イレギュラーゲートのラッドと呼ばれる小型トリオン兵だった。
それの撲滅に駆り出された任務後、龍樹は迅に呼び止められた。

「龍樹、ちょっといい?」
「何ですか、先輩。」
また、呼び出しか何かだろうと呆れ半分に返事をすると彼は苦笑いをしていう。
「そんなに嫌そうな顔しないで。
今夜、単騎で俺の手伝いしてくれない?」
単騎ということは三毛島や小湊にも言えないつまり暗躍ということを悟る。

「わかりました。
先輩のことだから無茶振りでしょうけど一応理由が聞きたいです。」
「うーん、ここじゃ言いづらいんだけど…。」
「なら、触りますよ。」
そっと彼の手を取り考えを詠む。
どうやら三雲の友人がこれから危機に晒されるとの事だ。
龍樹が居なくても大丈夫だが戦力は多い方がいいと迅は考えているようだった。
「はぁ、三雲君のためなら仕方ありません。
尽力します。」
「素直じゃないな龍樹は。」
17時に玉狛にいてと約束されて二人は別れた。



いい天気の休日には散歩が一番だと露乃は気分良く街を歩く。

「ふんふんふーん!気持ち〜!」
ふと河原を通りかかると千佳と遊真が自転車の練習をしている。

「おーい、千佳ちゃーん!遊真っちー!」
呼びかけながら手を振ると二人がこちらを向く。

「ツユノじゃん。」
「こんにちは、露乃ちゃん。」
「はいはい、こんにちはー。
二人は知り合いだっけ?」
二人に駆け寄りながらいうと顔を見合わせ横に振る。

「いいや、今知り合ったところ。」
「うん、修君に呼ばれてて…。」
ウーっと三門市民には聞きなれた警報が遠くで鳴り響く。
鳴り止むか否かの差でとっさに千佳が振り向き足を進める。

「ごめん、二人とも私、行くね。」
「えっ、あっ、どうしたの?」
呼び止める露乃を振り切り彼女は禁止区域の方向へと駆け足で去って行く。

「俺もちょっと用事ができたから行ってくる。
オサムには、心配ないって伝えておいて。」
「ちょ、ちょ、どうしたの遊真っちー!」
自転車を置いて駆け出す遊真。
一人取り残された露乃はイマイチ状況が飲み込めず立ち尽くす。
数分後、三雲が来て自転車と露乃しかいない事に首を傾げながらこちらに向かって来る。

「あれ?雛菱、空閑と千佳を見なかったか?」
「二人なら向こうに走って行ったよ。」
「ありがとう。」
「ちょ、ちょっと待って、イマイチ状況が飲み込めないんだけど三雲っち何か知らない?」
「今はそういう場合じゃない。
千佳が危ない目にあってるかもしれないんだ。
済んだらわかるように説明するから待ってろ。」
そう言って彼は背を向けるが露乃は決心したように彼の後をついていく。

「やだ、千佳ちゃんが危ないなら、私も助けに行く。」
「バカ!一般人のお前が禁止区域に入ったら足手まといになるだろ!」
「バカは三雲っちも同じでしょ!
この前の学校の時も同じことした癖に!」
意地でも譲らない露乃にため息をついて三雲は足を進める。

「ついて行ってもいいが安全が確認できるまで禁止区域外で待ってろ。」
「わかった。」
自転車を引いて彼の後ろをついて行く。
すると三雲の周りに黒い豆粒のようなものが浮いている事に気がついた。
その物体と三雲は何か話し合ってトリガーを握る。
「トリガーオン!
こっちだネイバー!!」
突如瓦礫から大きなネイバーが出て来て露乃も自転車を捨て逃げようとする。
禁止区域ギリギリの所で三雲はレイガストを構えて立ち向かう。

「雛菱、僕から離れるなよ!」
「う、うん。」
巻き込まれてしまったのは仕方がないとバンダーの砲撃を防ぎながら次の戦術を考える。
狙いはネイバーの一つ目のような部分だ。
そこを狙い三雲は左手を構える。
「アステロイド!」
命中はしたがこれだけでは弱い。
ならどうするべきかと彼はレイガストのスラスターモードを思い出した。

