知らない君と



てる。どうすれば喜んでもらえるのか知りたいけど、それを聞ける相手はあなたしかいないから」
 家に帰ればファーガスや義姉上にも気軽に尋ねられるし母上も適度なアドバイスをくれるだろう。なんなら城勤めの騎士や使用人たちに冗談まじりで聞いてもいい。でもここはやっぱりまだロゲインの城で、私の家じゃないから、そこまで打ち解けてない。彼はどうしてほしいのかな、なんて誰にも聞けない。

 平素は不機嫌そうにひそめられている眉が今は困り果てて下がってる。私も困った。我儘を押し通したいように見える? ただ状況を変えたいだけなのに。
「……私は今のままで充分だ」
「ほら。そう言われたら、私は信じるしかない。あなたが何かを求めていても悟れないし、それを確かめる相手もいない」
「そのままでいいんだ」
「じゃあ、あなたはこの時間、気まずくないんですか」
「それは……だが、空気を変えるために無理にするものでもない。しないならしないで構わんだろう、私はそう若くもないんだ」
 ああでもお前は若いんだった、と視線が雄弁だ。私だって恥ずかしい思いをして打ち明けてるってこと、分かってもらえてるのかな。べつに誘ってるわけじゃないし、物足りないわけでもない。あなたが知りたいだけ。なぜこんな風に立ち止まってしまうのか、その原因が私なら。
「もしあなたが……単に私を……好きではなく、興味がなくて、求めないだけなら」
 何も求めることがないだけだと言うならそれはそれで仕方ない。口に出そうとした瞬間、激しく心が痛んだ。そうなのかも。単に抱けないのかもしれない。口説く気になれなくても無理はない。私が彼に父親の印象を重ねているように、彼もまた私に娘の年齢を感じているのだろうから。あるのはただ、娶ってしまったという義務だけ?
「気にするな。分かる。私はこうしてお前のすべてが見えるから征服欲が満たされるんだが、それはすなわちお前にとって一方的に自分を支配されているということ、お前が不安を感じるのも無理はない」
 ロゲインは私の腕を引いて抱き起こし、今度は彼が仰向けに寝そべって、私はそのお腹の上に座らされた。お腹というか、つまりその……上に。体重がかかっているおかげで押しつけられていたときよりもはっきりその存在を感じた。
「これは? お前の好きにできるだろう」
「うぅ、ん」
 先には拘束が怖いと言ったくせに我儘だと怒られるかもしれないけど、自由すぎるのも恥ずかしかった。この体勢ならたしかに私が好きに動けた。馬に乗って手綱を握るように、勝手にできる……それは同時に私がどうしたいのかすべてをありのままに曝け出すということ。どう動いて、彼のそれがどこに触れれば、どれだけ感じるのか、白状することになる。
「な、なんだか……私のいやらしさを見られるみたいで……恥ずかしい」
「願ったりじゃないか」
「もう!」
 軽く笑い飛ばしてロゲインが私の腰を掴んだ。くすぐったさに身をよじる姿も、まるで快感に身悶えているような。彼の動き一つも逃さず下腹部から全身に伝えられてくる。私の動きもぜんぶ伝わっているのかも。ああこれは……たぶんものすごく恥ずかしい。
「分かれ。いやらしいのはお前だけじゃない。お前の中にいるとき私がどれほど感じているか、一番よく知っているだろう?」
「……分からない。だから、もっと教えて」
 目を細めて、笑っているのにすごく悪そうな顔。こうしてじっくり見つめあってみると……なんだ、英雄も結構やらしい目で私を見るんだなぁ。
 線が引かれていく。二人の関係がクリアに見えてくる。出会った経緯や互いの立場がどうであろうと、どれほど年が離れていようと私たちは結局、男と女だ。求めあって当たり前なんだ。
 すとんと心が落ち着いたのに鼓動だけはおさまらない。私はロゲインに跨がったまま、身を屈めて彼に口づけた。どうすればいいか分かる。互いのすべてを解き明かすまで、欲求に従って動けばいいんだ。



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