佐城さんの連絡先をゲットして早一ヶ月。
ちょくちょく電話をしたりSNSでお話をしたりしたが物足りない。
「今はまだ仲のいいお友達って感じだしなー。」
はぁと溜息が漏れるたびにうるさいぞ佐鳥とクラスメイトが茶化す。
その軽口に乗れない程、今オレは悩んでいる。
お話しすることは楽しい。
だが、もうそろそろ次のステップに進んでもいいのじゃないかと思うのだ。
例えば合同演習後にちょっとお茶をするとか。
例えば一緒にお食事に出かけるとか!
「佐城さんの笑顔が恋しい〜!」
「そんなになら会いに行けば?」
とっきーが後ろにいた。
もう既にカバンを持ってることから今は放課後らしい。
「それができたら苦労しないよ。
だいたい相手はお嬢様だよ!お嬢様!
唯我や来馬先輩みたいなお貴族だからこっちから予定を埋めるわけにはいかないじゃん!」
ギャンギャンと俺がまくし立てれば少し考えた後どこかへ電話をかけるとっきー。
「…はい、はい、佐城さんのご予定は都合つきますか?…はいわかりました。」
電話を切り俺に向きなおる。
とっきーも佐城さんの連絡先を知っていたのか…。
軽くショックを受けていると二度目のため息をつかれた。
「何を思ってるかわかるけど佐城さんには連絡してないから。
根付さんに頼んで佐城グループの懇談会に全員参加できないかと相談しておいたから。」
懇談会?コンダンカイ?なんじゃそりゃ。
「つまりボーダーと佐城さんのお家の会社がこれからどう言う方針で共同の事案を決めるかと言う会議だよ。」
唖然としているととっきーが説明してくれる。
それってつまり佐城さんのご両親と顔合わせ?!
まだそんなの早いような…付き合ってもいないのに。
顔合わせだなんて。
天にも昇る心地で顔を赤らめて頬を抑えているとスマホが鳴る。
誰だ、俺と佐城さんの将来設計を邪魔する奴は。
ディスプレイを見ると嵐山さんだった。
「はい!佐鳥です!」
『佐鳥か。明日の午後からすまないが急遽佐城グループの懇談会に参加することになった。』
「はい、とっきーから聞いてます!」
『ははは、それは良かった。
服装は学校の制服でいいとの事だ。じゃあ、また。』
「はい、佐鳥了解です!」
明日が楽しみだなぁ。
小躍りしながら本部に行くと相変わらず木虎が今日は特に変ですねと言うが気にならない。
だって明日には佐城さんと会えるんだから!
*
次の日、佐城グループホテルの最上階に案内され会議室に入る。
入る前に根付さんは口を酸っぱく「いいかね?意見を求められるまで君らは特に発言しないように!特に佐鳥君!」
などと名指しで注意してくる始末。
わかってますよーと軽く受け流して会議に臨むが緊張して前を向けない。
向かいには佐城さんがいるのに!
「賢、賢、大丈夫か?」
嵐山さんが小声で心配してくれる。
「大丈夫です。」
緊張で何もできないと情けない事も言えず。
無理はするなよとそっと俺の手を握ってその後に意見を求められ堂々と答える。
やっぱり嵐山さんはすごいなぁと感じる一瞬だった。
昼、佐城さんのお父様の懇意でホテルの食堂でバイキングが用意されていた。
制服を汚さないよう腕まくりをしてご飯を取りに行くと佐城さんを見かけた。
「あ、佐鳥さんお疲れ様です。」
「あはは、おつかれ。」
先ほどの会議で木虎や嵐山さんは堂々と隊員としての意見を述べていたのに俺何もできなかった。
恥ずかしくて顔から火が出そうな緊張感と戦うしかない。
そんなかっこ悪さを誤魔化すように苦笑いをこぼす。
「はい、佐鳥さんよろしければ私とお食事しませんか?」
そんな俺の醜態を気にしないと言わんばかりに彼女は誘ってくる。
有難いが一人になりたい。
「いや、俺は…。」
「もしかして、会議のことを気にしています?
でしたら私も同じです。」
同じとはどういうことだろうか?
彼女は大人に囲まれて堂々と自分の意見を述べていたのに。
「意見を言えばいいというものじゃないのですよ。
父が納得し、また、ボーダーの皆さんが納得してくれなきゃ意味がないんです。」
そう、苦笑いする佐城さん。
同い年なのに何故こうも彼女は頑張ろうとするのか。
「佐城さんは凄いよ。
だってあの場で俺は緊張して何も言えなかったのにちゃんと意見を述べてる。
それ誰でも俺は尊敬するよ。」
「佐鳥さんありがとうございます。
あ、佐鳥さんさえ良ければ私達と一緒にお昼いただきませんか?」
断る必要がなく天にも登る気持ちで快諾する。
「も、も、もも、もちろん!俺で良ければ!」
どもってしまったが彼女はにこやかに席まで案内してくれた。
この時、嫌な予感はしていたのだがまさか全員佐城さんがお声掛けをしていただなんて!
「お!賢も佐城さんに呼ばれてきたのか?」
嵐山さんのスマイルがとても眩しい。
だが、てっきり二人きりだと勘違いした俺が悪い。
佐城さんは俺の左隣に座る。
皆でワイワイ食事をとるのは楽しい。
正直、二人きりでも何を話せばいいのかわからなかったからこういう雰囲気は助かる。
ふと向かいに座るとっきーと目が合う。
「そういえば佐鳥、佐城さんが居なくていつも寂しいって言ってたよね。」
前言撤回、それをバラなさないでとっきー。
左隣を確認するとキョトンとした顔の佐城さん。
「…えっとそれは?」
ですよねー出会った俺がこんなにも寂しがるだなんて。
思っても居ませんよねー。
もしやこれはとっきーがくれたチャンスなのでは?
天は俺に味方してる!
よし!勢いでここは決めるぞ!
「さ、佐城さん、よく聞いて。」
「は、はい!」
彼女の両肩を持ち、真剣な目で見つめる。
「き、君のことが…「佐鳥さん、あの…。」
顔を真っ赤にして俯いてる佐城さん。
お?これは脈アリか?
いい雰囲気だが彼女は俺の耳元に近づいていう。
「…チャック、空いてますよ。」
その言葉だけで俺は戦意喪失。
後に顔から火が出る思いで黙々と食事を続けた。
何やってんだ俺。
*
帰り際、佐城さんに見送られながら家路につく。
俺の勘違いと失態で彼女に悪印象を与えてしまってないか不安が拭えない。
連絡してみたらすぐさま返事が帰ってきた。
『今日はお疲れ様でした。
こうして皆さんとお食事できたのはすごく楽しいです。
また、お食事したいですね。』
よかった。
名誉挽回するチャンスはまだ残っている。
だが、いつまでもこんなチャンス巡ってくるわけがない。
今度こそ俺から誘わなければ。
【To be continued】
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