「スラスターオン!」
勢い任せでバンダーに突っ込む三雲。
「うわっ、おあああ!!!」
使い慣れてないぶっつけ本番の状態で部位を破壊する。
ドォンと爆発音と煙が辺りを包み込む。
映画さながらの迫力に露乃もポカンと口を開けて立ち尽くす。
もやの中から三雲が出てくるといつの間にか側にいた遊真と千佳が駆け寄る。
「おーやるじゃん。
さすがB級隊員。」
「だねぇ…って遊真っち、千佳ちゃん!心配したんだよ!」
露乃が二人に向き直ろうとした瞬間、三雲が怒鳴る。
「千佳!!
なんでおまえが警戒区域にはいってるんだ!
バカな事はやめろ!」
「ちょっと三雲っち、怒る事ないじゃん。」
「雛菱は黙ってろ!」
「修くん、ごめん。
街の方にいたら、危ないと思って…。」
謝る千佳を他所に遊真は素直に疑問をぶつける。
「なんだ、オサムとツユノの知り合いか?」
「ああ、今日は千佳と合わせたくてお前たちを呼んだんだ。」
「ツユノも?」
「いや、呼んでないが。」
「私は通りかかっただけだよ。
はい、自転車、忘れ物だよ。」
「おお、これはありがとうございます。」
自転車を受け取りながら遊真はいつものように笑う。
「…話がずれたが、空閑、レプリカ。
二人の知恵を貸してくれ。
千佳はネイバーを引き寄せる人間なんだ。」
「えっ…千佳ちゃんが…ネイバーを?」
「ふむ…?
ネイバーを引き寄せる…?」
遊真が疑問に思っているとレプリカの分身が移動を提案する。
なんでもすぐ近くにボーダー隊員がいるらしい。

「雛菱も話しておいたほうがいいと思うからついてきてくれ。」
遊真の秘密を隠し通せないと判断した三雲は露乃に同行するよう促す。

「うん、なんかただ事ではないことはわかったよ。」
禁止区域の柵を乗り越えて四人は旧弓手町駅に向かった。

「なんでお前たちが一緒にいたんだ?
雛菱も何であんなところに?」
「えっと、待ち合わせの橋の下で知り合って…。」
「自転車を押してもらって川に落ちた。」
「んで、散歩してた私が二人を見つけて声をかけたら警報なって千佳ちゃんが走り出したの。」
三人の支離滅裂な説明に三雲は余計に首をかしげる。

「…さっぱりわからん。
まあ、取り敢えず自己紹介だ。」
千佳と遊真の自己紹介を終えて三雲が千佳のトリオン兵を引き寄せる現象に説明する。
少し考えた遊真はトリオンの量のせいではないかと仮説を立てた。
それならと指輪からレプリカが出てトリオン量を測定しようということになった。

『はじめまして、チカ、ツユノ。
私はユーマのお目付役だ。』
「は、はじめまして。」
「はじめまして、これはご丁寧に。」
『早速だが、この測定策でトリオン能力が測れる。』

にょろんと舌のような管を出すレプリカに二人はギョッと驚く。
「どうぞ、どうぞ、ご利用ください。」
「う、うん…。
でもちょっと怖いな。」
おどけたように遊真が促すが千佳は戸惑っている模様。
それを察した三雲は自分が測ると前へ出る。
計測はすぐ終わり、小さなキューブ状のものが出てきた。

「このサイズだとどのくらいのレベルなんだ?」
「うーん、ネイバーに狙われるくらいには、この三倍は欲しいかな。」
「…別に狙われたいわけじゃない。」
ちょっと悔しそうな三雲を他所に次は露乃が名乗り出る。

「はいはい!私もー!」
「雛菱、遊びじゃないんだぞ。」
「オサムは、硬いなぁ。」
計測策を握ること数分。
露乃の顔より、大きめな立方体が出てきた。
「ツユノのは普通の人よりちょっと多いくらいだな。んーでも狙われるくらいならこの二倍は欲しい。」
「へー、そうなんだ。
私もあんなのに襲われるのはごめんかな。
千佳ちゃん、大丈夫だよ。」
そう露乃が笑って見せると千佳はおずおずと右手を差し軽く握る。

『時間がかかりそうだ。
楽にしていてくれ。』
レプリカがそういうので千佳は座って計測を待つことに。

一方、他の三人はというと。

「なぁ、オサムはチカとツユノどっちかと付き合ってるのか?」
「ば、バカそんなんじゃない。
千佳はお世話になった先輩の妹で雛菱はその…転校して来てからの腐れ縁だから。」
そう否定する三雲は満更でもないようだ。
「そ、そうだよ。
三雲っちはただの友達だよ!」
露乃も顔を真っ赤にして否定するあたり案外似た者同士なのかもしれない。

「ふーん、それにしても、そんなにはっきりネイバーに狙われるならボーダーに言って助けて貰えばいいじゃん。」
当たり前の提案を三雲は千佳の過去を交えながら説明する。
大人たちが千佳のことを誰も信じてくれなかった事。
友達が行方不明になった事。
兄の鱗児がどこかへ消えてしまった事。
それに負い目を感じて三雲はその意思を継ぐようにボーダーを志したのだと。

「なるほどね。
そんでオサムはチカを助けたくてボーダーに入ったわけか。」
「別にあいつを助けたいわけじゃ…。
僕は街を守るために…。」
照れている三雲を見て露乃は素直じゃないなとため息をつく。

