緑川と遊真の試合は見る者を魅了するスピードと攻撃裁きがあった。
米屋が緑川の事を解説しつつモニターを見てみると空閑が既に一点取られてしまった。
「ああ〜。」
「遊真っちー!がんばれー!」
陽太郎と一緒になって露乃も躍起になって応援を続ける。
外野は完全に緑川が勝つだろうと予想を囃し立てた。
だが三人だけは遊真が勝つと信じている。
ふと、米屋がモニターを見て笑みを浮かべ言う。
「あー結構、経験の差があんなー。」
米屋の言葉に陽太郎が憤慨し、一緒の様に露乃も苦言を呈する。
「…遊真くんが負けるということですか?」
「いや、逆、逆、見てろ、そろそろ勝つぞ。」
米屋の言う通りに遊真の動きが変わり、一方的な試合となる。
緑川も早いがそれ以上に遊真の誘い口や口車に乗って冷静な断ができていない。
同じスコーピオン使いでもこうも経験の差があると動きが違うのかと露乃はゴクリと固唾を呑む。
結果は遊真が8勝した。
陽太郎がその勝利を讃える中、米屋が次の対戦を申し込もうとする。
「遊真、メガネ君。」
 だが、迅の呼び止めによりそれは阻止された。
「迅さん…?!」
「どもども、ちょっと来てくれ。
城戸さんたちが呼んでる。」
城戸さんという言葉で固まる三雲に対して首をかしげる二人。
「城戸さんが僕たちを…?」
「そう、あーあと妹ちゃんには悪いけどメガネ君たち借りるね。」
「いえ、そんな…。」
自分だけ疎外感を感じつつ。
緑川と戯れる迅を見つめる。
一頻り、話が済んだ後、三雲と露乃に対して緑川は頭を下げる。
「…三雲先輩、露乃先輩すみませんでした。」
「えっ?!何?!なんで?!」
状況が飲み込めない三雲にそっと耳打ちする露乃。
「そうだったのか。」三雲も三雲で大声で風間との試合の誤解を解き、玉狛の面々は去っていく。
「ねぇねぇ、露乃ちゃん先輩。」
さっきとは打って変わって明るい顔で緑川が親しげに呼んでくる。
「な、何?」
「三雲先輩のこと好きなの?」
「あっ、俺もそれ気になった。」
ノリノリで米屋も便乗するので露乃は顔を真っ赤にして横に降る。
「ち、違いますよ!三雲っちは単なる友達でその…べ、別に好きとか…。」
その反応で二人は色々と察し、これ以上詮索するのはかわいそうだと目配せをする。
「よーっし、メガネボーイとの恋路をこれ以上茶化すと馬に蹴られると思うからほら行くぞ緑川。じゃ、いもーとちゃん。」
「え?ちょ、よねやん先輩待って!
露乃ちゃん先輩またね。」
そう言って慌ただしく去っていく二人を見送った。
「なんだったんだろう。」
  


