勇気とは時に人の判断を鈍らせる。

それがどんなに愚かな選択だとしても私は進み続けないといけない。

停滞を望む姉とは違う。

次の日、遊真っちと三雲っちと三人で屋上にてお弁当を食べることに。

「それで昨日、不良に絡まれてたけど大丈夫だったの?」
私が聞くと遊真っちは平気そうな顔で答える。
「大丈夫、大丈夫、オサムがやっつけてくれたからさ。」
「本当に〜、三雲っちが?」
「いや、僕は付き添っただけだ。」
そんなこんなで空閑君に目立つなと注意する三雲っち。
生返事で遊真っちが答えると昨日の不良どもが屋上にやってきていちゃもんをつけてくる。
屋上使用料が一人500円とは学生ではかなり痛手だぞと呑気に考えていたら三雲っちが面倒見の鬼を発揮する。
足を痛めていた不良が杖で三雲っちを攻撃する。
そして彼には有り金全部を要求しニヤニヤと笑う。
私は我慢ならなくて三雲っちの前へ出る。
「謝りなさいよ。」
「はぁ?黙って金出せやクソアマ。」
殴りかかろうとした腰巾着を目視で避け拳を掴む。
姉の拳に比べたら遅い。
「やる気か!この!」
リーダーのやつが杖をふりかざそうとした瞬間、屋上全体にズドンという振動が伝わり私も思わずうずくまる。
後ろを振り向くとニコニコと笑う遊真っちの姿が。
「悪いけど、どいてくれる?」
その振動で何かを思い出したのか青ざめる不良たち。
他の生徒たちも遊真っちを一目置く形でその場は治った。
それだけ行って三雲っちを支えて屋上を出た。
「雛菱、無茶するなよ。」
「えへへ、遊真っちが平和的に解決してくれたおかげだよ。」
「いやーそれほどでも。
オサム、今のならいいだろ?蹴ってもないし平和的で。」
平和的かと首をかしげる三雲っち。
まあ、誰も怪我してないので平和的なのだろう。
教室に戻れば皆、空閑、空閑と彼の話題とボーダーの話で盛り上がっている。
「そういえば、雛菱さんのお姉さんもボーダー隊員だよな。
前、雑誌にインタビュー乗ってたよ。」
「へーよく読んでるね。
お姉ちゃん、最近、仕事が忙しいみたいで入れ違いになるからほとんど話は聞かないかな。」
本当は嘘。
姉のことなんて聞かないでよともやもやと嫌な気持ちが胸に広がる。
話の輪の中にいた三雲っちと遊真っちは手を引いてどこかへ行く。
顔を見合わせ談笑に戻る生徒たち。
そんな彼らを私がぼんやり見てるといきなり警報がなった。

『緊急警報、緊急警報!
ゲートが市街地に発生します
市民の皆様は直ちに避難してください
繰り返します
市民の皆様は直ちに避難してください』
水野先生の指示で教室にいた生徒たちはシェルターへと足を進める。
私は避難誘導に従っていたが不意に三雲っちと遊真っちの事を思い出す。
確か彼らはこの向こうの空き教室に居るはずだ。

「…大丈夫、だよね?」
私のつぶやきは虚空へと消え、人の波に乗って足を早めた。
屋上へと上がると窓ガラスが割れて土煙が上がっている。
数分後、警報が止み、人数確認のために屋上から校庭へ出るよう指示が出た。
校庭へ集まり点呼を取る。
そうしていると建物の塀を飛び越えて見慣れた赤いジャージを視界に捉える。

「嵐山隊だ!」
誰かがとっさに叫ぶ。
その瞬間、女子からアイドルよろしく黄色い歓声が上がる。
嵐山隊、三門市でおそらく知らぬ者はいないだろう有名人たちだ。
一方で三雲っちは神妙な顔で自分の行いに悔んでいる。

「ぼくがやったことは隊務規定違反、
たぶん厳罰処分だ。」
「君が?」
「C級隊員の三雲修です。
他の隊員を待っていたら間に合わないと思ったので…
自分の判断でやりました。」
真っ直ぐ、正直に彼は嵐山さんを見つめる。
嵐山さんは三雲っちの肩を掴んで褒めてくれる。
「そうだったのか!よくやってくれた。」
それっきり彼は弟と妹の無事を確認し、頬ずりをしている。
それからモールモッドの死骸を見つめながら嵐山さんは関心する。

「いやーすごいな。
ほとんど一撃じゃないか
しかもC級トリガーで…。」
その言葉に三雲っちは謙遜し、空閑っちも何故か謙遜する。
ははん、空閑っちがやったのか。
何故かそんな考えがよぎる。
いやいやありえないだろう。
でもまあ、様子から察するに何か事情があるのだろう。
黒髪の女の子が嵐山さんに促されてモールモッドの死骸をバラバラにする。
さすがボーダー隊員。
そして三雲っちを見下すように冷たい視線を向ける。
隊務規定違反を彼女は主張して攻めるが私と空閑っちも負けずに反論する。
「お前、つまらない嘘つくね。」
「意地を張りたいだけなら三雲っちを責めないで。みんなを助けたのは彼よ!」
そうだそうだとみんなが援護してくる。
言い争いになる所を年上らしい隊員に諌められてその場は収まって解散となった。
「それじゃあね、二人とも。今日はお疲れ、三雲っちもかっこよかったよ。」
「嗚呼、また明日な。」
「また明日、庇ってくれてありがとな。」
今日は夕飯の買い出しを頼まれているので千佳ちゃんとも帰れないのだ。
手を振って教室を出て昇降口まで出る。
すると、数時間前にあった黒髪の少女が校門で待っていた。
会釈だけして通り過ぎようとしたら腕を掴まれる。

「C級隊員君は先帰ったの?」
言葉の端々に棘があるような口調。
掴まれた腕は痛くないのになんか嫌だなと思ってしまうのは何故なのだろうか?
「まだ教室にいますよ。
それでは、私、急いでいるんで失礼します。」
腕を振り払ってスタスタと彼女の横を通り過ぎる。
さて、今日の夕飯は何にしようかなと思って商店街へ入ると大きなクジラのような見たこともない化け物が空を泳いでいた。

「何、あれ。」
次の瞬間、轟音と閃光に街は包まれる。

To be continued


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