔を登ったり降りたりしてたよ。実際に授業で使うのは一部だけなんだが」
「虐めじゃないのかそれは」
「鍛練だ。私の導師はバトルメイジで…本を読ませるのと同じくらい、体を鍛えさせるのが好きだった」
「まあ鍛えて悪いことはないだろうが。…言われてみれば私が知るサークル・オブ・メジャイも大抵は力が強かったな」
「それに私は一応トレベリアン家の人間だから。司教を目指してたとはいえ、テンプル騎士になれるくらいには剣の修行もしてたんだよ」
「に、似合わないな…」
「そうかな? サークルに行ってからも自己鍛練は欠かさなかった。進む道がどうあれ私は元々戦士だ。剣を握ると落ち着く。あなたには私が生まれながらの魔道士のように見えるんだろうけど、魔法が使えなかった年数の方が長いんだよ」
「それは分かっているが…いや、分かっていなかったかな。魔法を取り上げたあなたはとても無力で、か弱いような気がして心配だった」
「魔法がなくても剣と鎧であなたの部隊に加わり兵士として働ける程度の腕はある」
「……なるほど」
「信じてないな。じゃあ実際に見て確かめる?」
「えっ? ま、待ってくれ、脱がなくていいッ!!」
「ほら、力瘤だってある! 分かりにくいけどここに。ちょっとだけど…」
「……あ、ああ、うん」
「なんだか期待はずれって顔だな。…そりゃあなたは屈強な兵士を見慣れてるから私が貧弱に見えるだろうけど、でも普通の魔道士に比べたら私だって」
「いや、そういう意味で期待が外れたわけでは! …じゃなくて、ただ違う期待をして、いやその、だからつまり…何でもないんだ!」
「私だって力仕事できるんだ。カレン、手伝わなくていいから自分の仕事に戻れ」
「そもそもあなたの仕事じゃないんだが」
「……」
「…拗ねないでくれ!」