エイプリルフール
レンドン「君が好きだよ」
ブライス「は?」
レンドン「君ほど敬愛すべき人物は他にいない。私のすべてを捧げても構わないと思っている」
ブライス「どうしたんだ。熱でもあるのか」
レンドン「素直な気持ちを言ってるだけさ。私は君を愛しているよ」
ブライス「あ、あー、エイプリルフールか!」
レンドン「過去と未来を懸けて、愛と忠誠を捧げると誓う。これは私の真実の言葉だ」
ブライス「それをよりによって今日言うのだから君は本当に底意地が悪いな」
レンドン「どんな栄光や金銀財宝を与えると言われようとも君だけは裏切らないと約束する」
ブライス「……うーん」
レンドン「……?」
ブライス「しかし好きだなんて普段の君は素直に言えないから、今日に託つけてでも言いたかったのかもしれない。つまりこれは嘘と見せかけた真実だ!」
レンドン「根拠もなくそこまで前向きになれる神経の太さだけは尊敬に値するね」
ブライス「おっ、それは本音?」
レンドン「さてどうだろうな」
ブライス「素直じゃないなあ」
・
エリッサ「エイプリルフールです」
エリッサ「あの夜ハイエヴァーはハウ伯爵の襲撃を受けて壊滅した。両親は殺され、兄は行方不明、私は復讐に生きることさえ許されずグレイ・ウォーデンになってしまった」
エリッサ「ずっと友達だと思っていたのに、ハウは私たちを裏切った」
エリッサ「という嘘です」
レンドン「今さらそんなことを言っても過去は嘘にはならない」
エリッサ「過去が嘘にならないなら、私たちの友情は真実だったってことだ」
レンドン「……屁理屈を言うな」
エリッサ「あなたは嘘がうまいから、きっと父さんたちは今もどこかで生きていて、クーズランドは死んでなんかいないんだ」
レンドン「都合のいい考え方だな。そんなだから私がお前たちを嫌っていることにも気づけなかったんだよ」
エリッサ「でも今日がエイプリルフールだというのは事実だ」
レンドン「そうか。じゃあ言ってやるが、こんな結末は残念だ。とても後悔しているよ、この馬鹿娘」
エリッサ「それを聞けて嬉しかった。ありがとう、馬鹿なおじさま」
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トーマス「俺は父上が嫌いです」
トーマス「お金のことしか考えてないし、母さんや俺たちのことなんて少しも顧みない、自分の利益のためなら何でも犠牲にして平気な冷酷さ」
トーマス「父上なんか嫌いだ。俺もクーズランド家に生まれたかった」
レンドン「知ってる」
トーマス「しっ……じゃなくて、エイプリルフールだからね!?」
レンドン「ああ。嘘なのか? しかし真実でないとしても事実に変わりはないだろう」
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トーマス「嘘が嘘だって気づいてもらえないと虚しいよな」
デライラ「だったら真実にしちゃえばいいじゃない。私も父上のこと嫌いだわ」
トーマス「ちょっと、それもちろん嘘だよね?」
デライラ「さあ、どうかしら」
トーマス「お姉ちゃんってほんとに父さんそっくり」
デライラ「殴るわよ」
トーマス「殴ってから言わないでよ!」
・
ファーガス「実は俺、父さんのこと嫌いだったんだ!」
エリッサ「あたちもー!」
エレノア「私もあなたのこと嫌いだったの」
エリッサ「きあいー」
ブライス「ああっ、こんなにも家族に愛されてなんて幸せなんだ。私もお前たちのことがっ」
エレノア「やだわブライス、今日はもう二日よ」
ブライス「……えっ? エイプリルフール終わった? そんな……そ、それじゃ今のは……」
エレノア「嘘ー。まだ一日でした!」
ブライス「…………」
エレノア「泣くことないじゃないの」
ファーガス「やっぱ母さんには勝てないよな」
エリッサ「かーしゃんにはかてないよなー」
ファーガス「おおー、いっぺんに長く喋れた。偉いなあ」
エリッサ「えへへ」
・
エリッサ「ハウおじさん……」
レンドン「なんだね。珍しくしょんぼりして」
エリッサ「あのね、怒らない?」
レンドン「内容による」
エリッサ「じゃあいいです」
レンドン「待ちなさい。何をしたんだ」
エリッサ「うー、た、大したことじゃないんです」
レンドン「正直に本当のことを言いなさい」
エリッサ「……はい。ビジルのおじさんの部屋にあった、おっきなツボを割ってしまいました」
レンドン「……えっ?」
エリッサ「探検しててねー、クローゼットの上からジャンプしたときに足をぶつけちゃった!」
レンドン「嘘だよな」
エリッサ「ほんと」
レンドン「エイプリルフールだろ」
エリッサ「ざんねん」
レンドン「あの金色の壺? 我が家の紋章つきの?」
エリッサ「ごめんなさい」
レンドン「」
エリッサ「どうしよう。まっしろに燃えつきてるぜ」