「胸を張ってよ三雲っち。
君の志がどうであれ少なくとも私たちは救われたんだよ?」
「そうだぜオサム。
ごまかす必要ないだろ。
誰かを助けたいってのは立派な理由じゃん。」
そう笑いかける二人に三雲は固く拳を握る。

「…そんな立派な話じゃない。
僕がボーダーに入ろうと思ったのは…。
何もできない自分に腹が立ったからだ。」
その決意を秘めた瞳に二人は黙り込む。

『計測完了だ。』
振り向き様に大きなキューブに驚き感嘆を述べる三人。
レプリカが再度、ボーダーに助けを求めるよう提案するが千佳はこれからも自分一人で大丈夫だと断る。

「動くな。ボーダーだ。」
誰もいないはずの旧弓手街駅に二人の男子高校生の影。
彼らの殺気に3人とレプリカは動揺する。

「ネイバーとの接触を確認。
処理を開始する。」
そう冷静に言い放つ黒髪の神経質そうな少年はトリガーを構えて換装する。

「さて、ネイバーはどいつだ?」
好戦的に笑うカチューシャをした少年が槍を構える。
少年達は何やら話し込み、千佳を標的にしようと一歩前へ出る。

「違う、違う、俺だよ、ネイバーは。」
空閑が名乗り出て困惑する一同。
神経質な少年が確認を取り、空閑を打つ。
悲鳴が上がるが平気な顔で空閑は縦のようなものを出して立ち上がる。

「おいおい、おれがうっかり一般人だったらどうする気だ。」
「空閑!」
「遊真っち、だ、大丈夫?」
駆け寄ろうとした露乃を制する。
「来るな。大丈夫、大丈夫だから。
それとさ、ボーダーに迅さんって人いるだろ?
おれのこと訊いてみてくれない?
一応、知り合いなんだけど…。」
その言葉に三雲は賛同する。
だが裏切り者だとバッサリと切り捨てられてしまう。
その様子を見て、露乃は意を決して援護をする。

「…迅さんって人がダメなら、うちの姉はどうです?
雛菱龍樹って言うんですが。」
龍樹の名を聞いてさらに少年は眉間のシワを深くする。
代わりに槍の少年が答える。

「うっわ、雛菱さんの妹さん?
でもなぁ、悪いけど隊務規定違反でお姉さんが罰せられるよ?
それでも呼ぶ?」
規律や規則を重んじる姉のことだ。
それに喧嘩中でロクに口を聞いてないのだからこれはハッタリだ。
だがそれをもろともしない二人を睨み後ろへ下がった。
「オサム下がってろ、こいつらが用があるのはおれだ。
こいつらとは…おれ一人でやる。」
そう言って空閑は換装体になる。
まるで映画のワンシーンの様な戦闘が露乃達の眼の前で繰り広げられていた。
銃弾が飛び交い、遊真の首がぱっくりと割れて光の粒子が飛ぶ。
一方的な攻撃に三雲は拉致があかないと迅に連絡を取る。
露乃もダメ元で龍樹に連絡を取る。

「…お願いでて。」
露乃の願いも虚しくコールは切れてしまった。
一方、三雲は迅と何やら話し合っているようだ。
遊真はと振り向いたら線路の上でうずくまり何やら反撃を試みてみるようだ。
相手の重石のようなトリガーをコピーして放つ。
決着はついた。
その様子に三人はほっと胸をなでおろすと後ろから声が聞こえて振り返る。

「俺の言った通りだったろ?」
「迅さん!」
「どもども、ビルの屋上でレプリカ先生とばったりあっちゃってさ。
せっかくだから来てみた。
お?可愛い子がいるな。
はじめまして。」
千佳と露乃に挨拶をする迅に二人は引き気味に返す。
「えっ、は、はじめまして。」
「は、はじめまして。」
「んー、誰かに似てるって思ったら君お姉さんとかいる?」
露乃をみて迅は問いかける。
「…いますよ。」
「うんうん、俺も知ってるから。
それとお姉さんのことあまり上手く言えないけど邪険にしないであげてね。」

何かわかっているような口ぶりで迅は露乃を諭す。
その言葉に顔をしかめて露乃は黙り込む。
何故、そんなことを彼はいうのだろうか。
その言葉の真意は年が明けてからわかることになる。
遊真と迅は少し話し込み、三輪秀次と呼ばれた少年が憎々しげに彼らと話しベイルアウトした。
その場は一旦、解散となり、三雲と迅はボーダー本部へ。
千佳、遊真、露乃は昼時なので昼食を取ることに。

「じゃあ、三雲っち後でね。」
「修君、またね。」
「嗚呼、空閑、金の使い方は気をつけろよ。」
「前みたいにポンっと出さないから、心配性だなオサムは。」
「何かあったら連絡してくれ。」
「はーい。じゃあ、千佳ちゃん、遊真っち行こうか。」

各々、目的の為に禁止区域を後にした。

【To be continued】

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