新型トリオン兵と交戦中。
頭の中で走馬灯の様なものが過ぎる。
それは数年前の妹との記憶。
第一次侵攻と呼ばれる様になったあの日の災害で酷く心を病んでしまったあたし。
それを気遣ってか妹は事あるごとに話しかける様になった。
学校であった何気ない話、その大半に三雲君と雨取さんという名前が出てくる事。
今思えば、単なる嫉妬だったのかもしれない。
仮にも友人を失ったすぐ後だったものだから。
その話を聞いてあたしは冷たい態度をとる様になった。
妹の世界をこれ以上聞いて羨ましいなどと思わない様に。
そして彼女の世界を守るという建前で自分を納得させボーダーという逃げ場所を作った。
こんな浅ましい考え、先輩はお見通しだったのだろう。
でなければあたしに構う必要性がない。
*
新型は異様に固く素早かった。
「小湊さん、新型について何か情報入ってこない?」
ぶっきらぼうに問えば苦言が返ってくる。
『ええっと、それが風間隊が三人がかりで撃破しただけで…。
菊地原君の情報によると耳、足、腹の順番で装甲が薄いみたいです。』
「ありがとう。」
そういって通信を一方的に切る。
耳は通信機の役割っぽそう。
腕を振り上げて攻撃してくる新型。
速さ勝負なら負けない。
(とは言っても向こうもバカじゃないだろう。)
早々に決着をつけねば、妹達が危ない。
「…アステロイド。」
腕で防ごうとするこの習性を利用して防いだ腕を足場にしてまずは一撃。
耳をそぎ落とす。
バランス感覚を失った新型は後ろに大きく倒れた。
その時に口を開けた新型に目玉のようなものを見た。
「あれが弱点か。」
淡々と冷静にギムレットを合成する。
起き上がろうとした新型の首を踏みゼロ距離で放つ。
ガラガラと陶磁器のように白い体はもろく崩れ去った。
一仕事終えてレーダーを確認する。
三毛島さんはどうやらこの先にいるらしい。
『もっしもーし、龍樹ちん、通信を切らないでほしいにゃ。』
気怠げな声が響く。
「別に、集中したかっただけで悪気はありません。
後、新型一体倒しました。」
三毛島さんはため息混じりにいう。
『報告ご苦労にゃ。
んー龍樹ちんが強いことは知っとるけど無茶はしないでほしいのにゃ。』
「それは先輩の差し金ですか?」
『いいや、隊長として、心配してるにゃ。』
全く、この人は読めないんだからと頭が痛くなってくる気がした。
「それで、こうして強制的に割り込み回線を使っているあたり、何かあったんですか?」
『それがだにゃ…。
本部がイルガーに襲撃されたらしいにゃ。』
嗚呼、道理で遠くで爆撃音が聞こえたと思った。
走りながらも他のトリオン兵を倒しながら進む。
新型以外なら弱点一点集中のアステロイドで事足りる。
いざとなれば渡されたトリガーもぶっつけ本番だが試してみる価値はある。
「私に迎撃に迎えと?」
『違う、違う。それはたっちんが倒したにゃ。
じんたんからの伝言にゃ。
メガネ君達と合流して、これから何が起きようとも焦るなだってさ。』
全く、あの人らしい伝言だと呆れる。
「…言われなくても焦りませんよ。
雛菱、了解。」
踏み出した足は軽く、今ならなんでもできるそう感じがした。
*
一方、避難誘導の最中のC級たちにも災厄が降りかかる。
「ぎゃーもー突破されちゃってんじゃん!」
出穂が叫び、千佳が避難指示を出す。
「逃げ遅れた人は急いで地下堂へ!」
「こちらです。押さないでください!」
露乃も落ち着くように市民に言葉をかける。
バムスターが突破し、絶体絶命!という時にC級の三人が勝手に先頭を始めた。
「C級は戦闘禁止とか言ってる場合じゃねーぜ…!」
三人が倒した屍骸から新たなトリオン兵が出てきていることも知らずに。
「危ない!」
露乃が
叫ぶと共に新型の砲撃で吹っ飛ぶ三人。
それを皮切りに人々は逃げ惑う。
だが行く手をモールモッドに阻まれて足を止めた。
タイミングよく、三雲と木虎が降り立ち、交戦する。
皆が見守る中、三雲はなんとかモールモッドを退けて後ろを振り返ると木虎が目にも留まらぬ速さで新型の行く手を阻んでいた!
