嘘つきパラドックス



ハウ「私は嘘つきだ」
エリッサ「知ってるよ」
ハウ「私の言葉は全て嘘だ」
エリッサ「そうだね。最低」
ハウ「……」
エリッサ「何?」
ハウ「私は嘘つきだ。この矛盾を解いてみろ」
エリッサ「はあ? 別に矛盾なんてないよ、あなたは確かに嘘つきだもの」
ハウ「……」
エリッサ「……えっ?」
ハウ「私が嘘つきなら、“私は嘘つきだ”は嘘ってことになるだろ?」
エリッサ「だからあなたは嘘をついてるってことでしょ」
ハウ「つまり私は嘘つきではないということになる」
エリッサ「ならないよ。だって嘘ついてるんだから、あなたは嘘つきだ」
ハウ「ああ、お前が馬鹿だってことは分かった」
エリッサ「なにそれムカつく」



ハウ「“私は嘘つきだ。”つまり私の言葉は嘘だ」
エリッサ「そうだね、実際その通りだ」
ハウ「なら“嘘つきだ”というのも嘘になる。つまり私は“嘘つきではない”」
エリッサ「いや、だって嘘ついてるじゃん」
ハウ「お前の脳味噌は筋肉でできてるのか?」
エリッサ「うるさいな。何が言いたいのか全然分からない!」
ハウ「矛盾の話だよ。私が自身を指して嘘つきだと言うのは矛盾している」
エリッサ「なんで」
ハウ「私が嘘つきだとすれば“嘘つきだ”という言葉も嘘になるが、“嘘つきではない”にもかかわらず“嘘つきだ”と嘘をついている」
エリッサ「ちょっと何を言ってるか分かりません……」
ハウ「涙ぐんで言うな、悲しくなるじゃないか」
エリッサ「あなたは嘘つきだ。それが嘘なら、嘘をついてるんだから、やっぱり嘘つきだ。それが本当なら、自己申告の通り嘘つきだ。何がおかしいの?」
ハウ「ちょっと何を言ってるか分かりませんね」
エリッサ「こっちのセリフだよ! つまりあなたは嘘ばかりで、私に本音なんか話す気はないってことでしょう?」
ハウ「そういう話ではないんだが」



エリッサ「じゃあこういうことか。私は嘘つきだし、あなたがとても好きだ」
ハウ「……」
エリッサ「嘘だけどね」
ハウ「嘘、ね。……お前、六歳の時に私の城で『夜中に水差しを引っくり返した』と言ってシーツを」
エリッサ「わーーーーー!!」
ハウ「あれも嘘だったということか」
エリッサ「嘘じゃない嘘じゃない嘘じゃない本当本当本当」
ハウ「では私を好きだというのは」
エリッサ「本当本当本と……う、嘘だよ!! うそうそ嘘ウソうそ」
ハウ「じゃあ本当は私のことが嫌いで、あれはお漏らしだろ?」
エリッサ「そうっ……違う! ちがわな……えっ!? あああもうわけ分かんないよぉぉ!!」
ハウ「よしよし」
エリッサ「うぐぅぅ…って気安く触るな、ペテン師!」



ハウ「一つ本当のことを言おう。お前は賢くて、私はそんなところが好きだよ」
エリッサ「」
エリッサ「」
エリッサ「ひとつじゃないし」
エリッサ「えっ、私は馬鹿でハウは私が嫌い? いや、それだと“一つ本当のことを言おう”が嘘になるから、」
エリッサ「私は賢くて、ハウは私が嫌い……私は馬鹿で、ハウは私が好き? でも“一つ本当のことを言おう”が嘘なら」
エリッサ「」
ハウ「湯気が出てるぞ。まあ、私の言葉は全て嘘だし、お前は本当に可愛いな」
エリッサ「」
ハウ「……」
エリッサ「」
ハウ「……」
エリッサ「うぅっ…ひっく…」
ハウ「知力の限界に達したらしい」



ハウ「もっと簡単な話にしよう」
エリッサ「いいもうべつにどうせ分からないしすみませんね、馬鹿で! 剣以外のものを教わる前に両親を殺されてしまったので!!」
ハウ「私が嘘つきだとして」
エリッサ「もういいってのに」
ハウ「お前が好きだと言ったら、それは嘘か真か?」
エリッサ「……あなたはただ私を惑わせたいだけだ」
ハウ「そうだよ」
エリッサ「それも嘘?」
ハウ「どうかな」
エリッサ「何にしたってあなたは嘘つきだ」
ハウ「それは真実だな」
エリッサ「……もうっ、あなたの言うこと全部まともに受け取れなくなった!」
ハウ「それは賢明だな」
エリッサ「私は嘘つきだ。……これが矛盾してるの? 分からない」
ハウ「お前は馬鹿だな」
エリッサ「私はあなたが好きです。これは矛盾している」
ハウ「お前は馬鹿だ。それは矛盾じゃなく、嘘なだけだろ」
エリッサ「嘘が嘘じゃないから矛盾なんでしょう?」
ハウ「……エリッサ」
エリッサ「次にあなたは“お前は馬鹿だな”と言う」
ハウ「ああ、いや。お前は本当に嘘がつけないんだな」
エリッサ「それは真実だね」



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