 一方龍樹は林藤支部長の付き添いとして本部まで来たが暇を持て余していた。
模擬戦を申し込まれれば受け、遠巻きに噂されれば顔をしかめと本部の雰囲気に呆れて遂には屋上へと逃げ込んだ。
一人で風に当たっていると三輪が入ってきた。
「…。」
「ごめんなさいね、お邪魔かな。」
そう言って立ち去ろうとする龍樹。
「待て。」
その言葉には強制力はないはずなのになんとなく従ってしまう。
「何?」
「聞きたいことがある。
何故、あんたは友人をネイバーの襲撃で失ってるはずなのに玉狛に加担する?」
振り返り、三輪目をみると憎々しげに龍樹の目を介して別の誰かに問いかける様だった。
「…無論ね。ねぇ、親友だと思ってた人が実はいじめの首謀者で自分を貶めようとしてたらどうする?」
その問いに面を食らう三輪だが人論を唱える。
「だとしても人間として助けられなかった事を悔いているのならネイバーを打倒すべきだろ。」
「そうね、それも一つの正義ね。でも私、正直、玉狛とか本部とかどうでもいいの。」
「なっ、何だと?!」
「そんなに驚かなくてもいいじゃない。
兎に角、私はこだわりはないの。
冷たい人間だと思って構わない。
でもね、これだけは間違えないで、ネイバーも人間も生きているの。
だから、争うし奪い合いも起きる。
こちらが絶対的な正義だとも語れないことを覚えておいて。」
そう言い切るとタイミングよく、誰かが入ってきた。
「やあやあ、お二人さん元気してた?」
「…何の用だ、迅。」
不機嫌そうに三輪が答えると迅は三雲が今度の侵攻でピンチになるから助けて欲しいとの旨を伝えた。
城戸司令が風神を誰に預けるかを悩んでいる旨も一緒に。
「…なら、雛菱に頼めばいい。」
「そうしたいのは山々なんだけど、龍樹は俺のサイドエフェクトでは妹ちゃんを守る分で手一杯と出ている。
それに、お前はきっとメガネ君を助けるよ。」
くだらないと三輪は切り捨てて屋上を出て行く。
その背を黙って二人は見送った。
三輪が去ると龍樹は神妙な顔で迅に問いただす。
何故、三雲と妹が危機に合うのかと。
「これは確定した未来じゃない。でも、はっきりと言えることは妹ちゃんのことは他の誰でもない龍樹にしか救えないことだ。放っておいたらきっとよくて行方不明、悪くて犠牲になるかもだ。」
「じゃあ、三輪の言う通り一般人と避難すれば、妹はまだC級ですし。」
「確かにそれも一理ある。でもその日は突然にやってくる。止めようにも彼女は必ず動くだろうよ。」
我が妹ながら困ったものだと龍樹も折れてため息をつく。
「それで、私は何をしたらいいのですか?」
回りくどい言い方をする彼は頼み辛いことを要求するのが常だ。
「話が早くて助かるよ。メガネ君達が逃げる時になるべく力になって、後は絶対にトリガーオフしないで。どんな事があっても。」
彼にしては珍しく苦々しげな忠告を受ける。
ベイルアウトがあるから大丈夫だろう何をそんなに彼が苦しむ必要があるのかと龍樹は呆れる。
「ベイルアウトがあるから大丈夫ですよ。心配しないでください。」
「そうじゃないんだ。でもこれ以上いったら未来が変わってしまうから言えない。」
「わかりました。兎に角それだけは守ります。」
安心させようと言葉を紡いでいるはずなのに一握の不安が龍樹の胸に影を落とした。
 

 
 とある平日、クラスでは三雲の功績を称えるクラスメイトで彼はもみくちゃにされていた。
お昼休みにようやく解放されてくたびれた様子で屋上で昼食をとる。
「三雲っち、すっかり有名人だねぇ。」
「人に囲まれるのは疲れる…。」
「オサムしょっちゅう囲まれてるじゃん。」
「あはは、お疲れ様。たこさんウインナーいる?」
「じゃあ一個だけ…。」
お弁当を差し出すと三雲は迷いなくウインナーをつまむ。
「本当に仲良いなオサムとツユノは。」
「そ、そんなことないよ。」
「ああ、そ、そんなこと…。」
互いに顔を赤くしながら距離を取る。
「修くん。」
「おーさぶさぶ。」
千佳とその友達らしい女の子が上がってくる。
「おーチカ。」
「千佳ちゃんと…そちらは?」
キョトンとしている露乃と三雲。
「いっしょに狙撃手になった出穂ちゃん。」
「ども、夏目出穂っす。」
「チカの友達がどうぞよろしく。」
「ろよしくっす。」
「私も、雛菱露乃です。よろしくね。」
「チカ子から聞いてるっす。露乃先輩よろしくっす。
 不穏な空の下、5人は昼食を楽しんでいたが千佳が何かに気がつく。
鈍色の空にポッカリと黒いゲートが複数浮かぶ。
「これは…!!」
「三雲っち、遊真っち行くよ!」
一目散に屋上から5人は駆け出す。
大いなる意志により翻弄される子供達。
彼らの未来はどちらを示すか。

【To be continued】

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