圧倒的なヴィランとの力の差を前に私たちは立ち尽くすしかなかった。
結果的にオールマイトと他の教師陣が救援に来てくれたはいいものの、緑谷君は個性を使って大怪我。
相澤先生や13号先生も入院するほどの大怪我で心配だ。
刑事さんの事情聴取を終えて私たちは家路につく。
緑谷君は何故あの時、動けたのだろう。
彼に負い目を感じながら、眠りについた。
*
次の日、皆んなは相澤先生の心配で持ちきりだった。
「おはよう、響香ちゃん、透ちゃん。」
「はよ。眠そうだね雫。」
「雫ちゃんも昨日は眠れなかった感じ?」
二人とも初めてヴィランと対峙した恐怖と興奮に眠れなかったことを明かした。
だが、私は子供の頃に一度だけ、母とともにある事件に遭遇したことがある。
その事は誰にも話さないつもりだ。
「うん、やっぱりヒーローってすごいなって。」
苦笑いをこぼしながら席に着くと飯田君が皆んな席につけと急かすが立っているのは飯田君だけだった。
「…おはよう。」
代理の先生が来るのかと思っていたが包帯ぐるぐる巻きの相澤先生が来て皆驚きを隠せない様子。
猫柳さんだけはとても悲しそうな顔で見ていたことが気になったが彼女と相澤先生の関係は他の人とは特別なものなんだろうと察する。
体育祭の説明を受けて各々興奮と寒気がままらない。
実際に私もお母さんは無理でもお父さんと弟や妹にいいところを見せたいものである。
「水無月、いいか?」
お母さんに報告しようとラインを開いたら後ろから轟君に声をかけられた。
「何?轟君。」
「お前に話しておきたいことがある。」
付いて来いということなのだろうと察して席を立つ。
彼の背を追いかけるのはこれが何度目だろうか。
裏庭に行き、じっと見つめられる。
涼しい風が吹き抜けて前髪を攫う。
一呼吸置いてから彼は口を開いく、お前には絶対負けたくないと。
「勿論、私も手心を加える気はないし、お母さんにいい結果を報告したいからね。」
負けないぞと意気込めば余計に眉間のシワが濃くなる彼。
「いつになったらお前はお前自身のために戦うようになる?」
「それはどういうことかな?」
「母親のためじゃないだろ。
ヒーローになりたいって事は。」
確かに彼のいうことにも一理ある。
母の背を追いかけたいことが第一目標であった。
だけれども私には何もないのだ。
誰かの役に立てと生まれ教え育てられてきた私には。
「ねぇ、轟君、何かになろうと必死にヒーローを目指すのはそんなにいけないことなの?」
「なっ…。」
絶句する彼。
それもそうだろう、私自身、想像もできない顔してるのがわかる。
空っぽだと彼は最初から気がついていたのだ。
でもいいの。
私は母を尊敬している事は事実だから。
「何で、お前はそうまでして自分を犠牲にする?」
「犠牲になんてしてない。
勘違いしてるようだけど、これは私の意思だから。」
嘘だという言葉が私の心に重くのしかかる。
真っ当にヒーローを目指してる緑谷くんたちとは比べてはならない。
「それで話はそういう事で良かったかな?
それじゃあ、お互い頑張ろうね。」
待てと言われても私は足を進める。
これ以上話したとしても私と彼は平行線で交わらない。
なら、せめて、彼の邪魔にならないようにしようと決意を秘めた日だった。
*
授業もそこそこに、放課後のチャイムがなって帰る支度をする。
帰ろうと扉を開けたら教室前に人だかり。
どうやら先の襲撃事件を聞きつけたB組と普通科の生徒らしい。
「意味ねぇからどけ、モブ共。」
爆豪が威嚇をしても人だかりはむしろ不満が募ってる様子。
一人の男の子が皆の不満を代弁するかのように前へ出る。
「どんなもんかと見に来たが、随分偉そうだなぁ。
ヒーロー科に在籍する奴はみんなこんななのかい?」
それからリザルト次第ではヒーロー科に在籍も可能だと挑発を受けるが関係ないと爆豪は突っぱねる。
「上に上がりゃ、関係ねぇ。」
それだけを言い残して彼は去っていった。
それを皮切りに蜘蛛の子を散らすように野次馬は散っていった。
雫も帰ろうと荷物をとって廊下に出たら。
「ねぇ、ちょっといい?」
呼び止められて、振り返ると緑髪の少女が立っていた。
「何でしょうか?」
思わず萎縮して敬語になるといきなり距離を詰められて言われる。
「アンタ、えーちゃんとみーなの何?」
誰の事だろうと首を傾げていると嗚呼、わからないかと今度は手を掴まれて言われる。
「切島鋭次郎と芦戸三奈の何なのさ?友達?それともクラスメイト?ライバル?」
明らかに嫉妬のこもった睨みに雫は屈しなかった。
「切島君も芦戸さんも大切なクラスメイトです。
それよりあなた何なのですか?」
手を振り払えば気に入らないと言った感じでさらに睨みを効かせる少女。
「宣戦布告に来たってわからない?
みーなが綺麗な個性持ってるっていうから気になって見に来たけどこんなお人好しだったなんてね。
まあいいよ。
ボクは冬場こもる、B組の一員さ。
どうせ君みたいに綺麗な個性じゃないけど今回は勝たせてもらうから。覚悟しといて水無月さん。」
じゃあと言いながら横をすり抜けるこもる。
今度は雫が意を決して言い返した。
「こちらこそ、負けません。
いい試合しましょうね。」
どこまでもお人好しめと悪態を吐くが雫は全くもって気にしないのであった。
*
そして、体育祭当日、轟が緑谷に宣戦布告後したりとアクシデントがあったが彼も言い返し、いよいよ入場の時を迎える。
さぁ、待ちに待った体育祭の始まりだ。
【To be continued】
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