「速い…。」
『援護する隙がないな。』
呆然と見守る一同。
そんな中、出穂、千佳、露乃が声をかける。
「お疲れ様三雲っち。」
「メガネ先輩。」
「修君。」
「ああ、雛菱、夏目、千佳、危ないぞ!
みんなと一緒に避難しろ。」
木虎が強いとはいえ、足手纏いには違いないC級。
油断はならない。
やがて新型は飛び上がり無差別に砲撃をかまし始める。
それに応じて木虎も半ばムキになりつつ攻撃し、片足を犠牲にしつつも一体倒した。
だが、それと同時にゲートが開き三体の新型が降り立つ。
「逃げなさい、早く!
こいつらの狙いは…C級隊員よ!」
木虎の叫びにC級隊員は一目散に駆け出す。
その隙に木虎はキューブへと変えられてしまった!
「木虎!」
三雲が仕掛けるよりも先に新型は彼を薙ぎ払い、先へと歩みを進める。
「だ、大丈夫だ!
ぼくに構わず逃げろ!」
三雲の叫びに散り散りになるC級。
だが、千佳は青ざめた顔で動けない。
「こんの!よくも木虎さんと三雲っちを!」
銃型のアステロイドを構えて応戦する露乃。
(大丈夫。犬飼先輩に教えられたことを思い出すんだ。
私はできる!)
「ちょっ、露乃先輩?!
チカ子も逃げるよ!」
出穂の制止も聞かず打つが案の定腕で弾かれる。
逃げろと言われて逃げられる状況にない三人。
「ああもう!チカ子も露乃先輩も分からずやー!」
ヤケになって出穂も打ち出す。
だが効いていない。
「わっ!キモいキモい!マタンマ!」
「うわぁ!」
出穂は捕らえられ、露乃は吹き飛ばされてしまった。
新型の一体がゆっくりと千佳へと歩みを進める。
彼女は友人を守るという決意の元、アイビスを放つ。
それは雷撃のようにあたりを包み、吹き飛ばし、新型を瓦解させた。
「す、すっごーい!」
「こら、チカ子!私らも吹っ飛ばす気か!」
「ご、ごめん。」
目をキラキラと輝かせてはしゃぐ露乃と対照的に怒る出穂。
のんきに三人が会話していると悪あがきのように壊れかけの新型が攻撃しようとする前に三雲が仕留めた。
間髪入れずに忍田本部長に連絡するとボーダー最強の部隊を向かわせることとなった。
*
一方、B級フリーの隊員、桐生飛彩はというと。
「迷ったーってあれ東さんと太一じゃん。
何やってんだろ。」
呑気に警戒区域を歩いていると東と別役が人型ネイバーに襲われているところに遭遇する。
「太一!」
東の叫びも虚しく、別役は敵の砲撃に敗れた。
あと一人だというネイバーの叫びに緋色が動く。
「うりぁあ!」
ネイバーの懐に入ってレイガストで殴りつける。
師匠に習った唯一の攻撃方法。
だが浅い。
野生の勘で跳びのき、グラスホッパーで距離を取る。
同時に三方向から砲撃が届く。
「いい釣りだ東さん。桐生のバカも一緒なら心強い。」
そう遠くから呟いたキャップ帽のB級隊員の荒船が笑う。
さあ、もう一つの戦闘の開幕だ。
【To be continued】
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